その時私は草を刈っていた。
最初は飛行機かと思った。何かの気象条件の関係で、頭上を通る飛行機の音が驚くほど間近に聞こえる時がある。ちらと空を見上げたけれど、すぐにその可能性を打ち消した。これは音ではない。山がゴーと鳴っている。
重量車両が地を揺るがせて走っているのか。いや、そんな車の通れる道は山際のここには無い。
異様だ。急いで刈払い機のエンジンを止める。
山が唸っている。足元の地面が波打っている。
畑の向こうの我が家が、揺れているのがわかった。
ガラガラガラガラ・・・トタンを掻き回すような金属の音。
揺れは地面から足を伝って、私の体を振動させた。
* * *
素早く上を見やり左右を見る。
当然のことながら落下物などあるべくもない。ここは畑のど真ん中だ。恐らく今世界で一番安全なところだろう。とりあえず私は助かった。
次に猫のことが頭に浮かぶ。
大丈夫。今家の中には一匹もいない。
スヌーピーも裏庭の木に繋いでいる。
それと火の始末。ガスコンロを使っていないことを記憶で確認して、これでやっと安心した。
* * *
8月16日の宮城県沖地震でこの地方は震度6弱を観測する。
私はあの後家に入って埃を被ったラジオのスイッチを入れ、ネットをしながら室内で1時間ほど待機した。このような場合もし内で大きな被害が出たならば、部落長の私のところに連絡が入ることになっている。でも今回は幸い何も無かったようだ。
それから気にしていた隣りの家を訪ねる。
バッちゃんはもう腰が曲がってよく歩けない。大事でも無ければいいが。火の始末も大丈夫だったろうか。
しかしそれも幸い杞憂だったことを知る。ジッちゃんとバッちゃんは茶の間でのんびりと昔の思い出話などをしていた。
テレビにはこの地震で屋根の落ちた仙台のスポーツ施設が映っている。
我が家は50年、ジッちゃんの家は100年建っている。更に我が家の一軒向こう隣は300年ともいわれている。正直なところもう誰もいつ建てられたのかわからない。このくらいで壊れるようなら、とっくに無くなっているということだろう。
確かに太い柱や梁をほぞを開けて組んでいるし、基礎は平らな石を並べてその上に土台を置いただけだ。この方がかえって地震には強いのかもしれない。
しばらく昔の話を聞いてから家に帰った。
さっきまで姿を見せなかったアポロが落ちつかなげに足元に纏わりついてきた。
そうか、お前はまだ若いから、こんな地震を知らなかったな。
なに、すぐ慣れるよ。心配することない。
少なくとも猫も人間と同じで、
まだ地震を予知することは無理みたいだ。
【写真はコマリン。3年前の大きな地震の際には、日頃困ったような顔をしている彼女の目が真ん丸く、いや縦長に大きく見開かれて、一時的に「コマッてないリン」になった。】
最初は飛行機かと思った。何かの気象条件の関係で、頭上を通る飛行機の音が驚くほど間近に聞こえる時がある。ちらと空を見上げたけれど、すぐにその可能性を打ち消した。これは音ではない。山がゴーと鳴っている。
重量車両が地を揺るがせて走っているのか。いや、そんな車の通れる道は山際のここには無い。
異様だ。急いで刈払い機のエンジンを止める。
山が唸っている。足元の地面が波打っている。
畑の向こうの我が家が、揺れているのがわかった。
ガラガラガラガラ・・・トタンを掻き回すような金属の音。
揺れは地面から足を伝って、私の体を振動させた。
* * *
素早く上を見やり左右を見る。
当然のことながら落下物などあるべくもない。ここは畑のど真ん中だ。恐らく今世界で一番安全なところだろう。とりあえず私は助かった。
次に猫のことが頭に浮かぶ。
大丈夫。今家の中には一匹もいない。
スヌーピーも裏庭の木に繋いでいる。
それと火の始末。ガスコンロを使っていないことを記憶で確認して、これでやっと安心した。
* * *
8月16日の宮城県沖地震でこの地方は震度6弱を観測する。
私はあの後家に入って埃を被ったラジオのスイッチを入れ、ネットをしながら室内で1時間ほど待機した。このような場合もし内で大きな被害が出たならば、部落長の私のところに連絡が入ることになっている。でも今回は幸い何も無かったようだ。
それから気にしていた隣りの家を訪ねる。
バッちゃんはもう腰が曲がってよく歩けない。大事でも無ければいいが。火の始末も大丈夫だったろうか。
しかしそれも幸い杞憂だったことを知る。ジッちゃんとバッちゃんは茶の間でのんびりと昔の思い出話などをしていた。
テレビにはこの地震で屋根の落ちた仙台のスポーツ施設が映っている。
オラだりの家は、こん程度の地震じゃあ何ともね。
屋根をがっちり噛ませてるからよう。家は屋根の構造でもっている。
今までで一番は70年くれ前の三陸地震かな。あん時ゃえれかったし海岸の方じゃたくさん死んだぞ。
(1933年三陸地震。30m近い津波により釜石などで3064人死亡)
かえってこんくれえの地震が時々起こってくれりゃあ、いきなりどでかいヤツが来ねくていいかもな。
我が家は50年、ジッちゃんの家は100年建っている。更に我が家の一軒向こう隣は300年ともいわれている。正直なところもう誰もいつ建てられたのかわからない。このくらいで壊れるようなら、とっくに無くなっているということだろう。
確かに太い柱や梁をほぞを開けて組んでいるし、基礎は平らな石を並べてその上に土台を置いただけだ。この方がかえって地震には強いのかもしれない。
しばらく昔の話を聞いてから家に帰った。
さっきまで姿を見せなかったアポロが落ちつかなげに足元に纏わりついてきた。
そうか、お前はまだ若いから、こんな地震を知らなかったな。
なに、すぐ慣れるよ。心配することない。
少なくとも猫も人間と同じで、
まだ地震を予知することは無理みたいだ。
【写真はコマリン。3年前の大きな地震の際には、日頃困ったような顔をしている彼女の目が真ん丸く、いや縦長に大きく見開かれて、一時的に「コマッてないリン」になった。】
その時私は、一人田舎のデパ地下で買い物を終えたところでした。とっとと一階へ上がりました。
実家にキジが来るのですが、地震に敏感だと云われているキジも、地震が来てから鳴きます。我が家でも予知は当てにならない、などと言っています。
それと地面も、実際に波打っているわけではなくて、なんか地面の下に巨大なミミズが蛇がいてのたうっているような感じでした。
まあ、怪我をした人には申し訳ないですが、これくらいで済んでよかったと思ってます。近いうちに高い確率で起こると言われている宮城県沖地震、今から少しずつガス抜きをしておかないと・・・
地震は一度に来るより、少しずつエネルギーを放出した方がいいのですよね。
友人が仙台にも小千谷に住んでいて、やはり他人事ではないです。関東もいつ起きてももおかしくないし。
だから自分の身を守ることよりも、生きている今をどのように生きるかを第一義にすべきなんでしょうね。
例えそれが後から振り返ってなんと詰まらないことに精を出していたと思われることでもいいのです。
なんとなれば、私たちの今していることで「詰まらないことでないこと」は恐らく無いのだから。
なんだか自分の今までして来たことがみんなとても無為なことに思えたりしますよ。過去ってのは、みんなそうなんですかね。
そして今、無意味かもしれないと思いながらもいろいろなことをやってます。
生きるってことは、そういうことなんでしょうか。
私も時々打ち間違ってしまいますからね。たぶんみんなそうですよ。
隣りのジッちゃんも、「今年は息子、お盆に帰って来ねえ・・・」なんて言ってましたが、帰って来てたらそれに巻き込まれてたでしょうねぇ。
私も中学か高校の時、大きな地震を経験してますよ。当時は一関にいました。グランドの立ち木の根元がぱっくりと口を開けたり閉めたりしたのを目撃してます。あの地震は本当に凄かったですね。
都会生活、堅いものに囲まれているようで、実はいざという時脆いかもしれませんね。新幹線のことといい、そちらで暮らすとおぬっぷさんの方が心配ですよ。現代生活を例えて言うならば、バベルの塔で暮らすようなものでしょうか。
お互い残暑の季節を乗り切りましょう。