歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

ガーディナー『バッハ_クリスマス・オラトリオ』

2010年12月17日 | CD バッハ
Bach
Weihnachts-Oratorium
Argenta, Holton, von Otter, Blochwitz, Rolfe-Johnson, Bär
The Monteverdi Choir
The English Baroque Soloists
John Eliot Gardiner
POCA-9038/9

1987年録音。72分43秒/66分48秒。Archiv。流線型の、ガーディナー流バッハ。勢いのある演奏で、なおかつとてもカッチリしたフォルム。ほかの演奏を聴いたことがないから、較べてどうこうは言えません。わたしはけっこう気に入ってるんですがねえ。この曲は、6つのカンタータの連作と見なせるわけですが、その6つのカンタータぞれぞれをしっかりしたテクニックをもって勢いよくやっちゃえばなんとかモノになる、って面があるからね。そしてガーディナー自身、この曲は自分に向いてる、って思いがあったのではないか。というのも、彼は後にソリストを一新してビデオ収録していて、それはDVDで出ています。ガーディナーのバッハでDVDが出ているのはたしかその『クリ・オラ』だけなんですよ。

合唱は9・5・7・5。モンテベルディ合唱団に関してはいつものようにお見事、というばかりで、ほかにもう言うことはありません。ただこの演奏では合唱団よりもイングリッシュ・バロック・ソロイスツのプレイヤーたちの妙技につい関心が向きがちになるね。

福音史家はロルフジョンソン。ガーディナーがこのころ全幅の信頼を置いていた人ですが、ただ福音史家はドイツ語ネイティブの人がいいんぢゃないかって思いはあります。まあ天下のアルヒーフのことだから、ドイツ語のディクションについてはコーチがついてたはずですけどね。その他のソリストは当時の若手実力派をそろえている。やはりフォンオッターが一番ですかね。この人の引きしまった歌のフォルムはまさにガーディナーにふさわしい。ナンシー・アージェンタの、可愛らしいソプラノもなかなかよい。この人は『ソロモン』もよかったけどこの『クリ・オラ』がピークだったかも。テナーのアリアはブロボビッツ。バスはベーア。ふたりとも若々しく凛々しい。しかしブロボビッツもベーアもその後いまいちパッとしませんでしたねえ。

ガーディナーのバッハは悪く言う人も多い。特にアルヒーフ時代の『マタイ』は褒める人すくなかった。そして今ガーディナーが自主レーベルで録音し続けているカンタータのシリーズについてはほとんど評判を聞かない。別に無視しているわけではなくて、買う人があんまりいないんでしょうな日本ぢゃ。アーノンクール&レオンハルトのやコープマンの全集が先に完結して、折々安くなって再発されるし。バッハ・コレギウム・ジャパンのもあるし。でもYouTubeで見た2009年の『バッハ_ヨハネ受難曲』ライブでは、ガーディナーよかったですよ。相変らずのすっきりした造形ながら、長い経験からくる情感の表出が感じられて、この人なりの円熟を読みとれた。これから再録音したら、四大宗教曲もきっといいものができますよ。