裁判所で1票の格差の問題で判決が出る度にいつも疑問に思う。本当に1票が「軽い」地域の住民がこれを不満に思っているのか。今回は昨年行なわれた参議院選挙に対して「憲法違反」だと最高裁が判決を下したが、衆議院選挙でも同様の訴訟が繰り返される。
衆参とも一般的には都市部での1票が地方の過疎地域と比べて「軽い」ということが問題になるが、今まで都市部の有権者がその是正を求めてデモ行進したり、署名活動したという話を聞いたことがない。原発問題や特定秘密保護法ではあれほど「市民団体」が太鼓を叩き、金を打ち鳴らして官邸前を「ハンタイ」と叫んで騒がしく練り歩いているのに。
1票の格差で訴訟を起こすのは特定の弁護士集団だ。正直いってこうしたグループの得体がしれない。反原発団体とは違うし、特に市民団体としての組織性も見られない。極論でいうと1票の格差問題を「趣味」で行なっているとしか見えない。あるいは「1票格差オタク」といってもよいかもしれない。全く庶民感覚とは遊離しているように思われる。彼らが本当に1票の格差を心から憤り、国民に訴えているという緊迫感がまるで伝わってこない。
自分からすれば、1票の格差で本音で最も怒っているのは過疎が進む地方の住民ではないかと思う。今回の参議院選挙の判決では北海道が鳥取と比べて選挙区で4.77倍の格差があるということが問題になっている。過疎の北海道の票が「軽い」というのも奇妙だが、これは過去の定数是正で当初定数が4人であったものが、人口比の関係で逆に削られて2人になってしまった関係だ。面積で東京都の38倍もあるのに選挙区では定数6人の東京と比べて逆に3分の1でしかない。あんな広大な選挙区でたった2人しか当選しないという現実には不条理を感じないわけにはいかない。
あるいは、新たに参議院の区割りを都道府県単位の原則を外れて島根と鳥取を一つの選挙区とする構想が持ち上がっている。しかし、これなど地方切り捨ての最たるもので両県は心の底から怒っているはずだ。まして数の政治が重視される衆議院ならともかく、良識の府参議院においてではなおさらである。
こうした過疎地を軽視する選挙制度ではますます地方の議員が減らされ、地元の声が反映されなくなって、政治が都会の意向優先で進んでいく。これでは安部内閣が推進していう地方再生はとても望めない。メディアが盛んに法の下の平等の原則を唱え「格差是正が急務」だと大合唱している。しかし、建前では同意しても現実問題として強い疑念を覚えずにはいられない。