粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

川内村遠藤村長の奮闘

2012-11-24 16:14:21 | 福島への思い

今年4月村役場を地元で再開した福島県川内村、23日のNHKテレビで遠藤雄幸村長がその後の復興に向けて奮闘する様子を伝えていた。原発事故で設けられた避難区域が解除されて役場機能が回復したものの、当時全村民3千人中戻ったのは500人程度、それも高齢者が多く若者が少ない。遠藤町長が緊急に取り組む課題は主に2点、村の除染と雇用の確保であった。

まず除染だが、年内に完了させる方針で作業そのものは順調に進み既に8割は終了した。しかしその除去した放射性廃棄物の仮置き場3カ所はもう満杯のため村が新たに場所を確保したが、付近の住民の承認がなかなか得られない。特にひとりの農婦は、頑強に反対する。市長自らが説得に訪問するが家の奥に入ってしまい話さえ聞いてくれない。「絶対だめだ」と奥から聞こえてくる声に村長が必死になって安全性を説明するが、結局むなしく引き上げる。その後も農婦が野良仕事しているところを狙い話しかけるがなかなか心を開いてくれない。村長と農婦は昔からの付き合いだというが、事故による村民の心の痛手の大きさが窺える。しかし、最後はようやく同意を得て仮置き場を確保し年内除染の目標は達成できそうだ。

除染はなんとか目処はついても雇用の確保は苦難が続く。事故以前は原発関連で500人ほど雇用を得ていた。3000人の人口だからその家族も含めると、原発が村の大きな比重を占めていることが分かる。そのうち250人は現在原発関連や除染の仕事で職を得ることが出来たが、残りの250人がみつからない。さらに悪いことに、村で営業するスーパーが売り上げ不振で結局閉店してしまう。

村長は、戻った村民を度々訪ね意見を聞きたり、近隣に避難し仮設住宅で暮らす人々の所に出向き帰還の意向を確認したりする。原発事故以来ほとんど休んだことがないという村長だが、こうした村民との接触に時間が費やされる。しかし、村の厳しい雇用環境が時間の経過とともに村民の帰還、定住の気持ちを萎えさせていく。

これに危機感を募らせている村長は新たな企業誘致を積極的に進める。しかしなかなか誘致がすすまない。やっと大阪の住宅資材メーカーが誘致に応じてきたが、実現には国からの「企業立地支援金」の後押しが何よりの前提となる。しかし、国が決めた予算枠に限界があり、実現に危険信号が灯ってしまう。間に入る福島県の関係者も心配するが、この辺り行政の官僚的体質が垣間見える。村長もメーカーや県、国の間を奔走する。ようやく希望する支援金全額28億円を勝ち取ることができた。もしかしたら少し前の復興予算の使い道で疑念が沸騰したため、その反省、見直しが実現を加勢したのかもしれない。

遠藤村長の昼夜を問わない奮闘もあって、現在は帰還村民は1000人を数えるようになった。大阪のメーカーに続いて2社の誘致が決まったという。これら3社が実際操業を開始すればさらに雇用も拡大し帰還者が増えていくものと期待される。今後も様々な困難に直面するかもしれないが、村長を始めとした村民の努力で復興が進んでいくだろう。そしてこれが原発事故で傷を負った他の近隣市町村にとって再生への確たるモデルケースになっていくはずだ。

それにしても遠藤村長の八面六臂というべき活動は地方自治の原点ともいうべきものだ。住民の要望に充分聞いて、同時に政策を理解してもらうために粘り強く説得する。上部の県、国、関係企業に対しては住民側に立って積極的に交渉する。住民へのその献身的な姿勢には頭が下がる。今後も遠藤村長の熱き奮闘を見守っていきたい。


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