ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

ルーブル美術館展

2013-09-12 11:48:46 | Art



ルーブル美術館展 地中海四千年のものがたり

9月6日、東京都美術館にて。
気の遠くなるような長~~い時間の旅であった。実際の所要時間は2時間足らずではあったのだが。


序   地中海世界ー自然と文化の枠組み
第一章 地中海の始まりー前2000年紀から前1000年紀までの交流
第二章 統合された地中海ーギリシア、カルタゴ、ローマ
第三章 中世の地中海 十字軍からレコンキスタへ(1090~1492年)
第四章 地中海の近代ールネッサンスから啓蒙主義の時代へ(1490~1750年)
第五章 地中海紀行(1750~1850年)

以上、約4000年の時間の旅であった。

第一章の展示品に「カルピス(水瓶)」という作品があったが、「え!これがカルピスの語源なの?」と帰宅してから調べたら、
乳酸飲料の「カルピス」は、「カルシウム」とサンスクリットの「サルピス」(sarpis, 漢訳:熟酥(じゅくそ))を合わせたものだった(笑)。
それはそれとして、壺、印章、杯、椀、スプーン、香油入れ、水差し、などの模様はほとんどは歴史上の出来事や人物が描かれている。
身分の低い者、子供などの日常も描かれていました。
しかしながら、人間の日常使うものの基本的な形はほとんど変わらないのね。感動した。


第二章では、「タナグラ人形」という言葉と共に、その作品の小ささが気になっていた。
タナグラ人形【 Tanagra figurine】とは、
前5世紀ころから前3世紀ころを最盛期としてギリシアのボイオティアやアッティカ地方で製作されたテラコッタの小彫像。
これらは墓の副葬品,神殿の奉納品,日常の置物として製作された。
大彫刻の影響が見られる優れたものが多い。
女神,婦人,騎士,楽人,床屋,大工,農夫,子どもなどさまざまな人物像が製作されているが、
とくに優美な着衣の婦人小像が有名である。高さは6~7cmから25cm。
1870年代初めボイオティア地方東部の小村タナグラ周辺の墓地から多数出土したことにちなんでこのように呼ばれている。


第三章では、十字軍が歴史を動かしはじめる時代となっているのだが、その時代の権力と、
宗教(キリスト教、イスラム教)のバランスは正直言ってややこしい(笑)。
しかし、この時代に至って、様々な食器や調度品の装飾は、宗教的であったり、騎士たちの姿などに変わっていった。
この時代には石膏像は見られるが絵画はまだ出てこない。石棺なども見られる。


第四章では、絵画が中心となってくる。
装飾品には、懐中時計や煙草入れなどがあらたに登場している。
懐中時計、香油入れ、絵画などに歴史上の出来事や神話などが描かれている。
この時代の最も代表的な歴史上の人物はエジプト女王クレオパトラであり、
その最期の毒蛇による自殺であろう。ジャンピエトリーノ、クロード・ベルタンによって描かれている。


第五章は、ほとんど絵画の展示になる。この時代の代表ははナポレオンか?
風景画、歴史上の出来事、神話などと共に、雑多な民族の文化の混合が見られる。
それにしても、人間の歴史とはなんだったのだろう?
民族、宗教、領土などの争いの連続であった。
そこにも人々は美しいものを求めていた。それを今見ることができる。
……ということを改めて思う。この4000年の時間の旅の終わりに。

20年五輪:IOC総会プレゼン 首相の発言要旨

2013-09-10 12:21:34 | Memorandum

毎日新聞 2013年09月08日 00時29分(最終更新 09月08日 01時58分)

毎日jpより


【ブエノスアイレス松尾良】国際オリンピック委員会(IOC)総会での安倍晋三首相の発言要旨は次の通り。

 【演説】

東京は世界で最も安全な都市の一つだ。それは今でも、2020年でも一緒だ。
懸念を持つ人もいるだろうが、東京電力福島第1原発について私は皆さんに約束する。
状況はコントロールされている。決して東京にダメージを与えない。
オリンピックが安全に行われることを保証する。財政的にも整っている。
開催地に東京を選べばオリンピックムーブメントに新たな強い息吹を吹き込むことになる。
IOCと力を合わせ、世界をよりよい場所にしていこうと思っている。

 【質疑】

(汚染水問題は)結論から言って全く問題ない。事実を見てほしい。
汚染水による影響は福島第1原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている。
近海でモニタリングしているが、数値は最大でも世界保健機関(WHO)の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ。
日本の食品や水の安全基準は世界で最も厳しい。健康問題については、今までも現在も将来も全く問題ないと約束する。
さらに完全に問題のないものにするため抜本解決に向けたプログラムを決定し、着手している。
日本の首相として(子どもたちの)安全と未来に責任を持っている。
日本に来るアスリートにも責任を持っている。その責任を完全に果たす。


* * * * *


なるほど。福島原発に国が積極的に関与し始めた動機はここにあったのか。
「東京と福島は2000キロ以上離れているので問題はない。」という発言もあったけれど、いかがなものか?
つまり、福島でブロックされているから東京は大丈夫という発想なのか!
「日本」という発想はないのね。日本の首相よ!

俳句航海日誌 清水昶句集 ①

2013-09-03 17:00:01 | Haiku


清水昶氏は、2011年5月30日、心筋梗塞のため東京都武蔵野市の自宅でご逝去。70歳でした。
そして、詩人清水昶さんは、詩から俳句に移行なさって、約13年間ネット上において、
お亡くなりになる前夜まで、膨大な俳句(約35000句)を残されました。
それをまとめたものが、2013年5月に「俳句航海日誌」という遺稿句集として出版されました。
俳句の収録数は厳選の結果947句となりました。版元は「七月堂」です。

その俳句の一部だけでも、つたない鑑賞ながら書いてみます。 


百の時計百の遺志以て鳴る寒夜   2002年1月19日付



この句は、遺稿句集には「百の時計百の意志以て鳴る寒夜」と掲載されています。
わたくしの過去のメモから見つけた句ですので、どちらが正しいのか今は確かめようもありません。
あるいは、2度書かれたとも考えることもできます。
しかしながら、わたくしの考えでは「遺志」の方がふさわしく思えてなりません。   

野の舟はまだ漂い続けているのか
うつくしい少女はまだ目覚めないままか
時間は遅れることもなく
急ぐこともなく
やがて男の内に遺志の音を鳴らす



悪童と闇を取り合ふ蛍狩り   2002年8月14日付

   

この句は昶さんの悪童時代を彷彿させるような句ですね。
おそらく蛍を追いかけて、悪童たちが捕獲数を競い合っていたのではないか。
しかし、それは「闇を取り合う」ことにもなりうるわけですね。
陽に焼けた少年たちの腕や足が、大きな闇をかきまわし、押して、切り裂きながら、そしてふいにひっそりと、小さな光を追いかける躍動感あふれる様子が、一枚の絵画のように立ちあがってくる。




  《朝日新聞・8月11日付・「歌壇、俳壇」のページより切り抜き》


生まれたるかげろふたれの終命か   2000年8月20日付


        
この句に多くの方々は詩人吉野弘の「I was born」を重ねて思いだされるかもしれない。
わたくしも当然そうだったけれど。
夏に交尾と産卵を終えれば、数時間後に死んでしまうかげろふ。
その後幼虫は2~3年を水中で生きて、成虫に羽化する。成虫の寿命は数時間から数日と短い。
かげろふの誕生は、死と引き換えであることから逃れる術はないのですね。

生と死とはいつでも抱き合っているようです。


「I was born 吉野弘」 ←←ここをクリックしてね。

    

骨格の正しき町に女下駄    2000年8月20日付

                
        
硬質な風景かしら?と思うけれど、描かれているものは違うようだ。
高層ビルが立ち並ぶ風景ではなく、しっかりとした木造の家並みが思い浮かぶ。
家々の屋根や庇、あるいは腰板などに、大工の卓越した技術がはっきりと見えるような……。
そんな町並みに、女下駄の音が響く。
音は空間をかーんと移動するが、骨格の正しき町は微動だにせず。



良く笑う旧正月の赤ん坊   2005年5月28日付
       


旧正月は、今日の暦のうえでは、1月22日ごろから2月19日ごろまでを毎年移動する。
何故、赤ん坊が旧正月によく笑うのかはわからないけれど、赤ん坊が笑うことで「旧正月」という言葉に
ぬくもりが添えられるようだ。周囲の人間たちが福福と笑う情景までが想像できる。
昶さんは小さな子が好きだったなぁ~と思いだす。思わず微笑みたくなる一句。

(つづく)