歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

トリニティ・クワイヤ『フランス・バロックのグラン・モテ』

2008年05月31日 | 音楽について
■すっかり失念しておりましたが、現地時間で5月20日の夜、The Trinity Choir & Rebel Baroque Orchestraによるグラン・モテのコンサートが、 Simon Carringtonを客演指揮に迎えて行われました。演奏されたのは、サイトの説明によれば"French masterpieces of Lully, de Lalande, Charpentier, Desmarest, Rameau, and de Mondonville"とのことですが、曲目詳細は分かりません。

■サイモン・キャリントンはとてもスリムな人でした。キャリントンの手柄なのか、トリニティ・クワイヤが上手いのかそのへん分かりませんが、フランス・バロックの雰囲気をうまく出していたと思います。いやみでない程度にちゃんと「イネガって」もいました。

■それにしてもThe Trinity Choirはテナーの歌い手の頭数が足りません。ソロはダニエル・マトルーが大奮闘してました。強力なテナーがもう1人は要るよ。ニューヨーク・ポリフォニーのジェフリー・シルバーに戻ってきてもらったらいいのにねえ。バスは安定してるのに。

■今回のコンサートを観て思ったのは、(いまなにしろパーセルづいてるもんですから)こういうグラン・モテからパーセルのバース・アンセムへの影響はどうだったのかということですね。他の曲種でいろいろ受容の跡が見られるんだから、宗教曲でもとうぜん影響関係はあるんでしょうよ。

■前回のハイドンのミサのコンサートのときから、出演者へのインタビューの動画が公開されるようになっています。(前回のハイドンでは、指揮のグラバー、ソプラノのナコール・パーマー、テナーのダニエル・マトルーが採りあげられていました。)今回は指揮のキャリントン、バスのチャールズ・ウェズレー・エバンズ、ソプラノのニーナ・マトルーの3人が語っています。ニーナ・マトルーはダニエル・マトルーの奥さんのようです。歌う声と話すときの声がだいぶ違う。今回の動画ではコンサートへ向けての練習風景が少しですが見られるようになっていてこれが面白かった。
コメント

ラ・ベネシアーナ『モンテベルディ/マドリガーレ集第8巻』

2008年05月25日 | CD モンテベルディ
Monteverdi
Ottavo Libro dei Madrigali
Madrigali Guerrieri et Amorosi
La Venexiana
GCD 920928

2004,05年録音。69分53秒/49分54秒/73分16秒。GLOSSA。ラ・ベネシアーナによるモンテベルディのマドリガーレ集第8巻。歌手は、Emanuela Galli、Alena Dantcheva、Nadia Ragni、Roberta Mameli、Kiersti Odegaard、Claudio Cavina、Giuseppe Maletto、Sandro Naglia、Giovanni Cantarini、Mario Cecchetti、Daniele Carnovich、Matteo Bellotto。

CD1。シンフォニアのあとの"Altri canti d'amor"がかなりおとなしい。ほかの演奏がたいてい威勢よくいくところなので、まづここでびっくりする。聴いてるうちに「こういうのもありかな」とか、「ゆっくりめに丁寧にって狙いなのかな」とか思いますけどね。CD1の最後に"Combattimento di Tancredi e Clorinda"が入っています。語り手はテナーのマリオ・チェッケッティという人で、悪くはない。けっして悪くはないけど、うーん、そんなに褒めそやすほどよくもない。この曲、コンソート・オブ・ミュージック盤では悪声のアンドルー・キングで、あの声で半時間近くの独演を聴かされるのはつらかった。それに比べるとチェッケッティは美声といってもいいくらいなんですが、引き込まれるほどの魅力はない。この役はテナーよりも高めのバリトンが歌ったほうがいいような気もします。

CD2。冒頭の"Ardo, ardo, avvampo, mi struggo"が聴かせます。この曲、ほかの演奏ではこんなに面白いと思ったことなかった。"Volgendo il Ciel"はジュゼッペ・マレットのソロで、これは見事。CD1の"Combattimento"の語り手もこの人が歌えばよかったのに。"Vago Augelletto"もこのCDに入ってます。この曲はいいですよねえ。第8巻でいちばん好きかも。ところどころにソロやゾリが入る合唱曲って好きです。この2枚目ではマレットともうひとりのテナーのサンドロ・ナーリアの出番が目立ちます。このふたりは手だれなので安心して聴いていられる。最後の"Dolcissimo uscignolo"もいいアンサンブルで、最後の和音もソプラノの高い音がしっかり決まっていて気持ちよかった。CD2については特に不満なし。

CD3。"O sia tranquillo il mare"もテナーの2重唱でここではジョバンニ・カンタリーニって人とマレット。カンタリーニもいい声ですよ。'Cantarini'って名前もなんか歌い手むきで。結局この3枚でテナーは4人出てくるんですが、チェッケッティのTestoがすこし落ちるだけで、ほかの3人は快調だった。"Lamento della ninfa"はソプラノのロベルタ・マメーリが、ややハスキーな声でジャズのようなドライブ感のある聴きごたえのある歌を聴かせてくれます。これも聴きもの。最後に40分弱の"Ballo delle ingrate"を置いていて、これもソリストたちが余裕で歌いきっています。器楽陣もキレのよい音で好サポート。

総じてこのラ・ベネシアーナの『第8巻』は、歌手を多めに集めて、曲種によって使い分けてるのが特徴です。アンサンブル曲はいつものメンバーで、そして小規模オペラといってよいソロ重視の曲は招聘メンバー主体で。その、主にソリストとして参加している歌手たちの経歴は知りませんが、歌ごころたっぷりに余裕で聴かせてくれる人が多く、おおむね成功してます。こうなるとCD1で「あれっ?」と思わせられるところがあるのが惜しい。
コメント

マクギーガン『ヘンデル/セルセ』

2008年05月21日 | CD ヘンデル
Handel
Serse
Malafronte, Smith, Milne, Bickley, Asawa, Thomas, Ely
The Hanover Band & Chorus
Nicholas McGegan
75605 51312 2

1997年録音。68分31秒/65分24秒/42分17秒。DHM。もともと英Coniferから出ていたもの。"Ombra mai fù"をもともとのオペラの文脈で聴いてみたくて買いました。まあ文脈とかいっても序曲が終わるとレチタティーボをはさんでいきなり「オンブラ・マイ・フ」が始まっちゃうんですけどね。マクギーガンという指揮者については毀誉褒貶さだまらないのでちょっとびくびくしながら買う。マクギーガンの指揮は決して先鋭的ではなくむしろおだやかな音づくりですが、それでいて説得力のあるヘンデルを再現できているんだからたいしたもの。CD3枚通して聴いたあとに、ああいいヘンデルを聴いたなあというふっくらした満足感に包まれる。不満もないではありませんが、買ってよかった。

ヘンデルのオペラはあれもこれもと聴いてるわけぢゃありませんからほかのオペラと較べてどうこうとは言いにくいんですが、この『セルセ』は曲自体の出来がいいと思います。いいメロディーのアリアが全曲あっちにもこっちにも出てきて、飽きないです。第3幕さいしょのシンフォニアもいい曲だわあ。全体にダカーポアリアが少なく、話がすたすたと進むのでダレないのもいいですね。

歌手は頭がこんぐらかるくらいたくさん出てきますが、いちばん耳に残るのは日系アメリカ人のカウンターテナー、ブライアン・アサワです。柔らかで表現力のある美声。ついで敵役のアタランタを歌うリサ・ミルンてソプラノがいいです。

不満は、ヒロインのロミルダが魅力に欠けるとか、セルセとアルサメーネの声質がちょっと似ていて聴きわけにくいとか、そういうところですね。ロミルダはジェニファー・スミスで、わたしはこの人むかしから苦手なんですよ。ハスキーな声で、華がないから。アサワとスミスは恋人同士の役なんですが、この2人のデュエット聴いててもなかなか恋人同士に聞こえてこなかったりする。

脇役でデイビッド・トーマスが出てます。今回は役柄がそもそもユーモラスなので、やりたい放題やってます。
コメント

吉村昭『帽子』

2008年05月20日 | 本とか雑誌とか
■吉村昭『帽子』中公文庫、本体590円、2003.09.25,初版。読了。元本は1978.09刊。

■吉村昭って読んだ憶えがないんですよねえ。この本だいぶ前に買っておいたものなんですが、どういうきっかけで買ったのかなあ。もしかしたら昔の「日曜名作座」で聴いて、買う気になったのかもしれない。そう思うといかにも「日曜名作座」でやりそうな短篇が並んでます。ドラマティックな事件が起こるわけではありません。人生っていうのはさびしいもんですよ、と、ふた昔前の中年男の目線で語りかけてくる。

■表題作は癌で死んでいく妻のために帽子を買い続ける男の話。それから次の「買い物籠」。東北の中学を出て、家が貧しいという理由で、東京の開業医の家に家事見習いとして住み込んで夜間の定時制の高校に通う娘。その娘は気立てはいいけど素行が悪くて、けっきょく里に追い返されてしまう。その六年後、娘は東京のバーで働いていて、そこでかの開業医と再会してしまうんですな。開業医は誘われるんですが、面倒になりそうだと中年男の勘が働いて、再会したもとお手伝いさんと関係を持つことを回避します。

■わたしは、離婚を決めた夫婦が最後の食事をする「朝食」という話がわりと好きだったな。お互いの心は冷えきっていて、男のほうが家を出ることで段取りもついているんですが、いざ別れるとなると、男も女もなんとなく面倒くさくなってるんですな。別れるにもエネルギーがいりますからね。その面倒くささと、そこはかとない未練と。
コメント

コープマン『ヘンデル/復活』

2008年05月19日 | CD ヘンデル
Handel
La Resurrezione
Argenta, Schlick, Laurens, de May, Mertens
The Amsterdam Baroque Orchestra
Ton Koopman
0630-17767-2

1990年録音。63分36秒/52分11秒。ERATO。『復活』はいいですよ。ヘンデルのオラトリオから五つを選びなさいと言われたら、わたしはそのなかに『復活』を入れますね。それくらい好きなので、ホグウッド盤につづいてこのコープマン盤も手に入れました。

ホグウッドのはサウンドの華麗さとアンジェロを歌うカークビーの超絶技巧で聴かせるCDでした。初演のさいの記録を調べて、実際にヘンデルが使ったのと同じ数の奏者をそろえてにぎにぎしくやっていました。それと比べるとこちらのコープマン盤は奏者の数もぐっと少なく、室内楽的な編成です。歌手のアンサンブルに重きを置いて、よりていねいな解釈で進めています。アンジェロをバーバラ・シュリック、マッダレーナをナンシー・アージェンタが歌っていますが、これは配役を入れ替えてほしかった。冒頭のアンジェロの華麗なアリア、シュリックは歌えてません。しかしロランス、ドゥメイ、メルテンスといったほかのソリストはみな経験豊富な実力派。それぞれ聴かせどころの長いアリアがありますが、まったく危なげありません。なによりコープマンの音楽設計が冴えているので、聴いた後、そんなに不満は残らないです。

ホグウッド盤の目もくらむようなサウンドを聴いたあとにこのコープマン盤を聴くと「えらく地味やなー」と素朴な感想が湧いてきますが、より深く楽譜を読みぬいているのはやっぱりコープマンのほうだと思う。たとえば、第2幕で天使が歌う'Se per colpa di donna infelice'というナンバー。軽やかな踊りのようなリズムの、とても素敵な曲ですが、ホグウッド盤ではアレグレットくらいの速いテンポでさっさと終わってしまいます。コープマンはアンダンテくらいでゆったり進めていて、こちらのほうが曲想にふさわしい。

願わくはコープマンの指揮で、バーバラ・シュリックのかわりにエマ・カークビーが天使の役で客演してくれてたらいちばんよかったんですけどね、世の中そう巧くはいかんのですわ。
コメント

マーロウ『パーセル/王立礼拝堂のためのアンセム集』

2008年05月18日 | CD パーセル
Purcell
Anthems for the Chapel Royal
Choir of Trinity College, Cambridge
Richard Marlow
74321 16849 2

1987年録音。62分37秒。CONIFER CLASSICS。パーセルのアンセム。なによりもこのCDは雰囲気がいいですよ。パブリック・スクールの礼拝堂で歌われる本場もんのパーセル、って感じです。ただし技術的にはちょっと詰めが甘いかなと思うところもあります。初っぱな、バスのパートソロから始まるんですが、いきなり音がバラけそうで先行き不安を感じさせられる。でも技術的にハッキリ「こらまづいやろ」と思わせられるのはそこくらい。あとはもう雰囲気のよさで最後まで聴き通してしまいます。はじめのところだけ録り直しゃよかったのに。

バース・アンセムも歌っているのでところどころboySやboyAのソロがあるんですが、そこも力まずふわりと歌えています。テクニックの面でも指揮者の解釈の面でも取り立ててどこがどうすごいとか言うべきことはないんですが、パーセルを日ごろから歌い慣れてるんだろうなあというのはひしひしと伝わってきますね。そしてなんといいますかね、自国のすぐれた作曲家であるパーセルに対する心からの敬愛というか、そんなものも聴き取れる気がします。

今からだいたい20年くらい前に買いました。外付けで日本語解説の冊子がつけられた国内盤仕様のものを買ったような憶えがうっすらあるんですけど、今わたしの手もとには日本語解説はないです。なんども引越ししたんで、どっか行っちゃったんでしょう。20年前というと、まだインターネットでCDが買えるような時代ぢゃなかったです。当時わたしは広島にいて、パルコの上のタワーや紙屋町のHMVに行ってもパーセルのCDは少なかったです。"Man that is born of a woman"のCDがずっとほしくて、でもガーディナーのは入手しがたい状況で、そこにこれが出て、「ほんとは少年合唱はそんなに好きぢゃないんだが、仕方ねえなあ」などと思いながら買ったんだろうと思います。
コメント

ラ・ベネシアーナ『モンテベルディ/マドリガーレ集第6巻』

2008年05月10日 | CD モンテベルディ
Monteverdi
Sesto Libro dei Madrigali - 1614
La Venexiana
Claudio Cavina
GCD 920926

2004年録音。71分47秒。GLOSSA。しなやかで正攻法。堂々としていて、かつニュアンスに富んでいる。聴きごたえのあるいい演奏だと思います。歌のメンバーは、Rossana Bertimi、Nadia Ragni、Angela Bucci、Claudio Cavina、Giuseppe Maletto、Sandro Naglia、Daniele Carnovich。

わたしモンテベルディのマドリガーレもかなりの数のCD持ってるんですよ。ルーリー&コンソート・オブ・ミュージックのはほとんどあるし、アレッサンドリーニ&コンチェルト・イタリアーノ、カビーナ&ラ・ベネシアーナのも、リリースされたものすべてではないけれどそれぞれかなり揃えてます。さらに第8巻の全曲盤に関しては、ルーリー、アレッサンドリーニ、カビーナの3種に加えてヤーコプスのも買っちゃった。このなかで、カビーナ&ラ・ベネシアーナはついにマドリガーレ全集を完結させたそうですよ。しかしカビーナのは第8巻がいま一つ決定打に欠けるものだったんで、わたしとしてはこのカビーナの全集が出てもそれで一件落着、って感じはないなあ。モンテベルディのマドリガーレの世界というのはじつに豊かな実りの園なので、ひとりの指揮者ないし団体ではすべてを表現し尽くせないんだ、と思うことにしましょ。

で、この第6巻のCDですが、歌ごころとアンサンブルの技術とが高いレベルで一体となっている。こういうのは聴いていてあこがれてしまいますね。「ああこんなふうに歌いたいっ」っていう。第6巻はいよいよバロック様式に本格的に足を踏み入れたマドリガーレ集で、後半のところどころ、独唱や2声部3声部の重唱が入ってきます。アンサンブル力のみならず個々の歌い手の声そのものの魅力が問われるわけですが、そこはそれ、今のイタリア古楽を代表する歌い手たちが集まってるわけで、みごとな美声で歌いあげてくれます。

冒頭の「アリアンナの嘆き」もいいですが、個人的に、後半の「哀れなアルチェオ」がまたいいなあ。昔、わたしが初めて聞いたモンテベルディのマドリガーレがたしかこの「哀れなアルチェオ」で、コルボの指揮だったんですよ。それをFMで聴きました。コルボから何世代かを経て、モンテベルディのマドリガーレ演奏はここまで来た。(いやまあコルボはいまだに現役で、それはそれでスゴいことですが…。)
コメント

ピノック『パーセル/ディドーとエネアス, アーサー王』

2008年05月08日 | CD パーセル
Purcell
Dido and Aeneas / King Arthur
von Otter, Dawson, Varcoe, Rogers, Priday, Hall, Leonard, Amps (Dido)
Argenta, Perillo, Gooding, MacDougall, Tucker, Bannatyne-Scott, Finley (Arthur)
Choir of The English Concert
The English Concert
Trevor Pinnock
474 672-2

『ディドー』1988年、『アーサー王』1991年録音。73分53秒/73分19秒。Archiv。もちろん最初はべつべつにリリースされたものですけど、わたしの持ってるピノックのパーセル5枚組BOXでは、この2曲がCD2枚に収まっています。『ディドー』も『アーサー王』もよい出来で、最初に聴く録音として広く勧められる。2CDにこの2曲の組み合せというのは実にぜいたくで聴きごたえ満点です。この2枚組だけでも邦訳つけて国内盤出せばそこそこ売れると思うけどなあ。現在国内盤では『ディドー』のみ、生きています。

『ディドー』はピノックらしくていねいな作り込みようで、演奏者たちもピノックの意図を汲んでしっかり歌えているので、充実した仕上がりになってます。フォンオッターのディドー、ドーソンのベリンダ、それに魔法使いと水夫のロジャーズがすばらしい。フォンオッターは、オペラの女の役を歌うには色気が足りないといつも思うんですが、このディドーっていうのは女王ではあるけれどよけいな色気は要らなくて、毅然とした気品があればいける役なので、フォンオッターの柄によくあっていていいです。魔法使いにベテラン・テナーのロジャーズを起用したのはだれの思いつきか分かりませんけどこれは大成功。あぶらっこい魔法使いを巧く歌い出しています。ピノックは、ほかの指揮者がたいていやるような補作をせずに、いま残っているパーセル協会版の楽譜をそのまま演奏しています。楽譜を見ながら聴くと、第2幕の森の場面がエネアスのアリアで突然終わって第3幕の水夫のアリアにそのまま移るのはたしかにちょっと収まりが悪い感じで、本来はエネアスのアリアの後、合唱なり後奏の合奏曲があってしかるべきです。でもふしぎなことに音だけ聴いているとそれほどの違和感もないんですよねえ。

『アーサー王』もしっかり聴きごたえのある演奏で、ピノックの気合いもじゅうぶんです。『ダイオクリージャン』のときにはちょっと歌いすぎてると感じたけれど、『アーサー王』の場合はピノックの歌わせかたでちょうどいい。聴いているうちにこっちもなんだか高揚してきます。アージェンタ以下のソリストたちの歌いっぷりもいいです。"Come if you dare"のテナー・ソロはジェイミー・マクドゥガルで、ガーディナー盤で歌うポール・エリオットの美声にはおよばないけれど勇ましさはしっかり出ています。アージェンタは"For love ev'ry creature"の高音をソツなくこなすし、"Fairest Isle"もまかされて、あどけなさの残る声で好唱。その"Fairest Isle"の前のどんちゃん騒ぎの男たちも、ガーディナー盤に負けず劣らずいい感じでハメを外してくれます。最後の"Saint George"はパーセル協会版どおりの長いソロで、ジュリア・グッディングが的確なテクニックで歌いきる。合唱はよく歌いこまれていて不安定なところは全然ありません。
コメント

ガーディナー『パーセル/テンペスト』

2008年05月06日 | CD パーセル
Purcell
The Tempest
Hardy, Smith, Hall, Elwes, Varcoe, Thomas, Earle
Monteverdi Choir
Monteverdi Orchestra
John Eliot Gardiner
4509-96555-2

1979年録音。57分22秒。ERATO。1979年はたしかガーディナーがモダンから時代楽器へ移行した年。これはその2月の録音で、"Monteverdi Orchestra"と明記してあるからオケはまだモダン楽器のはずですが、モダン楽器のバロック演奏によくあるヌメヌメ感はぜんぜんないんですよ。相当意識して、時代楽器ふうの演奏スタイルを取ってるってことかなあ。とにかく時代楽器派の人にも違和感なく聴けると思います。エラートへの、ガーディナーのパーセル・コレクションはモダン楽器での録音が混ざっているというので腰がひけてしまう人もいるでしょうが、音わるくないし、演奏自体とてもいいです。

なにしろ『テンペスト』ですからもとはシェイクスピアなんですが、そこはパーセルのセミ・オペラの通例どおり、本筋とは関係ないところでにぎやかに歌ったり踊ったりするんですな。プロスペローやミランダが歌うわけではありません。序曲のあとすぐ出てくるのが'First Devil'と'Second Devil'で、デイビッド・トーマスとロデリック・アールというふたりのバスがいきなり二重唱します。トーマスはたしかこの年ホグウッドの指揮で『メサイア』を録れてるはずですが、『メサイア』よりこっちのほうが調子いい。

どこをとってもまさにパーセルの世界で、この作曲家らしい愛らしさと清涼感にあふれているので、パーセル好きな人にははづせない。それをまだ新進指揮者だったころのガーディナーがパーセルへの共感を込めて聴かせてくれる。ガーディナーにしてはめづらしくよく歌っているのがいいです。第3幕でメゾのキャロル・ホールが歌う"Dry those eyes"とか、第5幕でジェニファー・スミスが歌う"Halcyon days"とか(どちらも6分かかるパーセルにしては長いエア。)それからやはり5幕でスティーブン・バーコーが出てきて何曲か歌いますけどそれがまたバスの曲にしてはなかなかしみじみとしていて、耳に残ります。

それから特筆すべきはラスト。スミスとバーコーのデュエットがまづあって、それを合唱が受けて終わるんですが、めづらしくfではなくてmpくらいで静かに曲を閉じるんですよ。パーセルはときどきこの手を使うようですが、ここではよく効いています。

合唱は少なめで、アリアが多いです。The Trinity Choirのやり方のように、力のある歌手を集めた合唱団で、合唱からソリストが出て歌うようにするといいと思いますね。あー、そんなコンサートでこの曲歌ってみたいです。
コメント

ラウディバス『四月の暮れがたのすべてのもの』

2008年05月05日 | CD 古典派以後
All in the April evening
Laudibus
Michael Brewer
CDA67076

1998年7月18,19日録音。71分37秒。Hyperion。これはいいアルバムです。ラウディバス?という若い合唱団がマイケル・ブルーアという指揮者に率いられて歌ってます。途中、モーリー、ベネット、バードのルネサンスのマドリガルやモテットを3曲はさむほかは、すべて19~20世紀のイギリスの作曲家の手になるアカペラの合唱曲。合唱やっている人はぜひ聴いてください。わたしの買ったのは通常盤だけど、いまは廉価盤になって再発されてます。

イギリスの、近代を中心とした合唱音楽のサンプラーとしても楽しめるし、イギリスの合唱団の水準の高さも分かります。このLaudibusというのは20代を中心とした若手のメンバーによる合唱団のようです。まだ完璧ではありませんよ。なんていうかな、巧さと若さが同居しているというか。いやこれは悪口ではありません。好みの問題ね。わたしはこういう、若さでぐいぐい聴き手を引きつける合唱も好きですが、人によってはもっと落ち着いた歌い方のほうがいいと思うかもしれないってこと。しかしそれにしても、すでにしてこの聴きごたえ。こういう人たちが30代40代になって円熟すると、タリス・スコラーズだとかレイトン指揮のポリフォニーだとか、そういうさらにすごいレベルに到るわけですね。

エルガー、ボーンウィリアムズのようなだれでも知っている人のから、ウォーロック、パリーといった、イギリス音楽好きな人ぢゃないとなかなか聴いたことないような作曲家のまで、地味だけど聴き心地のよい味わいぶかい曲が揃っていると思います。

最後を締めくくるのがアーサー・サリバンの"The long day closes"で、これもいい曲ですよー。もとは男声4部で、ここでは後に混成4部に書き直されたものを歌っているんですが、これ男声で歌ってみたかったなー。例のサボイ・オペラの作曲家のサリバンが男声合唱も書いている、というのは知ってましたが、こんなにいい曲書く人だとは知りませんでした。
コメント