歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

クリスティ『パーセル_妖精の女王』

2013年11月22日 | CD パーセル
Henry Purcell
THE FAIRY QUEEN
Les Arts Florissants
William Christie
HMC 901308.09

1989年録音。64分36秒/62分44秒。HMF。演奏は非常に強力で、推奨するに足る。さすがに舞台作品を多く手がけてきたクリスティだけのことはあります。音楽が生き生きと躍動していて、聴かせ上手という点では、わたしがこれまで聴いた『妖精の女王』の中で抜きんでている。たしかにパーセルにしてはフランス風味が濃厚だけど(イネガルの付点奏法とか、こ洒落た装飾音とか)、まあ許せる範囲。

歌手はソプラノ7、ハイ-テナー4、テナー3、バリトン1、バス5。これらの人たちがソロを分担し、さらに合唱も歌っているもよう。このなかにはNancy Argenta、Lynne Dawson、Veronique Gens、Sandrine Piau、Charles Daniels、Jean-Paul Fouchécourt、Thomas Randle、François Bazolaのような、ソリストとしてキャリアのある人たちを含む。だから、合唱曲が非常に雄弁。

テナーのソロはトーマス・ランドルがほとんど一手に引き受けています。この人はクリストファーズの『ヘンデル_サムソン』でタイトルロールを歌っていて、そのりりしく英雄らしい歌いぶりに感心しました。パーセルにしてはちょっと線が太いですが、りっぱな、聴きごたえのある美声。

ソプラノはアージェンタ、ジャンス、ピオーとそれぞれ素晴らしい出来。ただ〈O let me weep〉はドーソンで、熱演だけど、この人の声、わたしはちょっと苦手なんだよな。声の抜け方がおかしいよ。スコンと当らず、響き漏れする。「響き漏れ」なんてことばはないはずで、わたしがいま捻りだした言い方だけど…。

初期のレザール・フロリサンてのは、このCDみたいに、歌い手がソロも合唱も担当するってのが基本の形態だったんですよ。HMFでシャルパンティエの専門家だったころはずっとそうだったよね。その意味で懐かしさを感じた。そして、クリスティにはこの勢いを駆って『ダイオクリージャン』もHMFに録音しといてほしかった。残念だ。

ロンドン・バロック『パーセル_室内楽作品集』

2011年12月02日 | CD パーセル
Purcell
Chamber Music
London Baroque
HMA 1951327

1989年録音。63分27秒。HMF。ロンドン・バロックがHMFでパーセルを録音したのはこれが初めてだったようです。その後かれらはHMFへ『4声/3声のソナタ集』を録音、さらにBISに『ファンタジア集』を録音しています。それらの後年の録音と重複する曲もあり、いまとなってはこの録音の存在価値はやや薄れてしまったかもしれません。しかし中身の音楽そのものは、作品といい演奏といい一級品です。

ロンドン・バロックのメンバーはIngrid Seifert、Ursula Weiss、Richard Gwilt、Nicholas Logie、Charles Medlam、Lars Ulrik Mortensen。表現は生き生きしていて、音楽がずんずん前へ進んでいく。派手ではないけれど、充実した演奏。室内楽の作曲家としてのパーセルの才能を表現しきって、余すところがない。パーセルの室内楽だけのCDを1枚持っておきたい、という人にはこのCDで決まりでしょう。

結局わたしは、パーセルの室内楽作品はロンドン・バロック一辺倒で聴くことになりました。『ファンタジア集』も『4声/3声のソナタ集』もロンドン・バロックです。手堅く、それでいて聴くものを退屈させない。愉悦感に満ち、なおかつほんのりと色気もあって。つまり、じつに心地よい。

収録曲は、演奏順に以下のとおり。Z.731、Z.807、Z.752、Z.730、Z.750、Z.751、Z.749、Z.748、Z.796、Z.801、Z.771、Z.336(Overture)、Z.772、Z.770。このうち、Z.807、Z.796、Z.801はHMFの『ソナタ集』で再録音。この『室内楽曲集』のできがよかったので、あえて数曲の重複をいとわず『ソナタ集』全曲録音に踏み切ったのではないかとわたしは推測する。またZ.752、Z.730はBISへの『ファンタジア集』で再録音しています。

後半の〈Overture〉と名づけられたZ.771、Z.336、Z.772、Z.770がわたしには耳新しかった。Z.336はオード《Swifter, Isis, Swifter Flow》のほんとの序曲で、Z.770は5楽章、Z.771とZ.772は単一楽章の「序曲」。SonataやPavanが内向きな「ケ」の音楽なのに対して、これら〈Overture〉は「ハレ」の音楽っぽい聴き味がした。

クリスティ『パーセル_アーサー王』

2011年10月16日 | CD パーセル
PURCELL
King Arthur
Gens, McFadden, Piau, Waters, Best, Padmore, Paton, Salomaa
Les Arts Florissants
William Christie
2564 67743-4

1995年録音。50分27秒/41分28秒。Erato。Amazonで安かったので買っちゃいました。95年2月、パリでのライブ録音。パーセルの録音で、ライブってのは、わたしはじめてですわ。いかにもライブらしい高揚感がこの曲にふさわしい。そのぶん、録音はすこしざわざわした音になってますけど、さほどの傷とは思いません。

クリスティのパーセルを聴くのもじつはこれが初めてでした。パーセルがリュリの影響を受けていることは知っていたので、フランスものを得意とするクリスティのパーセルにはもちろん関心大でしたが、でもあまりにおフランスなパーセルはいやだな、ともわたしは懸念していた。で、実際に聴いてみて──違和感はなかったですね。もちろんイギリスの指揮者とくらべるとロココ風味のパーセルではあるけれど、これくらいの味つけなら問題ありません。

ソリストは、突出する人もなく、クリスティの音楽の進め方に自然に乗っかって、でも装飾音のつけ方とか積極的で、不満のないパフォーマンス。フランス人たちの英語のディクションもわたしが聴いたかぎり、へんな感じはしなかったです。クリスティが教えたんですかね。凍える神その他を歌うペッテリ・サロマーは、エストマンの《フィガロ》でタイトル・ロールを歌った人で、わたしは久しぶりに聴いた。フィンランド人ですが、この人の英語も変なところはなかったと思いますよ。

1CD分の厚みのケースに、2CDを折りたたみ。それはいいんですけど、英語の歌詞はナシ。これは再発盤なんですかね。

2007年の10月に、ニューヨークのTrinity ChurchのChoirがOwen Burdickの指揮で《King Arthur》を演奏しましたが、Burdickは、このChristieの演奏の影響を受けていますね。間違いないよ。Act 3の凍える神のシーンで合唱団にくしゃみさせる演出とか。

ガーディナー『ダイオクリージャン』の演奏者

2011年06月28日 | CD パーセル
ガーディナーの『アセンズのタイモン/ダイオクリージャン』について補記。演奏者の件。モンテベルディ合唱団は9・5・6・5。音で聴くともっと少ないように感じます。いやこれは褒めてるんですよ。パーセルらしい、17世紀らしい古雅な感じが好ましい。オケは、1stVnが5。2ndが4。Vaが3。Vc(Bass violinsと表記)が3で、今年亡くなったリチャード・キャンベルがいます。Cb1。Rec2。Ob2。テナーOb1。Fg1。Tp2。Timp1。Cem1で、これはアラステア・ロス。Lute1で、これはリンドベルイ。録音は1987年で、80年代の古楽オケには、リンドベルイかユングヘーネルか、このどちらか(または両方)が呼ばれる例が多かった。

ヘレベッヘ『パーセル_メアリー女王の葬送音楽』

2011年05月03日 | CD パーセル
Henry Purcell
FUNERAL SENTENCES
Bonner, Kwella, Wessel, Agnew, Kendall, Kooy
Collegium Vocale
Philippe Herreweghe
HMC 901462

1993年録音。67分41秒。HMF。全体に華やかなところは華やかさをたもちつつ、たおやかな手つきで入念に仕上げられたパーセルになっています。ベルギーの合唱団なので英語の発音がどうなのか、それだけが懸念要素だった。じっさいに聴いてみると英語の発音も難はありません。

1〈Rejoice in the Lord always〉Z.49
2〈Remember not, Lord, our offences〉Z.50
3〈Blow up the trumpet in Sion〉Z.10
4〈Hear my prayer, O Lord〉Z.15
5〈My heart is inditing〉Z.30
6〈Funeral Sentences〉(Z.860, 27, 17, 58c)
7〈O Lord God of hosts〉Z.37
8〈Te Deum〉Z.232

このうち、1、2、4、5がシャンティクリア盤と競合。1、2については、シャンティクリア盤でも冒頭にこの順序で収録されています。また2、3、4、6がオックスフォード・カメラータと競合。

とても軽い響きの音づくりで、ところどころ軽すぎる、とも思いますが──たとえば〈Rejoice in the Lord always〉や〈Blow up the trumpet in Sion〉のはじめのほう──、反面、その〈Blow up the trumpet in Sion〉の終結部や〈Hear my prayer, O Lord〉での精緻繊細さは特筆すべきで、やはり、ほかでは聴けないパーセルだと申せましょう。〈Funeral Sentences〉はガーディナーをはじめとしていろんな指揮者のものを聴きましたが、この曲もヘレベッヘの指揮は独特。表情のつけかたが濃いわけではなくむしろ薄塗りなのに、この指揮者ならではと感じられるていねいな音づくりがいかにもパーセルにふさわしい。

最後に〈Te Deum〉を収録していますが〈Jubilate〉を欠くのはやはり残念。ヘレベッヘの判断で削ったのかしら。

ボルティモア・コンソート『パーセル_キャッチ集ほか』

2010年08月22日 | CD パーセル
The Art of The Bawdy Song
The Baltimore Consort and The Merry Companions
DOR-90155

1990年録音。70分17秒。DORIAN。'bawdy'は辞書によると「俗悪な、下品な、みだらな」ってことだそうですけど、ここでは「エロ」というよりか「酔っぱらいのふざけ歌」という感じです。言ってみりゃ『酒場歌の芸術』ってところですか。わたしはパーセルのキャッチ〈Come, let us drink〉を聴きたくて、いろいろ探したあげくこのCDにたどりつきました。かんじんの〈Come, let us drink〉はいちばん最後に出てきてわずか1分20秒で終わってしまいますが、これをふくめて要所要所でパーセルのキャッチ(計9曲)が歌われ、またほかの曲もなかなか聴きごたえがあり、全体としてノリのいい楽しい演奏です。

ボルティモア・コンソートは米ドリアンに録音実績のある古楽グループ。ふだんは小編成のシンプルな器楽合奏にボーカルが1人ないし2人くらいの編成が多いようです。ソプラノのCuster LaRueという人が録音当時レギュラーの歌い手だったらしいんですが、ここではそのラリューさんのほかに、The Merry Companionsという男声4人組が加わっています。(そのうちのひとりはポメリウムの指揮者であるアレクサンダー・ブラッチリー。)しかしThe Merry Companionsというのはその後の音沙汰もないようですから、この録音のために特別編成されたグループだったのかもしれません。

収録されているパーセルの曲は〈I gave her Cakes and I gave her Ale〉〈Fye, nay, prithee John〉〈The Miller's Daughter〉〈Tom the Taylor〉〈My Lady's Coachman John〉〈As Roger last Night to Jenny lay close〉〈Pox on you〉〈Sir Walter enjoying his Damsel〉〈Come, let us drink〉。このうち〈Sir Walter enjoying his Damsel〉はハープシコード曲として知られる〈A new Irish tune〉に歌詞をつけて、器楽伴奏をともなう独唱曲としたもの。ほかはいづれもごく短いものばかりですが、おそらく大半が競合盤のない貴重な録音。茶目っ気あるパーセルの素顔が垣間見られるような、これはこれでパーセルのファンなら一度は聴いてほしいなつかしい演奏です。なお〈Pox on you〉は冒頭のゲロがなまなましい。パーセルでいちばん品のない歌では?

そのほか、D'Urfeyというほぼパーセルと同世代の作曲家によるトラック6〈Cold and Raw〉など、なかなか印象的。パーセルを生んだ音楽風土をかいま見るよう。

〈Come, let us drink〉はかつてデラー・コンソートの録音があって、テナーにポール・エリオットが参加してもいて、わたしもCD屋で手にしたことがあったんですが、録音時間がたしか40分たらずだったせいで買いそびれました。パーセルのキャッチばかりを集めたアルバムでした。しかしそういう企画のアルバムってその後も出てないと思う。そろそろ新しいのが出てほしいなあ。

パロット『パーセル_テ・デウムとユビラーテ』

2010年07月31日 | CD パーセル
Purcell
Te Deum & Jubilate
King, Platt, Van Evera, Wheatley, Davidson, Agnew, Berridge, Covey-Crump, Daniels, Parry, Grant
Teverner Consort, Choir & Players
Andrew Parrott
5 45061 2

1994年録音。70分05秒。Virgin。パーセルのアンセムはさまざまなスタイルの録音が出ていてそれぞれが聴くべきものを持っている。その中でもこのパロットのはかなり有力だと思います。《Te Deum & Jubilate in D》《In guilty night》《Jehova, quam multi sunt hostes mei》《When on my sick bed I languish》《Beati omnes qui timent Dominum》《My beloved spake》、以上のアンセムと、パバン第1~4番を併せて収録。パロットはパーセルとも相性がいいですねえ。とても活きのいいパーセルを聴かせます。最初の《Te Deum & Jubilate》と最後の《My beloved spake》はソリストたちによる独唱重唱と合唱の組み合せ。のこり3曲のアンセムはパート各1人のOVPPによる演奏。OVPPで聴くパーセルもなかなかいいなあ。

ソリストのキングは、テナーのアンドルー・キングではなくてメゾのキャサリン・キングのほう。この人はゴシック・ボイスでも歌っている人ですが、バロックも歌うのね。バリトンのベン・パリーは90年にパロットの『ディドー』でエネアスを歌っていた人。タバナー・プレイヤーズのコンサートマスターはマンゼ。

収録曲の中では、1694年の聖セシリアの祝日のために書かれたさわやかな『テ・デウムとユビラーテ』がやはり秀逸。ここではベテランのカビィクランプが存在感のある歌唱。次の『罪深き夜に』は最近パーセルの代表曲のひとつとして認知されつつある曲。シャルパンティエのオラトリオの一場面のような、派手ではないが奥行きのある宗教画の雰囲気。歌手はバンイブラ、ダニエルズ、グラント。いづれも意欲的な歌唱と演奏を聴かせてくれる。

ただし、あえて言えば全体にソプラノがやや地味に聞こえる。キャサリン・キングもバンイブラもメゾだしね。スカッと空に突き抜けるような声ぢゃないんだよねえ。カークビーが出ていないのが残念です。

ヒコックス『パーセル_ダイオクリージャン』

2010年07月03日 | CD パーセル
Purcell
Dioclesian & Timon of Athens
Pierard, Bowman, Ainsley, George
Collegium Musicum 90
Richard Hickox
CHAN 0569/70

1993,94年録音。46分18秒/65分34秒。CHANDOS/Chaconne。この『ダイオクリージャン』は思いのほかよいですよ。ピノック盤のような歌いすぎてる感じもなく、かといって物足りなさも感じさせず、ほどのよい爽やかさと活きのよさでパーセルの音楽の魅力が横溢している。パーセルのツボをしっかり押さえた満足度の高い演奏を聴かせてくれます。ヒコックスのパーセルはこのほかに『ディドー』があるくらいですが、もっと録音してほしかった。

ケースにはソリストが4人しか書いてないけど、4人以外にも何人か出てきます。テナーではマーク・パドモアとイアン・ボストリッジがチョイ役で歌ってます。Act Vの〈Oh, The Sweet Delights Of Love!〉は、ガーディナーやピノックのではソプラノの二重唱ですが、ここではエインズリーとボストリッジで歌ってます。あらまあこんな地味なところで豪華共演。

おもなソリスト4人の中ではエインズリーの出番が多く、またその歌もすぐれています。このころ、エインズリーはしだいに声が太く暗くなりつつあった時期だと思いますが、ここではうまく声をコントロールして、パーセルから逸脱せずにさらりとまとめている。ソプラノのCatherine Pierardという人は地味ですが、致命的な傷にはなっていない。また『アセンズのタイモン』では成人ソプラノではなくてboySを2人つかっていますが、これは感心しませんね。歌えてないんだもん。boySをつかうという発想そのものは悪くないけどね。もっと歌える男の子がいるはずなんだけどね。まあ『アセンズのタイモン』はおまけみたいなもんだから、これは我慢するかなあ。

CD1はAct IVまでにして、CD2にAct Vのマスクと補遺のエア2曲、それに『アセンズのタイモン』の音楽を収めている。これも好ましい。ガーディナーのもピノックのも、既出盤は幕の途中でCDを入れ替えないといけなかった。厳密に筋を追う音楽ではないわけだけれど、CDを入れ替える一手間で音楽の流れを断ち切られるのはあまり気分のいいものではない。ただ『ダイオクリージャン』補遺の2曲は、ガーディナーやピノックのように全曲のしかるべきところに組み込んでくれたほうがよい。

『ダイオクリージャン』の演奏に関しては、ガーディナー、ピノックの2種よりも総合点で上を行きます。歌手の出来に不満を感じさせるところがまったくない。ただ、ソプラノが1人しか出てこないので地味なのと、『アセンズのタイモン』のboySが未熟なのをどう評価するか。

パーセル『テンペスト』CD収録内容の異同

2010年06月08日 | CD パーセル
パーセルのセミ・オペラ『テンペスト』は、ガーディナーのとケビン・マロンのとを聴いています。演奏時間は、ガーディナー盤が57分余。マロン盤が52分余。(ただしマロン盤は他の曲も収録して、合計時間は76分14秒てことになってます。)まあね、57分と52分てのは、テンポの速い遅いによってそれくらいの差は出るかも知れません。しかしそれにしてはマロンと較べてガーディナーのがとくに遅いとも思えないんだよね。このこと、ずっと気にはなっていて、きょうやっとちゃんと調べてみました。そしたら、やっぱり曲の異同がありましたわ。

まづ序曲に続く第2幕。冒頭、Devil(マロン盤はSpiritと表記)が複数出てきてすこしづつソロを歌うんですが、ガーディナーはバスが2人、マロンのはバス3人で歌っている。つまりソロ部分の歌詞をガーディナーのは2人に振り分けて歌い、マロンのは同じ分量の歌詞を3人に振り分け直して歌っている。これはどちらがとくに不自然てことはなく、どちらでもいいと思います。

第3幕。Arielのエア〈Kind fortune smiles and she〉のあと、ガーディナー盤は〈Dance of Devils〉と〈The Sailors' Dance〉と、舞曲が2つ続きますが、マロンのは後者を欠く。1分くらいの短い曲ですけどね。ホーンパイプ調のかっこいい曲ですよ。

第5幕。Neptuneのエア〈Fair and serene〉のあと、ガーディナー盤では2分弱かかる合唱〈The Nereids and Tritons shall sing and shall play〉が歌われますが、これもマロン盤は欠く。

おなじく第5幕フィナーレ。2重唱と合唱〈No stars again shall hurt you from above〉。ガーディナーのは繰り返しが多めで5分30秒。マロンは3分16秒。しみじみしたいい曲なので長く聴いていたい。ガーディナーのほうがいいなあ。

ケビン・マロン盤は『テンペスト』のほかにいろいろ曲を組合せて収録していてお買い得ではあるけれど、かんじんの『テンペスト』についてさらりさらりとしてやや薄味。それと較べるとガーディナーのは歌手も地味で録音もやや古くくすんだ印象がありますが、でもさすがにガーディナーはパーセルに関してはツボを押さえたキリリと締まった演奏を聴かせてくれる。わたしはガーディナーのが好きですね。

ロンドン・バロック『パーセル_ファンタジア集』

2010年04月14日 | CD パーセル
Purcell
Fantazias
London Baroque
BIS-CD-1165

2000年録音。62分38秒。BIS。以前、パーセルの『3声/4声のソナタ集』をロンドン・バロックで聴いていたく感動したので、『ファンタジア』も聴きたいなあと思っていました。この曲集はフレットワークがVirginに録音したものも聴いたんですが、ロンドン・バロックのほうが気に入りました。

このロンドン・バロックのはバイオリン、ビオラ、チェロによる合奏。いっぽうフレットワークのはイギリス17世紀のバイオル(ビオール)曲集5枚組のなかの1枚で、バイオルの合奏だったわけです。べつにバイオルのコンソートが嫌いなことはないんですが、この曲に関しては、ロンドン・バロックの演奏のほうが、奥行き感、というか、曲の丈の高さを表現し得ている。フレットワークの演奏では、「これってそんなに名曲かなあ」とまで思いましたが、ロンドン・バロックで聴くとたしかに充実した曲だと分かる。ひとつひとつの曲の立体的な構造がきわだつ。これなら名だたるグループがつぎつぎ録音するのもうなづける。ロンドン・バロックもこれより前に一度Virginに録れていてこれは再録音だし、フレットワークも、Virginへの録音のあと、わりと最近HMFから再録音をリリースしました。プレイヤーにとってもそれだけ魅力のある曲集なんだってことでしょう。わたしは聴いてませんがサバールも録音してますね。

なんといっても一曲づつが短いので聴きやすく、時代楽器のしぶい音色がたっぷり堪能できる。おかしなもんで、いっぺんロンドン・バロックの演奏で感心した後でフレットワークの盤を聴いてみると、これが以前よりもよく聞こえたんだよなあ。

っていうかこの曲集、できることなら自分で演奏してみたいなあ。