歌わない時間

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マンロウ『モンテベルディの同時代』

2010年05月13日 | CD バロック
Monteverdi's Contemporaries
The Early Music Consort of London
David Munrow
5 61288 2

1975年録音。59分08秒。EMI/Virgin。16世紀後半から17世紀前半にかけてのイタリアの作曲家による舞曲と、1~2声のボーカルに器楽伴奏の付いたモテット。モンテベルディ本人の曲はありません。アルバム前半の舞曲と、後半のモテットの取り合わせがいまひとつしっくり来ないですが、しかし演奏は今聴いてもなお冴え冴えとしていてすばらしい。特に後半は絶品。ボーカルはカウンターテナーのJames Bowmanに、テナーのMartyn HilとPaul Elliott。3人のみ。いっぽう器楽はかなりの大所帯で、総勢23人。Michael Laird、Ian Wilson、Peter Goodwin、John Turner、David Pugsley、James Tyler、Oliver Brookes、Simon Standage、Eleanor Sloan、Trevor Jones、Jane Ryan、Nigel North、Christopher Hogwood、Nicholas Kraemerなどなどの豪華メンバー。なおこれは75年の11月の録音だそうです。マンロウは76年の5月に世を去るので、死ぬ半年前の録音てことになります。

前半の舞曲がイタリアの盛期ルネサンスの器楽曲らしい愛らしさを見せるのに対し、後半のモテットはむしろ初期バロックっぽい清新さをたたえている。どの曲も伸びやかな曲想で、美声を楽しむにはうってつけ。順にボウマン&ヒルのデュオ、ヒルのソロ、ヒル&エリオットのデュオ、おなじくヒル&エリオット、ボウマンのソロ、最後にボウマン&エリオット。ボウマンも悪くないけど、なんといってもヒルとエリオット。20世紀イギリスの古楽系テナーを代表する美声のふたり。どちらも声の調子がとてもいい。ヒルの場合、声が頭に響かないでノド声になる場合が往々にしてあるんですが、ここではまったくそんなことなくて、うっとりさせられる。聴くべし。このふたりのデュオってめったに聴けないのよ。ヒルはボウマンとの二重唱でも清涼感ある歌いっぷりで、さすがの安定感。どの組合せを聴いても二重唱ってのはこういうように歌うんだ、ってお手本みたいな演奏ですよ。よく聴きあって、フレーズの受け渡しをていねいに。伴奏楽器はオルガンだけでなく、曲によってガブリエリやらさらにはモンテベルディの『晩課』を思わせるような管の華やかな音が聴こえてきたりして、にぎやか。やっぱこれはバロックだよ。