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アートネタなど日々のあれこれ

グレート・ミュージアム

2017-01-17 20:57:28 | 映画
ヒューマントラストシネマ有楽町で「グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状」を見てきました。(この映画館での上映は既に終了しています。)

2012年に始まったウィーン美術史美術館の改修工事の舞台裏を撮ったドキュメンタリー。淡々としたドキュメンタリー・・・というか、どうも淡々とし過ぎている、と思ったら、これはダイレクトシネマという手法なのだそうです。解説も音楽もインタビューもない映像。装飾がない分、独特の生々しさが。ちなみに、監督さんは美術史を学ばれた方のようです。(以下、ネタバレ気味です)

ウィーン美術史美術館。世界三大美術館の一つにも数えられる、言わずと知れた大美術館。よって、映画に登場するスタッフも多様です。総館長、財務責任者、各館の館長、クリエイティブディレクター、修復家、お客様係・・・。彼らの仕事は「ハプスブルグ家の遺産を管理し展示すること」。とはいえ、やっている事は、普通の会社とけっこう似ていたりもします。ブランド戦略やら予算をめぐる攻防などなど。一方、黙々と緻密な作業を続ける修復家たち。かと思うと、自分たちの扱いに不満をもらすお客様係。彼らの間にも微妙にヒエラルキーのようなものが存在しているのでしょうか・・・。

しかし、普通の会社と違うのは、彼らが「ハプスブルグ家」を背負っているということ。重荷だと言う者もいます。「ハプスブルグ家の忠実な僕となるか、現代人として市場に身を委ねるか」という葛藤は、おそらくこの美術館で働くだれもが抱いているのでしょう。かと思うと「古いのは美術品と建物だけ」と言う者も。「500年前の作品が現代人にとってどんな意味を持つのか」という問いかけは、見る者にもあてはまりそうです。たぶん、「500年前の作品」が、めぐりめぐって今を生きる力をあたえてくれるんだと思う。そして、500年前と今をつないでいるのが、この映画に出てくるような人々の日々の営み・・・。

むかしむかし、ウィーン美術史美術館に行ったことがあります。あまりに昔のことなので、記憶も朧なのですが、とにかく膨大なコレクションに茫然としたこと、日本に◯◯美術館展といってやってくるのは、ほんっっっの一部なんだろうな、そして本当のお宝は外には出さないんだろうな・・・と思ったことを覚えています。

ところで、この映画、最後にブリューゲルの「バベルの塔」がクローズアップされます。今年、もう一枚のバベルの塔が日本にやってくるらしいですね。そっちも楽しみ楽しみ・・・。
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