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2022年第25回上海国際映画祭、“来年に延期”~映画「花束みたいな恋をした」中国でヒット

2022年06月08日 | エンタメの日記
約2ヶ月間続いた上海のロックダウンは6月1日にほぼ解除されました。6月1日に再開したのは交通機関、病院、スーパー、飲食店(主にテイクアウト)、宅配便、理髪店、スポーツ施設などです。劇場や映画館は全面休業が続いており、いつ営業再開するのかまだ告知されていません。

上海では毎年6月に「上海国際映画祭」が開催されていますが、先日「2022年6月に予定されていた第25回上海国際映画祭を来年に延期する」と発表がありました。
毎年開催されるイベントなのに「来年に延期する」という不自然な表現が用いられたため、「要するに中止なのになぜ中止と言わないのか?」「来年2年分やるつもりなのか?」と波紋を呼んでいます。上海映画祭が中止されるのは、SARSが流行した2003年以来だそうです。


コロナが世界的に流行しはじめた2020年の上海映画祭は、観客数を30%に制限し、約1ヶ半月遅れで7月下旬に開幕しました(過去記事)。
翌年、2021年は海外ゲストは呼べなかったものの、客席100%使用に戻し、上映本数も本来の規模で開催されました。「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」「劇場版るろうに剣心最終章」などの新作が日本とほぼ同時に上映されました。
コロナをかいくぐってきた上海映画祭も、2022年になってついに中止となりました。世界的にはコロナ対策規制が解除される傾向にありますが、中国は逆行する状況にあります。

日本映画は昔から上海映画祭に力を入れており、日本映画は上海映画祭の目玉です。多くの新作日本映画が上海映画祭で先行上映され、日本国内でも滅多に上映されないような旧作も多く上映されます。2021年の第24回上海映画祭では「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」がDolbyシアターを使ってワールドプレミアムとして世界初上映されました。
中国で映画を劇場公開するためには中国当局のセンサーシップに通過する必要がありますが、「映画祭」の枠で申請するとセンサーシップに通りやすいと言われており、このことも日本側が上海映画祭を重視する一因と思われます。

中国映画市場は中国映画のシェアが圧倒的に高く、中国映画に対抗しうるのがハリウッド大作、MARVEL作品、ディズニー等の3Dアニメです。
日本映画の場合、やはりアニメが強く、名探偵コナン、ポケモン、ONE PIECE、ドラえもんなどのメジャータイトルの劇場版は、かなり中国にも入ってきています。
日本実写映画はアニメに比べて存在感が薄いと言わざるを得ませんが、2022年2月に菅田将暉、有村架純主演の「花束みたいな恋をした」が中国で公開され、日本映画としては大ヒットしました。

「花束みたいな恋をした」 日本公開2021年1月29日 主演:菅田将暉、有村架純
中国タイトル「花束般的恋爱」(花束般的恋愛) 中国公開2022年2月22日


“2”は中国語の語呂では「愛」を表し、“2”が並ぶ2022年2月22日にこの映画が公開されたのは特別な意味があります。
とはいえ、実際には、2月下旬は中国各地でコロナ感染者数が増加傾向にあり、2月22日だから何か特別なことをしようという雰囲気でもなかったのですが、「花束みたいな恋をした」は大きな反響がありました。
特に都市部に暮らす20代の若い女性社会人からの反響が大きく、レビューサイトで高い口コミ評価がつきました。恋愛のあり方について自身と重ね合わせた深いコメントが多く、主人公と同年代の男女が真正面からこの映画を受け止めていました。
「花束みたいな恋をした」に出てくる様々なサブカルネタが中国人に分かるのかな?と思ったのですが、押井守が本人役で登場するシーンで客席から「おお~」と唸り声が上がったので、観客の多くは日本カルチャーに対する見識が深く、ネタをかなり理解できているようです。

「花束みたいな恋をした」の中国興業収入は、2022年6月7日の時点で9545.8万元、現レートで換算すると約18.6億円になります。
この数字は当初の予測を大幅に上回っており、日本実写映画としては大成功です。




このポスターは、上映期間が6月21日まで延長されたことを宣伝するものですが、
「中国正規上映された日本実写映画ラブストーリー作品興業収入TOP1」
「中国正規上映された日本実写映画総合興業収入TOP2」
と書かれています。
「花束みたいな恋をした」は中国で正規劇場公開された日本実写映画として歴代2位の興業収入を記録したのです。
1位は2018年8月に公開された「万引き家族」の9674.6万元です。つまり、1位との差はごく僅かです。
もし「花束みたいな恋をした」の中国公開時期がオミクロン株の流行と重ならなければ、興業収入はもっと伸びたはずです。
とはいえ、上海、北京が本格的にロックダウンする前に公開できたので、ギリギリセーフだったとも思います。

この数年、中国の映画館では「貸切上映」が流行っています。
中国の映画館は基本的にすべてシネコンなのですが、個人でも割と簡単にスクリーンを貸切ることができます。映画チケットアプリに貸切上映を申請する機能もあります。
「花束みたいな恋をした」も貸切上映が多数行われていました。貸切上映を主宰するのは菅田将暉のファンサイトであったり、映画鑑賞サークルであったりと様々です。貸切上映の規模が大きくなると、企業がスポンサーにつくこともあります。

2022年4月以降、中国ではオミクロン株拡大の影響を受けて、ほとんどの新作映画が公開延期となっています。
5月のゴールディンウィーク、6月1日国際こどもの日、6月3日端午節連休などに合わせて多数の新作がラインナップされていたのですが、上海、北京などで映画館が全面休業となったため、多くの作品が公開を見合わせました。
中国映画は莫大な資金を投じて制作されるため、投資を回収するためには全国の映画館がマックスで稼働する時期に公開を合わせる必要があります。
そんな中、「ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」が5月28日に中国で公開され、好成績を上げています。


「ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」は北京と上海の映画館が完全休業する中、公開に踏み切りました。(北京は5月29日から一部の映画館で営業再開)
同じ時期に公開された作品が少なかったため、「ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」は6月1日の子どもの日(国際こどもの日)の単日興行収入がトップとなりました。これは快挙です。映画レビューサイトでの評価スコアも高く、レビューサイトにコメントを書くのはもちろん大人の観客なのですが、非常に高い満足度を表すコメントが多く寄せられています。

昨年2021年10月29日には映画「おくりびと」が中国で再公開され、興業収入6622億元(現レートで約13億円)を記録しました。
「おくりびと」も、コロナの影響で他の中国映画が公開を渋り、映画館で流す作品が不足していた時期にちょうど上手く当てはまりました。
その少し前には岩井俊二の「ラブレター」も中国で再上映されており、「おくりびと」と同じ水準の興業収入を上げています。
「おくりびと」も「ラブレター」も大分前の作品ですが、豆瓣(ドウバン)など中国のレビューサイトでの口コミ評価が非常に高い作品です。
2021年夏以降、コロナがなかなか収束しない中国の映画館で、いくつかの日本映画が思いのほか好意的に迎えられ、興業的にも健闘したということができます。
コメント (2)
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