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福田平八郎と日本画モダン 前期展示(山種美術館)

2012-05-27 22:54:34 | アート系

山種美術館で昨日からスタートした「福田平八郎と日本画モダン」に行ってきました。

日本画モダンとは今回の展覧会にあたり、監修者の山下裕二先生が出品作品を特徴づけるフレーズとして生み出した造語なのだそう。

琳派へのオマージュ、主題の再解釈、大胆なトリミング・斬新なアングル、構図の妙、風景のデザイン化の5つのポイントに分類されます。

おそらくこの「日本画モダン」という言葉は今後も使われてくのではないでしょうか。そうするとこの展覧会を見られたことはちょっと自慢出来るのではないかなあと。

今回は2章だて。


-1章- 福田平八郎

☆「青柿」

唯一のお弟子さんだった正井和行の言葉がキャプションにあったとおり。

一枚の葉を色彩分割で描くというのはそれまでの日本画に見たことがないのだとか。

なるほど、色を変えて描かれる葉はなんとも鮮やか。

青と緑が眼に心地よい。


☆「鯉」

ぬぼおとした表情がよい。

重ねられた静かな面持ちのブルーの岩絵の具は日本画ばりばりなんですが、線に漂うある種の緩さというか軽味が他とは違うものとしてそこにある。


☆「桃と女」

今回転じされている平八郎の作品では一番古いもの。

なんと雅号は九州。

出身地が大分ということで付けたとのこと。

さて、それはさておき、なんとも雰囲気がある絵。

おんな2人の表情が面白い。交わす目線。

なんとなくちょっと性的な雰囲気が出ちゃってる。桃はやっぱり、、、だし。

葉のバナナのような反りのあるフォルムはファロス的。

しかも桃には袋がかけられている。

実際にどこまで意図してたかは分かりませんね。



☆「漣」(さざなみ)

今回、一番衝撃度が高かった作品。

銀バックに青い線が横にてろてろと漂ってる。

このミニマムな構成が無駄が無くかつぎりぎりで必要充分で構成される美しさ。

もう日本画という領域すら超えてしまってる。

銀箔を発注したのだが、表具屋が勘違いして金箔で用意してしまったので、その上から銀箔を貼ったところ、むしろこちらのほうがよかったとのこと。

この横に実際に金箔の上から貼ったのと比較してるのが資料として展示されていました。これは分かりやすくてよいですね。


このほかにも、筍、鮎を描いたのが3点、色鉛筆で描いたスケッチも。

※なお、チラシやポスターを飾る「雨」は6/26からの後期展示で登場します。



-2章- 日本画モダン

琳派へのオマージュ、主題の再解釈、大胆なトリミング・斬新なアングル、構図の妙、風景のデザイン化の5つのポイントに分類して展示されていました。


琳派へのオマージュ
大胆な意匠化や装飾性で知られる琳派の造詣と親近性の強い作品を紹介する



☆俵屋宗達[絵]、本阿弥光悦[書]「四季草花下絵和歌短冊帖」
(全18面のうち「千羽鶴」「浜松」「薄に桔梗」)

「波に垂柳」「桜花」「桜」「卯の花」「夕顔」「藤」「躑躅」「月に松山」
「薄に桔梗」「萩」「団菊」「朝顔」「椿」「浜松」「枯柳」「千羽鶴」

全18面のうち第1面「波に梅」、第18面「野草」はスペースの都合で展示出来なかったとのこと。うむむ残念。

てっきり近世の日本画家で来ると思ってたのでこれは嬉しい誤算。

酸化して黒ずんだ銀がしぶい。この16枚は何度も行き来してじっくりと見てきました。

和歌は新古今和歌集から。ちゃんと詠み人知らずの歌もあるのが素晴らしい。


☆加山又造「涛と鶴」(小下絵)

ロビーに飾られた陶板の作品の下絵。

大きさが小さいと全体が一目で見ることが出来てスケール感が異なるし、印象も違ってくる。

やはり異様でよいです。エッヂの立ち具合が琳派をより過激にした感じでかっこいい。


主題の再解釈
西洋絵画の主題表現を思い切って取り込んだ作例


☆川端龍子「真珠」

大事なところを隠すその場所にパール。

この女性の目の中の点、乳首の点、パールの点の5点が妙に気になりました。

西洋絵画モチーフなんですが日本画に持ってきてしまってる違和が面白い。

左隻の横たわる女性の胸に手を持ってくポーズと背景の渦潮がなんとも。。。


大胆なトリミング・斬新なアングル
構図の妙
画面構成や構図におけるモダンな感覚に注目


○大胆なトリミング・斬新なアングル

☆川端龍子「月光」

タイトルにある月はおまけで画面いっぱいに描かれているのは寺院の門か?

この梁の直線の連なる様が圧巻。画面みっしりです。


☆奥村土牛「北山杉」

幹の線の這う具合がよい感じ。

かなり意図的で実景ではないところがよいなあと。


○構図の妙

☆前田青邨「鶺鴒」

波の質感描写が素晴らしい。

海の青、波頭の白。その上を翼をピーんと伸ばした鶺鴒が飛んでく。


☆牧進「寒庭聖雪」

画面の下にちょこっと描かれたスズメ。

上方へは白く開かれているもののそこには意匠化された雪の結晶が。

この構成はちょっと面白い。雪のバックの白は地の白ではなくちゃんと描かれているのがポイント。


風景のデザイン化
自然本来の表情を残しながら、抽象性を高めることで自然美の新たな表現をめざした作品を取り上げる

☆山田申吾「宙」(おおぞら)

超広角のレンズで見たような地平線の草が歪んで見える。

雲の色味の多さがキレイ。


☆正井和行「庭」

平八郎のただ一人のお弟子さんとのことで納得。

着眼点がおかしい。ストイック。

水平線に少し斜めに入る幾重にも続く線。その向こうに山と月。

もう日本画に見えない。もう一点並んで展示されている「流水」もおかしい。


やはりここに来ると作品とじっくりと向き合えます。至福の時間。

さて、後期も楽しみです。

前期展示:5/26(土)~6/24(日)
後期展示:6/26(火)~7/22(日)

↓こんな嬉しいお知らせも

半券割引サービスのお知らせ(2012年05月26日)
【特別展】生誕120年 福田平八郎と日本画モダン」展の前期(5/26~6/24)にご来館された方は、本展チケットの半券を後期展(6/26~7/22)にお持ちになると後期展は一般1000円、学生700円になります。是非ご活用ください。
(半券一枚につきお一人様一回限り)


他にはこんな企画も。

「福田平八郎と日本画モダン」展の関連企画 フォトコンテスト開催のお知らせ
http://www.yamatane-museum.jp/2012/05/photocontest.html.html

東山魁夷/福田平八郎 アート・ギャラリー・ジャパン/20世紀日本の美術 ジャケット版 (8) (アート・ギャラリー・ジャパン) (アート・ギャラリー・ジャパン 20世紀日本の美術)
クリエーター情報なし
集英社
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