丸谷さんの書評は筑摩から文庫三冊の選集が出ましたが、一般向けのエッセイ選集は文春文庫から二冊しか出ないそうですよ。しかも筑摩の書評選よりも厚みが薄い。そんな理不尽なことがあるものか、と思いますな。ただしその内輪の事情は見当がつく。晩年のエッセイ集は多く文春から文庫化されましたが、もっと若い頃のはそうではない。『男のポケット』とか『低空飛行』とか、壮年期の傑作は、文春ではなく新潮社から出て、やがて新潮文庫に入ったのだった。おそらく新潮が、文春からの復刊を許さないのではないでしょうか。新潮にはここらのエッセイ集をぜひ文庫本で復活させてもらいたい。
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