歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

タリス・スコラーズ『ビクトリア_6声のレクイエム』

2010年05月16日 | CD 中世・ルネサンス
Victoria
Requiem
The Tallis Scholars
Peter Phillips
454 912-2

1987年ごろ録音。46分43秒。Gimell。きれいなビクトリア。ビクトリアはもっとねっとり聴きたい、こんなサラサラした演奏ぢゃダメだっ、とずっと思っていたけれど、このたび聴き直してみたらそんなに悪くもなかったね。サラサラ感は相変らずで、いかにも北方民族が歌ったビクトリアって雰囲気は濃く立ちこめているけれど、足りない分の粘り気は脳内で補っておくことにしましょうか。

サラサラ、とはいうものの、そこはタリス・スコラーズのことで、聴かせるべきメリハリはきっちりとつけてくる。内声が、1パートだけ、装飾的に動くところがあちこちあって、その歌わせ具合がこの曲の仕上がりのよしあしに関わってくるんですが、その匙加減が巧いのよ。さすがだわ。この『レクイエム』、わたしも歌ったことがあって、それでそういう細かいことを言うんですけどね。でもこのCDを買ったのは本番の後だったんですよ。終わるまでは聴くまい、と思ってわざと買わなかったの。

そもそもこの6声の『レクイエム』、自分で歌ってみると、ビクトリアのほかの曲みたいな息苦しさというのがないんですよ。いや、ほんと。ビクトリアの曲ってたいていどれもこれも歌うと息苦しくて、合唱団の練習が終わるとハアハアいってるんだけど、この曲に限ってはそんなことはなかったなあ。どこまでいっても休符がなくてずーっと音符を歌い続けてる、ってのはあるんだけど、それでもそんなに辛くないの。へー、こんなビクトリアもあったんだ、って思うような、不思議な軽みのある曲です。

当録音におけるタリス・スコラーズのメンバーは、Deborah Roberts、Tessa Bonner、Sally Dunkley、Ruth Holton、Caroline Trevor、Robert Harre-Jones、Charles Daniels、Nicolas Robertson、Mark Padmore、Simon Davies、Francis Steele、Donald Greig。SSATTBで各2名づつ。この12人ならモンテベルディでもヘンデルでもなんでも歌えるよなあとふと思う。