京都細見美術館展Part2 琳派・若冲と雅の世界に行ってきました。
普段なら京都へ行かなくては見られないものが今回はどーんとまとめて見られてしまう嬉しい機会。
3月に見たPart1からようやくって感じです。ほんと待ち遠しかったのです。
(関連記事:京都 細見美術館展 Part1 都の遊び・王朝の美 -美を愛でる、京を知る-(そごう美術館))
■祈りの美
☆蝶鳥下絵法華経断簡
とても小さいのだけど蝶と鳥と草とがかわいらしい。
経文以外の上下に描かれているだけではなく、ちゃんとお経のエリアにも描かれてる。
これ便箋にしてくれたら絶対に買うのになあ。
☆六観音像
もともとはタイトルのとおり6点組みだったのが、馬頭観音のみ損失されてしまい5点が現存している。
今回はその中から二点。
まずは十一面観音。
この顔がカラーで肌色がきれい。表情がみな微妙に違ってる。
如意輪観音はあんまりエロくない。でも、この宇宙に通じてるかの感覚は素晴らしい。手に載せてる三角の法具がなんかそんなスペーシーな感じを醸し出してる。
どちらも鎌倉時代の彩色なのに状態がとてもよい。
他の三点は聖観音、千手観音、准胝観音。
レインボーの聖観音が見てみたい。
鎌倉以前の作例が少なく貴重とのこと。納得。
■王朝の雅と源氏絵
☆土佐光吉『源氏物語図色紙「初音」』
小さいのだけど細い金の線がなんとも美しい。
満開の白い梅とは裏腹に源氏から目をそらす切なさが画面から出ている。
☆藤の衣物語絵巻
ネームがやたらと多い。
表情がマンガ的なのはよく見るけどここまで活字がマンガみたく入り混んでるのは初めてみました。
これTシャツにしたらいいと思うなあ。
■華麗なる琳派
☆忍草下絵和歌巻断簡
本阿弥光悦 書
俵屋宗達 下絵
忍草は檜などの草を版木がわりに使ったのだそう。
このフォルムのまんまなところはそういうことか!
でも、金泥銀泥だから実際の草のイメージとはかけ離れてて違いすぎる。
見てて飽きないんですよね。
山陰やさらても
庭にあとも
なし
春そ来にける
雪の村消
藤原有家
新古今和歌集 第十六 雑歌上
最後の行「雪の村消」のところだけ太くなってるのが気になりました。
☆俵屋宗達「双犬図」
白いワンコが黒いワンコにヘッドロック!
あっ、うそ。前脚を首に回してはいますが。
この目が線を引いただけのシンプルなものなのだけどなんともかわいい。
黒いワンコの墨滲みの描写も味わい深い。
☆尾形光琳「宇治橋図団扇」
金地に斜めにかかる茶の橋。そのすぐよこに銀で描いた渦二つ。
今見ても斬新すぎる。
このバランスがかなり無茶。でも、ばっちりきまっちゃってヤバイです。
☆中村芳中「朝顔図」
まん丸な朝顔の花。葉のほどよいたらしこみ。
画面全体のリズムがなんとなくかわいらしい。
☆酒井抱一「青面金剛像」
黒い背景にカラフルな金剛と夜叉と鬼。
ポーズもそれぞれにバランスがとれている。
描表装がまた素敵。これもちゃんと解説を読んで気づいてはっとしちゃう。
☆酒井抱一「扇面貼交屏風」
なんと18枚もの扇面が貼られていてバラエティに富んだ内容。
上から描いたナマズ。茅葺屋根の茶色に少し入った緑。石灯籠の後ろに隠れるかのような鹿。後脚で顔をかく白ウサギ。
そして一番気になったのが葉の上に乗った朱塗りの盃。
この下は流水??
解釈にとても悩みました。どういう配置なんでしょうね。
☆四季草花虫図屏風 琳派(作者不詳)
六曲一双。右隻は金バック、左隻は銀バック。
酸化して黒ずんだ銀箔がなんともよい味わい。
そして細密に描写された昆虫が美しい。
バッタの体の細い線など丁寧で立体感が見事。
左隻のラスト、雪の降り積む草木も素敵!
☆鈴木基一「朴に尾長鳥図」
朴の葉のたらしこみがお見事。
これでもかってくらい。
でも、尾長鳥はシンプルで表情も冷静。ざわついた葉の描写と比べるとかなりストイックで対照的。
☆鈴木守一「業平東下り図」
描表装がこれでもかというくらいに過剰な構成。たまりませんね。
上から桜、椛、杜若、タンポポ、ツクシとてんこ盛り。
あっ、もちろん業平もよいですよ。色キレイですし。
■若冲の魅惑
☆ 伊藤若冲「風竹図」
フォルムと筆さばきの楽しさ。
筆致が速いのがよくわかる。
そして、この竹の前に描かれてる岩がもう謎なフォルム。
地面よりもてっぺんのほうがでっかく明らかにおかしい。
☆伊藤若冲「瓢箪・牡丹図」
瓢箪のこのフォルムがなんとも愉快。
本体にちょろっと出てる弦が元気があって可愛らしい。
牡丹は墨のコントラストが面白い。
葉はこれでもかというくらいに濃いい黒。花は灰色の生っぽい滲みが美しい。
蝶の線がかなり速いスピードで描いたのがわかる。
☆伊藤若冲「雪中雄鶏図」
署名が景和。かなり初期の作品。
この細密な描写はやはり敵なしですね。
雪の描写は後年のものには及ばないもののそれでもあのべっとり感はお見事。
右の竹の楔状に絡むように描かれてるのが気になりました。
☆伊藤若冲「鶏図押絵貼屏風」
おかしみとバラエティ。正面から描いた顔とかもうオリジナルの鶏とはまるで別ですもん。
尻尾のひゅっとしたスピードとカーブが心地よい。
ひよこもやっぱりかわいい。
鶏たちの崩し方が変幻自在。
普通、六曲一双で12枚、鶏見たら飽きるはずだけど、まるで飽きない!!
☆伊藤若冲「菊花図押絵貼屏風」
こちらも菊のバリエーションが面白かったです。
まるで種類の違うものを描いてる。
まん丸のものからとんがったのまで。
にしても、枝の曲がり方の歪なバランスの美しいこと。かなりアクロバティック。
明らかにおかしいのだけど画面にして見た時に実にいい。
☆若演「遊鶏図押絵貼屏風」
『増訂古画備考』に「若冲の子なるか」とある。
↑キャプションにはこのように書かれてました。
以前に東博でみたプライスコレクションで、若演の「芭蕉図」を見たことを思い出しました。
こちらには伊藤若演となってましたがどうなんでしょう?門弟のひとりだとは思うのですが。
さて、こちらの鶏は若冲とは違う!
若冲にある生っぽさが薄くもうちょっと洗練されててデザイン的。
びっくりしたのは一番最後の面。
なんと弦に鶏が横向きに脚で捕まってる!
うわー、これは若冲はやらないですよね。
思わず笑ってしまいました。
でも、なかなかよい出来で素直に好きですね。
■かざりの意匠
釘隠しと引戸
が点数とバラエティに富んだ内容。
中でも夕顔文釘隠が圧巻。
釘隠しは横幅27センチと最大クラス。
ってか本来の役割の「隠す」ためのものから、それ自体が「飾り」として主張するように転換しちゃってるのが面白い。
この他に能装束や茶釜なども。
ともう満足しきりの内容でした。
惜しむらくは暗めの照明。そしてリストを出していないところ。
図録にありますというので済ませるのではなく、それをコピーして置いておけばいいのになあと思ってしまいます。
内容が文句つけられないレベルですごいだけに残念です。
7/16まで。