歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

アガサ・クリスティー『殺人は容易だ』

2011年11月07日 | 本とか雑誌とか
クリスティー/高橋豊訳『殺人は容易だ』(ハヤカワ文庫)読了。再読のはずですが、読んだ記憶はまったくなかった。面白さはまあまあ。二大戦間の作。1939年。これはこの前読んだ『世界の歴史26』が扱っていた最後の年に当たる。有名な探偵役は登場しない。ただし終わりのほうでバトル警視がちらっと出てきます。アジアの植民地で警官をしていたけど退職して、本国に帰国したばかりの「有閑紳士」が主人公。植民地で警官すると、壮年でももう、年金がついて悠々自適に暮らせるみたいなことが書いてあります。へー。この時期、ドイツはもう、二進も三進もいかなくなって、ナチス独裁がすでに完成しちゃってたんですよ。しかしこの『殺人は容易だ』におけるイングランドの田舎町には、戦争の影はぜんぜんない。

お話は、言ってみりゃ、ポワロのいないヘイスティングズ、みたいな主人公が、ある田舎町の住人たちの相次ぐ不審死事件に首を突っ込んでいくようなもの。だからもちろん途中で派手な見当違いが出てきますが、読者としては想定内で、べつに驚かない。そしてヒロインの心変わりがちょっと解せない。「やっぱりわたし、元の鞘に戻りますわ」ってなったほうがよかったと思う。

香月泰男

2011年11月04日 | 本とか雑誌とか
むかし読んだ新潮少年文庫のことを、わたしはいまだにときどき思い出します。昭和50年代の話。このシリーズは、文庫本ではなくて、紙箱つきのハードカバー、それでいて定価500円。内容は新田次郎、結城昌治、水上勉、星新一、など名の知れた作家たちにローティーン向けの書き下ろしを書いてもらうというもの。当時としても思い切った低価格の、そしてぜいたくな企画だったんだろうと思います。で、このシリーズは、表紙と紙箱に、香月泰男の制作したオブジェを撮影した写真が使われていた。本の内容もさることながら、香月泰男のその表紙がまた印象深いものでした。だって、そのとき知った「香月泰男」って名前をこの年まで忘れずにいるんだから。(その後、長じてから、この人が有名な画家であることを知った。)

きょうもきょうとて、香月泰男、でネット検索していたちょうどそのとき、NHKニュースウオッチ9で香月記者、って人が出てきてびっくりしたので、ちょっとここにもメモ書きしておきます。