歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

木下是雄さん

2013年11月20日 | 本とか雑誌とか
木下是雄さんは物理学の先生で、『理科系の作文技術』の著者として名前の知られる方です。いちおうわたしも学生時代に『理科系の作文技術』は買ったと思うんですが、とくに心に残った記憶はありません。そのころはまだ日本語の作文技術にあまり関心なかったのかもしれないし、なにより「オレ、文系だもん」とか思って、ちゃんと読まなかったのかもしれない。

わたしがこの人の名前を心にとどめたのは、『理科系の作文技術』によってではなく、朝日選書で出ている、言語技術の会・編『実践・言語技術入門』という本によってでした。言語技術の会というのは学習院の先生たちのグループで、その主宰者が、学習院大学の学長さんであった木下是雄さんなのでした。

『実践・言語技術入門』は、中学高校(大学も?)向けの国語の副読本としてきわめて優れています。ただ、初版が1990年で、その後改訂されていないので、内容が古くなってしまいました。手紙と電話の話は出てくるけれども、ファックスも電子メールもインターネットも出てこない。初版の理念を生かして、なんとか現在の状況に対応した新版を出してもらえればなあ。

わたしが『実践・言語技術入門』で教えたもらったことはたくさんありますが、作文技術の面で学ぶところが大きかったのは、「事実」と「意見」の峻別、読み手の分析、パラグラフを意識すること、重点先行──の四点でした。この四つについては、今も、文章作成時には──場面によって意識する度合いの強弱はありますが──意識して書いています。