歌わない時間

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「軽いけが」?

2010年12月07日 | 気になることば
NHKのラジオのニュースで聞いたんですが、きのう愛媛県のJRの駅で、75歳の女性が列車に乗ろうとして右手をドアにはさまれ、ホームの端まで80メートル引きずられて線路沿いに転落、頭などに「軽いけが」をしたそうです。列車は時速30km出ていたそうです。75歳が、時速30kmの列車に、80メートルもひっぱられて行って、そのうえホームから転落ですよ。それでもアナウンサーは「軽いけが」って言ったのよ。そりゃま、いまどき75歳の女のひとっていってもさまざまで、20代顔負けの運動神経をほこる人も稀にいるかもしれないけどさあ。でもこういう状況での負傷を「軽いけが」っていう言い方は可笑しいんぢゃないか。「軽いけが」っていうからには入院しなくてすんだんだろうか。っていうか、そのひとが入院しなかったからNHKは「軽いけが」って言い方にしたのかもしれないが。しかし少なくともご本人は決して「軽いけが」とは思っていないだろう。

さまざまな事故のニュースで、けがの程度をあらわすことばに「軽傷」「重傷」「重体」っていうのがあります。きっと、客観的に、どこまでが軽傷でどこからを重傷というか、は決まっているんでしょうが──そしてもちろん重傷と重体のちがいも明文化されているんでしょうが──、わたしはこの「軽傷」ってのがいつも気になるんです。そりゃ他人から見れば「軽い傷」だろうけどさあ。痛くて、夜、寝られんかも知れんぢゃないか。本人からすりゃ、「なんでオレがこんな大けがするんだああ!」って叫び出したい気持ちだろうと思う。いつも思う。

で、さいしょの愛媛の事故の75歳女性ですが、ニュースでは「軽いけが」といい、「軽傷」とは言わなかった。「軽いけが」と「軽傷」とはどう違うんだろう。もしかして「軽いけが」のほうが「軽傷」よりも傷が浅いのかな。