歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

ポプラ文庫の江戸川乱歩

2008年10月28日 | 本とか雑誌とか
あとから気がついたんですが、メイリオはMacのTokyoフォントに似てますね。TokyoというのはMacの表示用フォントで、Osakaよりも大ぶりに作られていて、たしかに見やすかった。ほかにどんなメリットがあるんだったか忘れちゃったけど、わざわざCD-ROMを買ってインストールしたんですよ。

パロットの『ディドー』でエネアスを歌っていたベン・パリーは、スウィングル・シンガーズでも歌ったことがあるそうです。わたしの持ってるスウィングル・シンガーズのCDはバージンから出ている《Bach Hits Back/A Cappella Amadeus》って二枚組だけですが、これにもベン・パリーは出てるそうです。

ポプラ社がポプラ文庫というのを始めたそうです。偶数月の刊行で、サイトには今年の四月からの新刊案内が出ているのでそれがスタートだったんでしょうか。YAっぽいものも入っていて、女性のライターが多いのが目を引くけれど、とくにポプラ社ならでは、って感じでもなさそう。だったんですが、11月に、江戸川乱歩がいっきに6冊、『サーカスの怪人』『怪人二十面相』『少年探偵団』『青銅の魔人』『大金塊』『妖怪博士』 と出るそうです。これってつまり、小学校の図書館にずらっと並んでいたあのポプラ社版の少年探偵シリーズですわね。乱歩は光文社文庫からも全集が出てるんですけど、このポフラ文庫のも以後続々出続けるんでしょうか。あらなつかしい――と思ったんですがこれはやや早合点で、少年探偵シリーズは2005年にすでに文庫版になって出てたのでありました。

パロット『パーセル/ディドーとエネアス』

2008年10月27日 | CD パーセル
Purcell
Dido & Aeneas
van Evera, Parry, Lax, Ørbaek, Andrews
Taverner Choir & Players
Andrew Parrott
SRCR 2515

1990年録音。61分41秒。Sony Records。このパロットの『ディドーとエネアス』は、おとぎ話めいたバロック・オペラではなく、現代人にもじゅうぶんアピールする刺激に満ちた音楽劇です。もちろん古楽器を使って、人数もしぼって当時の演奏を再現しようとしてるんですけど、結果的に、古楽の復元とかいう枠を超えて、なんというか、コンテンポラリーな感覚に満ちたたいへんユニークなパフォーマンスになってます。あくまで音楽の美を追及したピノックとはまるで違う行きかたですが、数ある競合盤の中にあってこのパロットのもじゅうぶん存在意義をアピールしうる有力盤だと思います。

ディドーのバンイブラ以外の歌い手は、わたしははじめて名前をきく人ばかりです。ブックレットによると、エネアスのベン・パリーや魔法使いの女を歌うヘイデン・アンドルーズ(男)は俳優その他としても活躍するマルチタレントだそうです。第3幕はじめの水夫の歌もいかにも酔っぱらいが歌ってるように歌ってるし。こういう歌い手たちの起用や歌わせ方が良いほうに作用して、バロック・オペラによくある持って回った感じが全然なくて、たったいま書かれたばかりの舞台作品ででもあるかのような臨場感が生まれています。

器楽も合唱も最少編成。弦5部はすべて各パート1人。これに通奏低音のテオルボ/ギターとハープシコードが入って、それから楽譜にはないパーカッションや効果音(鳥の音や雷の音)が加えられています。ついでに言っときますとコンサート・マスターはマンゼ。そして合唱は上から4・2・2・2の10人編成。でも聴いていて人が少なすぎる感じはありません。この人数でちょうどいい。

ディドーのバンイブラは、この人はパロットを買うとたいていもれなくついてくるのでわたしはそうとう聴いてます。ハスキーな声質なのでこの役にはどうかなあと不安あったんですが、悪くないです。スレンダーで、セレブな感じで、現代的な雰囲気の女王さまになってます。ベリンダを歌うジャネット・ラックスというソプラノもいいです。

これはパロット2回目の録音。1回目はCHANDOSへの録音でディドーはカークビー、ベリンダはネルソンでした。

クリストファーズ『パーセル/妖精の女王』

2008年10月26日 | CD パーセル
Purcell
The Fairy Queen
Murray, Anderson, Fisher, Ainsley, Chance, Suart, Partridge, George
The Sixteen
The Symphony of Harmony and Invention
Harry Christophers
COR16005

1992ごろ?録音。66分16秒/65分34秒。CORO。ハリー・クリストファーズのパーセルを聴くのはこれがはじめて。クリストファーズのバロックものはバッハをはじめいろいろありますが、わたしはヘンデルの『シャンドス・アンセム』全集と『サムソン』を聴きました。どちらもすばらしかった。わたしは『妖精の女王』はガーディナーの演奏で慣れ親しんできたんですが、このクリストファーズのもガーディナーと同じ路線です。てきぱき、すっきり系。曲のよさを素直に聴けるいい演奏だと思います。

ソプラノのソリスト3人の中にベテランのアン・マレー(Ann Murray)が入っているのがポイントか。マレーはダブリン生まれのメゾで、アーノンクールの指揮でディドーを歌ったこともあって、パーセルもイケますよ。違和感なく聴いていられます。「嘆きの歌」はさすが深い味を出してる。それからバリトンでリチャード・スワート(Richard Suart)という人が入ってます。この人はギルバート&サリバンのサボイ・オペラあたりを主なレパートリーとしてきた歌い手ですが、始めのほうの酔っ払い詩人の歌などでその芸達者ぶりを発揮しています。

テナーのソリストはエインズリーとパートリッジですが、パートリッジは第4幕の2曲だけ。あとはエインズリーが受け持っています。ここでのエインズリーはまだ声が重くなる前で、爽快に、かっこよく歌ってますわ。やっぱええわエインズリー。第2幕のエコーの3重唱は、ソリストのアンサンブルではなく、合唱団の男声に合唱で歌わせています。それから第4幕の"Let the fifes and the clarions"をカウンターテナーではなく合唱団のテナー2人に歌わせています。

総じてソリストが適材適所で、フィッシャーとアンダーソン、このソプラノの2人とメゾのアン・マレーの使い分けもうまくいっているし、マイケル・チャンスも行儀よく出番をこなしているし、いいですよ。

メイリオ

2008年10月25日 | MacとPC
たまに見るWindows環境での画面表示の質の悪さには閉口してたわけです。で、Windows XPにメイリオを入れてクリアタイプ表示にして、このページを見てみました。これならいいよ。許す。メイリオとクリアタイプの合わせ技だと、けっこうイケますね。見るにたえる。ビスタもこんな感じなんでしょうか。

メイリオってのは横書きにしか対応してなくて、かつ、クリアタイプにしないときたならしいし、なんとも中途半端感がただようんですが、メイリオはつまりMS UI ゴシックの代替フォントなのね。画面表示用のフォントなのね。このあたりがよく分からない。MacのOsakaは画面表示にも印刷にも使えて、しかもじゅうぶん質が高かったのに。どうしてマイクロソフトは日本語フォントにこうも冷淡なのかしらんて思うんですよ。

マクリーシュ『パーセル/めでたし!輝かしきセシリアよ』

2008年10月16日 | CD パーセル
Purcell
Ode for St. Cecillia's Day 1692 "Hail, bright Cecillia!"
"My beloved spake" "O sing unto the Lord"
Hemington Jones, Wilson, Daniels, le Brocq, Podger, Harvey, Pott, Purves
Gabrieli Consort
Gabrieli Players
Paul McCreesh
471 728-2

1992,94年録音。70分16秒。Archiv。《めでたし!輝かしきセシリアよ》がおよそ50分。それからそれぞれ約10分くらいのバース・アンセムを2曲。ポール・マクリーシュのパーセルを初めて聴きました。ガーディナーの演奏では満足できなかったセシリアのオードがまづ素晴らしいです。それぞれの歌手たちのテクニックがすぐれている上に、マクリーシュの目指すパーセルにむかって、すべてのプレイヤーの心がひとつになってずばっと切り込んでいく。えー、うまく説明できないけどなんかそういう感じなの。とにかく密度の濃い演奏になってます。わたしはマクリーシュの演奏を聴いてはじめて《めでたし!輝かしきセシリアよ》って曲の真価が分かりました。これたしかにいい曲です。

ソリストが8人登場しますが彼らは合唱にも加わっていて、つまりトリニティ・クワイヤと同じシステムですな。ソロ歌う人も含めて、合唱は上から6・4・4・5のようです。いい感じの規模ですね。ソプラノにはコンスタンツェ・バッケスとかサリー・ダンクリーとかいますよ。ダンクリーはタリス・スコラーズ(その他)で有名な、泣く子も黙るおばちゃんですが、バッケスはこの人ガーディナーのモーツァルト・オペラのシリーズに出てたはず。こういう仕事もしてたんや。

"'Tis Nature's voice"はテナーの難曲ですがチャールズ・ダニエルズは的確に音をころがして端正に聴かせてくれます。この人、パドモアやアグニューよりもたぶん上の世代で、地味なので目立ちませんが、ノートルダム楽派あたりからバロックまでいろんなCDで歌ってるので、聴く機会が多いです。

バース・アンセムを2曲収録。パーセルのアンセムはいろんな指揮者やアンサンブルがいろんな曲をリリースしていて、それぞれのCDで収録曲が重なったりもするので聴きくらべが楽しいです。アンセムもいい演奏ですよ。

そんなに太くなかったヒラギノ明朝

2008年10月11日 | MacとPC
今までずっと、ヒラギノ明朝W3は太すぎると思っていました。そのため、思いあまって身銭を切り、ヒラギノ明朝W2をMacにインストールして使っていたくらいです。しかしW3が太いのは、わたしの使っていたインクジェットのプリンターのせいだったのね。レーザーのプリンターだとぜんぜん太いと思わない。むしろちょうどいい。レーザーの複合機を職場で買ってもらって、ようやくそのことが判明しました。

これまでわたしが使っていたのは、まだ優香がCMに出ていたころのエプソンのインクジェット複合機でCC-600PXという機種です。品揃えのなかでも安価なプリンターだったんですが、インクが顔料というのがこの機種にした決め手でした。いまとなっては動作は遅いけれど、使い勝手にとくに不満はなく、まあこんなものだろうと思っていました。しかし印刷品質は不満でした。「きれい」印刷でも、10ポくらいの本行に、ルビを振ると、もうそのルビはつぶれかけているんです。読むためにルビをつけているのにそれが判読できないのは困る。

で、今回入れてもらったのは、ブラザーの、レーザー複合機としては一番やすい機種です。まだ出て間もないDCP-7030というやつ。やっぱりレーザーにすると画質はぜんぜん違いますね。ヒラギノ明朝がすっきりスマートになった。もちろん小さい字もつぶれない。

でも問題がないわけでもない。思っていたより奥行きがあって、机の上に置くとかなりの存在感。それとねえ、レーザーではよくあるタイプで給紙がカセット式なんですが、この給紙カセットがどうも引き出しにくい。わたしは印刷用紙としてA4とB5を頻繁に入れ替えるんですが、面倒くさくて、しゃあない。

キングズ・シンガーズ『ジョスカン・デプレ作品集』

2008年10月05日 | CD ジョスカン
Renaissance: Josquin Desprez
King's Singers
BVCC-659

1992年録音。70分57秒。RCA。90年代に国内盤で出たジョスカン。そのころわたしはヘンデルに凝りまくっていたので目を向けるのが遅くなって、21世紀になってから、売れ残っているのを見かけて買ったのだと思います。──うーむ…、これはこれで立派なジョスカンだと思いますよ。しっかり聴きごたえあるし。しかしねえ、《Madrigal History Tour》のときの充実度、古楽との相性のよさからすると、このジョスカンは完成度において一歩劣るような気がします。

ハーリー、ヒューム、チルコット、ラッセル、キャリントン、コノリー。キングズ・シンガーズにデビューした時にけっこうショックを受けたボブ(ロバート)・チルコットなのですが、ここでもチルコットの声はたしかに悪い意味での存在感があって、キングズ・シンガーズのアンサンブルになかなか溶け込まない。さらにわたしはCTのデイビッド・ハーリーの声もあんまり好きぢゃないなあ。力で押してくる声なので。

曲の解釈においてはたぶん古参のアラステア・ヒュームやサイモン・キャリントンが主導権を握っていたんだろうなあ。ジョスカンの柄の大きさをよく伝えています。それだけに、肝心の声そのものの美しさに欠けているのが残念です。ふだん古楽をあまり歌っていなかったグループがいきなりここまで歌ってくれたんならそりゃ感心しますが、《Madrigal History Tour》であれだけすばらしい演奏を聴かせてくれたキングズ・シンガーズですからねえ。こちらの評価のハードルも高くなろうってもんです。

ヒリヤード・アンサンブルのジョスカンが出て評判になったのはこのアルバムの10年ほど前になりますか…。曲がいくつか重なっているので聴きくらべしてみるとおもしろいです。

キングズ・シンガーズはいまはSignumに移ってルネサンスものも積極的にリリースするようになっています。なにかきっかけがあったらSignumのCDもなにか買って聴いてみたいと思います。

キングズ・シンガーズ『イギリス・マドリガル集』

2008年10月04日 | CD ルネサンス-イギリス
All at once well met - English Madrigals
The King's Singers
CE33-5277

1974,76,82年録音。73分17秒。EMI。イギリスのマドリガルの名曲選で1枚もののアルバムとしては依然としてこれが一番なんぢゃないですかねえ。ヒリヤードやケンブリッジ・シンガーズのも持ってるけど、それよりこのキングズ・シンガーズのほうを勧めたい。ヒリヤードのは弾む感じがとぼしくてわたしの好みではなく、ケンブリッジ・シンガーズのは個性不足。その点このキングズ・シンガーズのは聴かせ上手で、古楽を歌う楽しみにも溢れている。これとCD版《マドリガル・ヒストリー・ツアー》は必備。古楽好きも、合唱やる人も。

74年と76年(前半の14曲)は同じメンバーですが、82年録音分(後半の21曲)になるとカウンターテナーとテナーに異動があって、ジェレミー・ジャックマン、アラステア・ヒューム、ビル・アイブズ、アントニー・ホルト、サイモン・キャリントン、ブライアン・ケイの6人になります。歌い手が異なっていても前半と後半と何の違和感もなく続けて聴ける。なお、翌年に録音された《Madrigal History Tour》ではケイがコリン・メイソンに交替することになります。

《Madrigal History Tour》の映像を見てもそんな感じがしたんですが、このころのキングズ・シンガーズにあっては、CTのヒュームとBrのホルトとカリントン、この3人あたりがおもに曲の解釈を担当してたんぢゃないでしょうか。現にこのCDでも通して歌ってるのはこの3人とケイで、ほかの人は途中で(そしてケイの場合はこの録音の後)他の人と入れ替わってるんですよね。で、この3人に残りの3人が巧くからんできて、キングズ・シンガーズならではの軽快で洗練の極みのような演奏スタイルをつくりあげてる──そのように感じました。