ご存じ、「清水哲男・新・増殖する俳句歳時記」では、
7人の方々による俳句の紹介と解説が展開されています。
夏から、新たに金曜日を担当されていらっしゃる「藤嶋務」氏のこの句の解説から
たくさんのことを学びました。
以下、全文引用します。
2014/9/5(金)
いぶしたる爐上の燕帰りけり 河東碧梧桐
茅葺の古民家が目に浮かびます。真っ黒に煤けた大黒柱があって爐(いろり)があってボンボン時計がある。
そんな爐上に何故だか燕が巣を作った。成り行きながら雛がかえって巣立ちもした。
この家の者も愛しみの眼差しを向けて日々雛の成長を楽しみにする。
時々寝言で鳴く「土食って渋ーい、渋ーい」に寝付かれぬ夜もある。
何匹かの子燕の特徴を識別して名前など付けてしまう。そして燕たちが自分の家族とも思はれて来る頃その日は来る。
見知らぬ遠い国へ旅立ってしまうのだ。後にはぽかんとした空の巣がそこにあるだけ。誰にでもやって来るその日はある。
『碧梧桐句集』(1920)所収。(藤嶋 務)
さらに、つぶやく堂というBBSにて、藤嶋務氏こと「やんまさん」の鳥の鳴き声の「聞きなし」に
ついての追加解説をされていました。
「土食って渋ーい、渋ーい」は燕の鳴き声です。
ジュクジュク、ジュクジュクと聞こえるのが何時の間にが「ツチクッテシブーイ」に聞こえてきます。
他には、
うぐいす(鶯)……法、法華経
ほととぎす(杜鵑)……特許許可局
ほおじろ(頬白)……一筆啓上仕りそうろう
こじゅけい(小綬鶏)……ちょっと来い、ちょっと来い
はと(鳩)……で、で、ぽっぽー
ふくろう(梟)……ごろすけ、ほうほう
こまどり(駒鳥)……ひんからからから
せんだいむしくい(仙台虫喰)……焼酎いっぱいぐいー
こんなに楽しい解説は読み流しておくわけにいきません。
過去ログに行ってしまう前に、ここに「覚書」として書いておきます。すみませぬ。
こんなに引用してしまったからには、私自身の感想も書かなければ、と思いますが、
さて、これに加える言葉を私は持っておりませぬ。
強いて書くならば・・・…
「土食って渋ーい、渋ーい」は、燕の巣が土を固めたものだからかしら?
「爐(いろり)」の上に巣を作ってしまったら、冬にはどうするの?
いいえ、大丈夫よ。
燕は春に日本に飛来して、人家に営巣して、秋になったら南方に去ってしまう。
燕さんはちゃんと心得ておりますのでしょう。(これにて、ご勘弁を。)
追記 とりの歌
とりの歌・2
個人的には、一筆啓上ツカマツリ候が出て来て面白いと思ったのは井伏鱒二の黒い雨でした。
主人公の姪矢須子は、彼女の故郷ではホオジロは 「ベンケイ皿モテ来い酢ヲ飲マショ」 、彼女が子供のときには 「チンチク二十八日」 と鳴いたってところ。
所変われば、ですかね?(^m^ )クスッ
言語が変わればまた一つ、楽しみも増えますよね。