もはや還暦にもなろうとする小生が無謀にも最近ヤング(これも古いか?)に人気の女性アイドルグループ5組について動画を聴き比べて考察することを思い立った。
なんでこんな親父が場違いの記事を書くのかとお叱りを受けるかもしれない。まあ、そこはこうしたアイドルとは無縁で対極にある世代の視点で眺めるのも悪くはない、そんな勝手な動機なので悪しからず。
ももいろクローバーz、AKB48、きゃりーぱみゅぱみゅ、モーニング娘。、Perfumeだ。迂闊であった。きゃりーぱみゅぱみゅはグループでなく個人名であることを知らなかった。最近21歳になったばかりの日本人女性だ。それほどに自分自身こうしたジャンルにはド素人である。
まず聴き比べて大雑把に見て「カワイイ系」と「セクシー系」「テクノ系」の3つに分別されると考える。さらに「カワイイ系」はその色合いとか性格が違う。自分自身の独断と偏見でいくつかの項目にわけて表にしてみた。
まず「カワイイ系」であるが、ファン層の違いで全くその意味合いも違ってくる。AKB48とももいろクローバーzは男性ファンの性を刺激するものに対して、きゃりーぱみゅぱみゅは女性自身のカワイイ願望に応えるものだからだ。
まずももいろクローバーzの方は、男性から見るとまだ大人になりきっていない女の子を守ってあげたい、そんな気持ちにさせるかわいさである。一方でそんな娘にあこがれる純な男子の心に訴えるものといってよい。同時にファンは路上や電機店でのライブに励むグループのひたむきさに癒しを感じる。
あの7年161億円の契約でヤンキースに移籍することになったマー君がこのグループのファンで、記者会見ではももクロのDVDをニューヨークまでもっていきたいと答えていた。きっと過酷なメジャーでは最上の「癒し」となって、まい夫人とともに彼を支えてくれるだろう。ただ、このグループが年齢を重ねていった時にファンがどう反応するか、あるいは彼女らが方向性をどう考えるか、いずれ転換期が訪れると思う。
次にAKB48だが、これははっきりいって「オタク」とよんでいいだろう。幅広い男性ファンのセーラー服風趣味だ。56歳の森永卓郎がファンというのもうなずける。同じ髪型で超ミニの女子高校生風の姿であたかも着せ替え人形のように踊る。しかし、そこは計算し尽くされた人工的な可愛さが演出される。都会の女子高生で少し大人を迷わす雰囲気を醸し出す。本人たちもそれになりきりながらも自己主張している。
秋元康が考案した「総選挙」は戦略的にはかなり成功している。「盛り」を過ぎてとても女子高生には見えないメンバーは下克上の波にさらわれて「卒業」していく。そんな戦.国でも彼女たちはたくましく生き抜いている。その殺伐さも厭わず逆に楽しんでいるところは正直にすごいと思う。
そしてきゃりーぱみゅぱみゅだ。不思議な女の子だ。その独特なファッションは「青文字系」というようだ。雑誌から出た言葉だが、そのファッションは「男性に媚びないガーリーでカジュアルなファッション」とされ、渋谷より原宿系で「アパレル、ヘアメイク、デザイン系の専門学校生や卒業生といったクリエイティブ指向の高く、異性の目を気にせず自分が良いと思ったものをファッションに取り入れる、10代後半から20代前の支持層が中心」という。「男に媚びない」というのがポイントで彼女の華麗でサイケながらも女の性を主張し楽しんでいる姿にそれが伺える。
そして、どこか無国籍でボーダレスだ。それが彼女の音楽にも反映されている。今後の展開によっては「大化け」する可能性もある。ある種カリスマアイドルとして。日本政府がクールジャパンの一環として日本の「kawaii」文化を輸出したいと考えているようだ。男に媚びた可愛さは日本独自でなかなか海外ではあまり受け入れないが、彼女のこうした音楽性は結構広く共鳴しそうな可能性がある。
話題を「セクシー系」に移したい。モーニング娘。であるが、久しぶりに彼女たちの音楽を動画で見た。といってもこのグループは度々メンバーが入れ替わっているのだが、一時人気があった頃と比べると随分洗練されてプロフェッショナルになったという印象がある。歌唱もダンスも進化していて、どこか韓国のkaraや少女時代を彷彿される。Kpopに見られる躍動的で隙のないダンスとそれに充分カバーする歌唱力を備えつつある。
そして可愛さだけに頼らず本来もつ女のセクシーさで勝負しようという主張が見られる。これは、プロデューサーつんくによる「差別化」の一端なのだろうか。AKB48と同じ土俵で対抗しても仕方がないというコンセプトだ。この方向性は間違いではないと思う。だから、今のメンバーを安易に「卒業」させてはいけない。さらに磨きを掛けてプロのアイドル集団に育てて欲しい。
最後は「テクノ系」Perfumeだ。なんと2000年のグループだからすでにキャリアは14年になろうとしている。当初は地元広島の限定アイドルとして活躍していたが、3年後東京に進出しさらに2年がメジャーデビューしてからその音楽志向はプロデューサーの音楽家によって全く性格が一変した。いわゆるテクノポップといわれるものでコンッピューターグラフィック(CG)を駆使した近未来志向の音楽だ。
わかりやすくいえば現在バーチャルアイドルとして一世を風靡している「初音ミク」の世界である。そのためには3人の声を「エフェクト(加工、操作)」することも厭わない。当初ライブの音声がCDとかなり違っているのを避けるために彼女たちに「口パク」を強要したこともあったようだ。それに最初3人は馴染めず悩んだという。あるいは、レコード会社からは「アイドルにしてはカッコが良過ぎる」ともいわれたともいう。アイドルとしての生身の人間くささがないということだ。
しかし、結果的には彼女たちもプロデュサーの戦略を受け入れ、そうしたテクノアイドルになりきろうとしている。当然ファッションもダンスもこうしたCGを最大限生かした魅力を誇示している。このテクノ路線は今後のコンピューター技術の発展によってさらに深化していくものと思う。ただ生身の彼女たちがこの深化にいつまで耐えられるのかは未知数だ。
以上、最近のアイドルについて長々と論じてきた。ただ、どうも現在アイドルが時代を席巻しているとはとてもいいがたい。80年代に松田聖子、中森明菜、小泉今日子といった百花繚乱、多士済々の全盛時代とはやはり見劣りする。可愛さ、セクシーといった限定されたカテゴリーにとらわれない異形のアイドルがもっと出現して欲しいと思う。
分類でアイドルに似合う街を敢えて挙げてみたが、もっと色々な場所があっていい。新宿、池袋、横浜、千葉、さいたまなどが似合うアイドルはどうか。最近注目しているのは東京スカイツリーやまもなく開業する大阪あべのハルカスを拠点にしたグループだ。特に東京スカイツリーがある東京下町は当地押上にあやかってOSHIAGEシスターズなんてのはどうだろうか。たとえばお笑いタレントはなわプロデュースで野性味のある男装グループなんていうのもおもしろい。
ただ、やはりもはや初老にならんとする自分にはこうしたアイドルは一時の清涼剤にはなるだろうが、日常的に聴くには元気や癒しにはなりえない。どうしても大人の魅力をもったプロの歌手が欲しい。残念ながら今の音楽界はこうしたロートル世代の欲求に応えてくれる余裕は今イチなさそうだ。演歌もいいが、どうしても類型的で嗜好が限定されてしまう気がする。今後こうした世代が人口的にも増えていくといえるのでその辺りの新戦略を音楽界に期待したい。