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粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

1票の格差、「是正」が法の下の不平等を生む?

2014-11-27 21:47:38 | 国内政治

裁判所で1票の格差の問題で判決が出る度にいつも疑問に思う。本当に1票が「軽い」地域の住民がこれを不満に思っているのか。今回は昨年行なわれた参議院選挙に対して「憲法違反」だと最高裁が判決を下したが、衆議院選挙でも同様の訴訟が繰り返される。

衆参とも一般的には都市部での1票が地方の過疎地域と比べて「軽い」ということが問題になるが、今まで都市部の有権者がその是正を求めてデモ行進したり、署名活動したという話を聞いたことがない。原発問題や特定秘密保護法ではあれほど「市民団体」が太鼓を叩き、金を打ち鳴らして官邸前を「ハンタイ」と叫んで騒がしく練り歩いているのに。

1票の格差で訴訟を起こすのは特定の弁護士集団だ。正直いってこうしたグループの得体がしれない。反原発団体とは違うし、特に市民団体としての組織性も見られない。極論でいうと1票の格差問題を「趣味」で行なっているとしか見えない。あるいは「1票格差オタク」といってもよいかもしれない。全く庶民感覚とは遊離しているように思われる。彼らが本当に1票の格差を心から憤り、国民に訴えているという緊迫感がまるで伝わってこない。

自分からすれば、1票の格差で本音で最も怒っているのは過疎が進む地方の住民ではないかと思う。今回の参議院選挙の判決では北海道が鳥取と比べて選挙区で4.77倍の格差があるということが問題になっている。過疎の北海道の票が「軽い」というのも奇妙だが、これは過去の定数是正で当初定数が4人であったものが、人口比の関係で逆に削られて2人になってしまった関係だ。面積で東京都の38倍もあるのに選挙区では定数6人の東京と比べて逆に3分の1でしかない。あんな広大な選挙区でたった2人しか当選しないという現実には不条理を感じないわけにはいかない。

あるいは、新たに参議院の区割りを都道府県単位の原則を外れて島根と鳥取を一つの選挙区とする構想が持ち上がっている。しかし、これなど地方切り捨ての最たるもので両県は心の底から怒っているはずだ。まして数の政治が重視される衆議院ならともかく、良識の府参議院においてではなおさらである。

こうした過疎地を軽視する選挙制度ではますます地方の議員が減らされ、地元の声が反映されなくなって、政治が都会の意向優先で進んでいく。これでは安部内閣が推進していう地方再生はとても望めない。メディアが盛んに法の下の平等の原則を唱え「格差是正が急務」だと大合唱している。しかし、建前では同意しても現実問題として強い疑念を覚えずにはいられない。


グチャグチャな野党

2014-11-19 19:26:44 | 国内政治

遂に衆議院が今週中解散され、この年末まで総選挙に向けて騒がしくなってきた。しかし、どうにも盛り上がりに欠く選挙になりそうだ。安部首相の「国民に信を問う」という解散表明も、「何の信」なのかよくわからない。憲法改正などの国家の仕組み、安全保障、外交、教育などの国家観に付いての言及がほとんどといってよいほど、安部首相の口から聞こえてこない。

与党間でもファジーだが、それ以上に野党がグチャグチャだ。その象徴がみんなの党の解党である。その名前に反して党員たちが自我を張り合って結局雲散霧消していくのは皮肉というほかない。一足早く党を離れた江田憲司議員たちが結いの党をつくったものの、結局橋下徹大阪市長の維新の会に吸収合併されて存在感を全く示せていない。

ただ、合併した維新の党もいまだに橋下市長の私党の性格が強い。橋下市長は今度の衆議院選挙に出馬の意欲がありありだ。おそらく、今回橋下市長が出ないと維新の党は全く選挙戦で力を発揮することはできないだろう。維新の党では橋下市長の存在感は今も圧倒的であり、彼以外はその他大勢というに過ぎない。橋下市長自身そのことを十分自覚しているはずだ。

橋下市長はよくも悪くも自己顕示欲が強く、同時に好き嫌いも激しい。一時、仲がよかった公明党だったが、大阪都構想で同党に裏切られたという怨念が強く公明党打倒に異常な執念を燃やしている。さらに、以前から橋下市政を批判してきた辻本清美民主党議員に対しても敵意を露にして、こんな議員がいる民主党とは選挙協力できないと喧嘩を売っている。

そして、肝心の民主党だが、全く海江田代表が指導力を発揮できない。衆議院の比例区ではそこそこの議席はとれるかもしれないが、小選挙区は他の野党特に維新の党の強力がない限り、なかなか現有議席を上積することは難しい。しかし、橋下市長がこんな具合だから致し方ない。

民主党には橋下市長のような選挙区を引っ掻き舞わずパワーをもった人物が見当たらない。ただ、橋下市長とてかつてほどの力はなく、関西の選挙区では盛り上がっても全国でいかほどの威力を示すかどうか疑問だ。

その点、野党でも独自の政治理念を持つ次世代の党は議員の多くは人材的には評価できるが、彼らを束ねて選挙戦を引っ張るリーダー的存在がいないのは残念である。すでに石原慎太郎議員は名誉顧問という立場であって、カリスマ性で党を引っ張る力はもはやない。

実際のところ、安部首相が進めている「戦後レジームから脱却」に対して、もっと理解し擁護していうのが次世代の党である。しかし、自民党内にはこの次世代の党に嫌悪感を持っている議員が少なくない。

いわゆる保守党のなかのリブラル派の存在である。こうした勢力が安部首相の足を引っ張り、むしろ戦後レジームの既得権にしがみつこうとしている。彼らは河野談話の見直しに反対し、秘密保護法や集団的自衛権行使容認に対しても露骨な抵抗を見せている。

したがって自民党と次世代の党との連携など計られることもない。メディアも次世代の党には無視を決め込んでいて、なかなかこの党は浮上してこないしこの衆議院選挙でも存続に危機に直面している。小世代の党のような国家観を明確にする政党には伸びて欲しいが、現状では厳しい。

ということで、野党勢力はどこも精彩を欠いていて、選挙戦は盛り上がりそうもない。そして相変わらず、公明党、共産党といった組織政党が世情に関係なく議席を維持をする結果になる。この両党は勝利もない代わりに敗北もない。日本の選挙の現実であり、ある種戦後レジームの一面でもある。

 

1票の格差について

2014-10-31 20:51:04 | 国内政治

1票の格差が最大4.7倍だった昨年の参議院選挙を無効だとして2つの弁護士グループが訴えていた上告審は最終弁論を終え年内に判決が下るという。こうした1票の格差を巡る裁判でいつも疑問に思うのは、本当に一般国民特に都市部住民がその不利益を問題にしているのかということだ。そうなら国政選挙で重大な焦点になるほはずだが、これまでの選挙でそれが話題になったことなど聞いたことがない。

思うに「票が軽い」都市住民は過疎地住民と比べて暮らし全般においてその恩恵を十分に受けていているということを内心自覚しているからではないか。だから過疎地に対してまず「不平等感」などさらならないということになる。雇用に恵まれ所得も高い。商業、医療、文化、娯楽など様々に機会に恵まれている。それに反して過疎地は多少は住宅が広く物価も安いが、逆にそれは人が少ないことの結果でしかない。

だから、1票の格差で不満を感じているのはむしろ過疎住民ではないか。たとえば鳥取県と島根県の衆議院小選挙区は定員各2人である。それに対して,東京都は25人で山陰全体の合計より21人も多い。人口比で仕方がないともいえるが、これでは人口の多い東京などの都市部の声が反映されやすいと考えてしまうのは当然だ。

それでも東京の一部選挙区は鳥取の選挙区と比べて有権者数は2倍を超えるところがある。こうした格差の是正のために過疎地で選挙区を減らし都市部の選挙区をその分増やすことが対案として国で検討されている。したがって鳥取県では選挙区が1区だけのそれこそ全県区になってしまう。これではますます過疎地の声が反映されなくなる。

ラジオ番組(東京ニッポン放送「ザ・ボイス」10月29日)でジャーナリスト有本香氏(動画10分辺りから)が、むしろ過疎地を減らさず都市部の選挙区を増やしてバランスをとるべきだとコメントしていた。結果的に全体として議員が増えるが、もっと議員の歳費にメスを入れるべきだともいう。自分もその意見には全く賛成だ。彼女も指摘していたが、日本はアメリカはともかくヨーロッパの国々と比べて100万人当りの議員数は半分以下だという。

まして良識の府である参議院においてはなおさら1票の格差を問題にするのは疑問だ。与党内では鳥取と島根をまとめて一つの地方選挙区にしようという動きがあるようだが、これなど過疎地切り捨ての最たるものだと思う。昔から出身県を尋ねるのに「お国はどこ?」などという。それくらい県は自分の故郷のアイデンティティを形成する対象になっている。そして県民性が人々の大切な絆の要素だ。県を統合するなど地方を破壊する考え方だと思う。

自分はむしろ参議院はアメリカの上院のように都道府県同数でよいと思う。それも選挙でなく県知事推薦などの別の方式でよい。それに加えて、各種団体の代表がその団体からの推薦で選ばれるようにしたらどうか。(ただし権限では予算案以外の法案でも衆議院が優越性を持つべきだ。)ともかく参議院は金権まみれの世界から無縁であって欲しいと思う。


民主党の劣化

2014-10-09 11:42:25 | 国内政治

劣化といっても今に始まったことではないが、最近の惨状は目を覆いたくなる。参議院予算委員会で民主党議員が山谷えり子国家公安委員長に質問する際、同党の野田国義議員から「懇ろ」ヤジ発言が飛んだ。野田議員は「懇ろとは人が親しくなる」意味だと弁解しているが、「宿泊先まで知っているっていうのは、懇ろの関係じゃねえか」というヤジ全体の内容からどうみてもセクハラといわれても仕方がない。

ところでヤジを発した野田議員は年齢56歳でベテラン議員と思われるが、5年前の衆議院議員選挙で初めて国会に進出したようだ。それ以前は16年以上福岡の八女市長を務めている。八女茶で有名な土地柄でそれなりの実績を残しているとは思うが、その人物が「懇ろ」のセクハラヤジはないだろう。わずか5年前に、民主党国会議員になってその悪習に染まってしまったといえるのか。

最近の読売新聞の世論調査によると民主党の支持率はなんと4%と低迷している。1ヶ月前と比べて3%も下がっている。一方自民党は40%から45%に上昇している。もはや自民党の10分の1程度の支持しか民主党にはないのが現実だ。最大野党の民主党でこのていたらくである。

自分自身はどちらかというと現在与党の方に共感しているが、そんな人間でもこのような一強多弱の状況には疑問を持っている。しかし、これほどに民主党に緊張感がまるでなくセクハラヤジ程度で騒がれる現状では如何ともしがたい。もはや解党して出直しするしかない。「民主党ヤメチャえ」と国民がやじるのは元八女市長の議員ばかりではない。

 

最悪の新党

2014-09-11 13:56:02 | 国内政治

それなりの党員を抱える新党でこれほど存在感が薄い政党も珍しい。旧日本維新の会と結いの党が合併したできた「維新の党」だ。第一、国政政党なのに、大阪に本部があるのからして異常だ。それだけ橋下徹大阪市長の影響力が甚大であり、結いの党はこれにすがるしか自分たちの活路を見いだせなかったということだろう。

しかし、残念ながら橋下氏の政治的なパワーは激減しており、新党が浮上して国政に影響力を持つというのはもはや幻想に近いといえる。それも橋下氏が東京で陣頭指揮をとって、指導力を発揮するならともかく、大阪市長としての職務に追われ、片手間に党務を首を突っ込むだけではなおさらだ。

もともと橋下氏の維新と江田憲司氏の結いの党では国家観がまるで違う。橋下氏の保守指向と江田氏のリベラル指向とではっきり分かれている。憲法改正、集団的自衛権行使など防衛政策で顕著だ。唯一一緒なのは原発政策である。

分裂以前の日本維新の会で橋下氏が石原共同代表と対立したのがこの原発政策である。石原氏の原発推進政策が橋下氏側のグループから猛烈な反発を食らい、これが党分裂の原因にもなった。しかし、それ以外道州制の問題を除けば政策でさして対立してはいない。保守的な国家観という点では石原・橋下共同代表の間で進む方向は一致していた。政策というより東京と大阪の距離感に問題があった。

その点で新党ではこの国家観の違いが深刻だ。今後、国の政策を巡っては維新の党内で路線の対立が表面化するのは間違いない。例を挙げれば慰安婦問題、橋下氏は河野談話見直しを求めるほどにこの問題の真相解明には熱心だ。最近、記事取り消しをした朝日新聞に対してもさらに厳しい対応を見せており、追及の手を緩めていない。

一方、江田氏の場合はこれに消極的だ。かつて日本の維新の会で女性議員が慰安婦問題で国会で追求しようとした時に「あまり余計なことはするな」とその女性議員に釘を刺したという。旧日本維新の会で次世代の党に移った議員には江田氏の姿勢に嫌悪感を持っている人は多い。そして、橋下市長に与する議員もその点では同様である。

そんな新党が政策を一つにして、国政で団結するとはとても考えられない。一方で結いの党側は党本部を自分たちとは縁遠い大阪にもっていかれ、党名も反映されていないことには憤懣やり方ないであろう。少しばかりでも橋下市長が度量の大きさを見せて結いの党の顔を立てるのであれば少しは結いの党も気が休まったであろうが、それもない。最悪の新党スタートである。