グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

豚コレラが関市の大型養豚場で発生したということで。

2018-12-26 14:03:49 | Weblog
豚コレラが関市の大型養豚場で発生したということで。

県内有数の規模で防疫態勢も万全だったとみられただけに、養豚業界には不
安の声が広がった・・・と報道されている関市の約7800頭を飼育してい
る養豚場で発生した豚コレラ。   ​ということで、
この問題の関連として 
10月12日から3回にわたって考察したの当ブ
ログ記事の採録です。よろ
しかったら、ご参考に。

 ↓

『10月12日分 / イノシシが県境からでないのなら話はべつですけれど』

10月10日の日経の新聞記事によると・・・県議会の答弁で「拡散範囲は
かぎられているのではないか」と、野生イノシシの行動範囲について強調さ
れて答弁されたという古田肇岐阜県知事。記事は ​こちら​。

しかし岐阜で発生した豚コレラウイルスに感染した野生イノシシについての
農水省資料を見れば、

 野生イノシシの調査捕獲区域[地図は​こちら​]が限られている

という現実があり、また実際に感染したことが確認されたイノシシの頭数も
12日時点でいまや20頭に増えているわけなのですから、その知事発言は
あまりに希望的観測すぎる[はっきりいえば甘すぎ!] といえます。

それはそうでしょう、研究者によれば豚コレラウイルスは

 ● 猪だけでなく農場やたい肥置き場に出入りする小動物からも感染する
 ● ヒトの履いている靴の、靴底の土からも感染する

というのはもとより

 ● 生肉類はもちろん、ハムやソーセージの加工品からも感染する

と まるで妖怪のようにも[​こちら​] いわれているのですから。

したがって前述の封じ込めのリーダーであるはずの知事発言は、せめて

 農場に出入りする野生イノシシを防ぐために岐阜県内で貸し出しをは
 じめていたという柵だけではなく、小動物の侵入を防ぐメッシュの金
 網を岐阜県内のすべての養豚場に設置する

などといった対策が終わったあと[もちろん調査捕獲区域も広げたうえ
で]に言ってほしかったな と思うのです。なんといっても発病がおこ
っていた段階での初動対応にミスがあったと 岐阜県自らが認めてもい
たはず[​こちら​]なのですから。

まあ、[むかし話にでてくる鳥と話せる聞耳頭巾のような]野生のイノ
シシに向かって県境からはでないでねなんて話せる頭巾を、古田知事が
お持ちでしたらば話はもちろんべつになるのですけれどね。


晴れ 届け出伝染病であるPEDこと豚流行性下痢でさえ、いまだに
  克服できていない現実[​こちら​]があるのですから、よけいに
  豚コレラは 心配にもなります。
  
 

『11月26日分 / 豚コレラウイルスのこれ以上の拡散を防ぐためにも』

岐阜市におけ豚コレラの問題で、11月15日に岐阜市の畜産センターの
公園の豚2頭から豚コレラウイルスの陽性反応が出たのだそうですね。
報道によれば

 市畜産センター公園は、市民が動物と触れ合える憩いの場で、豚は
 出荷もされている。岐阜県などによると15日午後、獣医師から
 「豚の元気がなくなり、熱が出ている」と県中央家畜保健衛生所に
 連絡があった。県の検査で陽性と判定され16日未明から防疫措置
 に着手した

などと さらっと書いてありますが、民間よりもちからをいれておかねば
ならない、防除のお手本ともなるべき 公/おおやけの施設から現実に2例
目の感染を出してしまったわけですから、なんともびっくりというか く
ちあんぐりというか、驚かざるを得ない事態になっているようで 農業関
係者のひとりとしては じつに不安になってしまいます。

なんでまたそんなことに・・となった この岐阜市畜産センターの豚コレ
ラの感染の起こった原因ですが、

 ● 豚舎周辺だけが衛生管理区域に設定されており、関係者が行き
   来する飼料や
堆肥置き場が衛生管理区域に設定されていなかったこと
 ● 豚コレラに感染した野生猪の存在がセンター周辺で確認されて
   いたにもかかわらず、公園エリアと畜産エリアで共通の機械が
   使用されており、 その機械類を衛生管理区域で使用する際に 
   洗浄・消毒が行われていない事例もあったこと
 ● 飼養管理者等が豚舎に入る際に専用の衣服を着用しておらず、
   作業用の長靴を消毒のみで豚舎で使用していた場合があること​​


などが確認されているといいますから、これなら感染しても当然というか、
むしろよくいままで 感染・発症しなかったなあ・・と逆に感心してもしま
います。 なんといっても豚コレラウイルスは

 ● 猪だけでなく農場やたい肥置き場に出入りする小動物からも感染
 ● ヒトの履いている靴の、靴底の土からも感染する

というのはもとより

 ● 生肉類はもちろん、ハムやソーセージの加工品からも感染する
   [実際に日本の空港などでは​探知犬​も活躍しているんですよ]

と いうのが定説であり、常識であるのですからね。・・・そういったこ
とから考えれば、 
農水省のページなどで公開されている野生のイノシシの豚コレラウイルス
感染個体数が増加し続けてなかでの この岐阜市の畜産センターのとって
いた対策って・・・なんとも不可解としかいいようがない気がします。。

たとえばですが、ウイルス病対策のいち例として、宮崎県の養鶏関係者では
現場の鳥インフルザ対策として

 ● 鶏舎内にはいるときはその鶏舎専用の作業服や靴を用意する
 ● ウイルスを持っているかもしれない野生の鳥のフンが落ちてくる
   のを警戒して作業服などの洗濯物を戸外で干さない 
 ● 定期的に巡回して鶏舎への小動物の侵入防止策を徹底する

といった対策をとるのはしごくあたりまえというか、当然というか、そんな
かんじで防除している現実がありますから。

とはいったものの、でちゃったものはしかたない。・・・豚コレラウイルス
が日本全土に拡散していくことがないように、そしてこれ以上のブタの生命
や 野生のイノシシたちの間の感染拡大をすこしでも減少させていくために
も岐阜の関係者のみなさまには、
今後のウイルス対策をしっかりきっちり実行されてくださることをお願いし
たいと思います。


晴れ ちなみに​こちら​は 宮崎の口蹄疫発生時の、防疫の初動が遅れた
  経緯をご紹介した回です。参考にしていただければ さいわいです。
  
 

『11月26日分 / ​ウイルス病。ネズミ一匹でも大山鳴動な時代へ ​』

“まえぶれや騒ぎが大きいわりには、実際の結果の小さいこと”をたと
えたことわざに 「大山鳴動して鼠一匹」 というものがあります。
大きい山が音を響かせ揺れ動くので、大噴火でも起こるのかと見守っ
ていると、小さな鼠がたった一匹出てきたにすぎなかった
』という意味
あいになりますね。

しかしですね、家畜の大量飼育があたりまえのことになっている現在、
これからこのことわざは、『鼠一匹でも大山鳴動』と直さねばならない
ような気配ですよ。

ということで大陸から渡り鳥がやってくる時期になると発生が心配され
る鳥インフルエンザに関する昨年2011年の関連の新聞記事のご紹介
となります。豚コレラとはちがいますけれど、同じ家畜感染病の伝搬例
として よろしかったら ↓ ご参考に。


『鹿児島・出水の鶏舎、「ネズミが感染経路か」疫学調査チーム結論』

出水市の採卵鶏農場で発生した鳥インフルエンザの感染経路などを調べ
ている県の疫学調査チームは14日、県庁で会合を開き、調査内容をと
りまとめた。発生鶏舎内でネズミの死骸やフンが見つかったことなどか
ら、ネズミがウイルスを運んだ可能性がある、と結論づけた。
会合は非公開。座長の高瀬公三鹿児島大教授(家禽疾病学(かきんしっ
ぺいがく))によると、感染経路について野鳥、人、空気感染などの可
能性を検証したが、いずれも否定。鶏舎からネズミ1匹の死骸と多数の
フンが見つかり、モグラの穴が鶏舎の内外に複数あったことから「ネズ
ミがモグラの穴を通り侵入してウイルスを運んだと断定はできないが、
可能性を否定できない」と結論づけた。未消毒の井戸水が鶏の飲用に使
われていたが、高瀬教授は「ウイルスは水で繁殖できず、井戸は密閉さ
れていたため、感染源と考えづらい」とした。


そして2009年4月には、こんな動物に関する発表もありました。

国内の野生のアライグマが高病原性鳥インフルエンザに感染』

国内の野生のアライグマが高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5
N1型)に感染していたことが、東京大医科学研究所と山口大の調査で
わかった。野生動物の感染は、国内ではこれまで鳥類では報告されてい
たが、哺乳(ほにゅう)類は初めて。宇都宮市であった日本獣医学会で
4日、発表した。
東京大医科研の堀本泰介准教授らは、西日本の3地域と東日本の1地域
で05年以降に捕獲されたアライグマ988匹の血液を調べた。その結
果、10匹の血液から、過去にH5N1型に感染したことを示す抗体を
検出した。 これらの10匹がいた3地域のうち2地域は、ニワトリや野
鳥の感染が報告されていない地域だった。
発症して死んだ渡り鳥などを食べて感染した可能性が考えられるという。
養鶏場での発生がなくても、国内にウイルスが持ち込まれている可能性
を示した。
堀本さんは「感染率が1%と低く、アライグマ間での感染拡大は考えに
くいが、養鶏場への感染源になる恐れはある。ウイルスの侵入防止策を
再確認すべきだ」と話す。
国内の野生動物のH5N1型感染は、ハシブトガラス、クマタカ、オオ
ハクチョウの鳥類3種で確認されていた。アライグマは北米原産で、ペ
ットとして輸入され、野生化した。雑食で繁殖力が強く、国の特定外来
生物に指定され、駆除が行われている。
大槻公一・京都産業大教授(獣医微生物学)は「海外ではネコ科などの
哺乳類の感染が報告されており、国内で見つかっても不思議ではない。
野生動物はほかの病原体をもっていることも多く、むやみに接触しない
ことが大事だ」と指摘する。


以上です。


晴れ 窓というものがない最新式のウインドレス鶏舎でも感染がおこった
  ケースもあります。そうなると、ネズミやアライグマなどの小動物
  原因説には、充分に説得力
があると考えられそうです。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「本当は危ない有機野菜