最近、メディアなどでこんな「懸念」を口走る知識人や学者、ジャーナリストが少なくない。今朝ラジオで聞いていたら海外在住日本人による同様の声が紹介されていた。ラジオではその具体的な「悪い方向」で言及はなかったが、どうも想像する印象では現在の安倍政権の「右傾化」が対象のようだ。
安倍政権が誕生してちょうど2年になる。この間、特定秘密保護法を成立させ、集団的自衛権行使容認の憲法解釈も打ち出した。中韓との隣国関係が摩擦が続き、特に中国とは緊張状態が高まっている。こうした状況は安倍政権の右傾化が原因ではないか、おまけに最近の総選挙では与党が対大勝し、その傾向に拍車がかかっている、と一部言論界で盛んに喧伝されている。
確かにその言論の代表というべき朝日新聞などで安倍政権の政策が具体化する度に、その危険性が声高に叫ばれる。社説、天声人語は言うに及ばず、読者投書でもフルに利用される。そして特に注目されるのは左左派系知識人や学者ばかりではなく、人気の映画監督、俳優あるいはお笑い芸人まで総動員していて大キャンペーンを張る騒々しさだ。
特定秘密保護法成立の際は、国民の知る権利が奪われ、表現中言論の自由も制限された戦前の暗黒社会に訪れる。集団的自由権行使が認められれば若者が戦場に駆り出され多くの死傷者が出る。こんな「懸念」さらには「恐怖」が盛んに叫ばれた。
そして、安倍政権はそんな朝日の懸念をあざ笑うかのように次々と自分たちの目論む方向に着々と進みつつある。同時に靖国参拝も辞さず、慰安婦問題でも従来の低姿勢から日本の立場を強く打ち出す態度に転じた。憲法改正の意思も隠さず、教育でも自虐史観からの脱却を堂々と打ち出している。
右傾化した安倍政権はやりたい放題でこの先「末恐ろしい」というのが朝日新聞の認識ではないか。おまけに当の朝日新聞自体が安倍政権の意向もあって、過去の捏造報道が糾弾されその間違いを認めざるを得ないほどに窮地に追い込まれている。
安倍政権の攻勢と左翼言論の挫折によって、こうした言論にシンパシーを持つ人々にとっては、まさに「日本は悪い方向向かっている」と思えてくるのではないか。しかし、ちょっと待ってほしい。自分自身、現在の方向性はそんな危惧してはいない。といってすべてよい方向に進んでいると楽観はしていない。
よく言われる例だが、1960年の安保条約が改定されて集団的自衛権が前提となったころが話題にされる。当時東西冷戦が激化した時代で今にも日本が戦争に巻き込まれる恐怖が叫ばれたが実際は杞憂に終わった。今回の騒動もそれと大してかわらないと考えている。今日中国が軍拡を続けているが、経済大国同士が自国を破滅に追いやるような深刻な軍事対立は起こらないと思う。中国の挑発行為はエスカレートするだろうが、日本がこれに屈しない防備は怠らなければ本格的衝突など起こらないと見ている。
逆に日本が軍備の対応を疎かにして、ひたすら観念的な平和にばかり捕われていると、中国が「その気」になってしまう。そちらの方がずっと問題だと思う。よく「平和主義者が戦争を引き起こす」といわれるが、確かにそれは言える。フィリッピンで以前のアキノ政権が米軍基地を撤退させたことが今日の南シナ海の危機を引き起こしているといえる。
集団的自衛権の行使も特定秘密保護法も自国防衛の積極的な政策であって、決して「日本が悪い方向に進む」手段ではない。まして政権の右傾化などといったものではありえない。「悪い方向」というとどうも日本が一方的に悪いなっていくというような印象がある。しかし、むしろ自分には中国や韓国の方こそずっと問題があると思う。
中国が日本に対して南京事件などで過去の歴史に言いがかりをつけたり、韓国が未だにありもしない慰安婦の性奴隷をもちだして日本に謝罪と補償を求めるなど理不尽としか言いようがない。自国民の平和的な政治デモを自国の軍隊で容赦なく粉砕する政府に日本の過去の歴史を云々する資格などない。
したがって「日本が悪い方向に向かっている」というのは自分にとっては「悪い冗談」にしか思えない。そしてこうした認識は多くの日本人がもっているのではないか。今回の選挙で曲がりなりにもそれが実証されたともいえる。安倍政権はある意味では国民が誕生させたものであり、その国民の判断は決して間違ったものだとはいえないと考えている。