九月二九日、午後六時より開催されました「第七回日本一行詩大賞授与式」に参加させていただきました。
主催 日本一行詩協会
後援 読売新聞社 角川春樹事務所
場所 アルカディア市ヶ谷
第七回一行詩大賞特別賞 清水昶氏 句集「俳句航海日誌」
第七回一行詩大賞特別賞 西川徹郎氏 句集「幻想詩篇 天使の悪夢九千句」
第七回一行詩大賞 小島ゆかり氏 歌集「純白光 短歌日記2012」
受賞者は以上の通りです。
昶さんの受賞とご挨拶は、井川博年さんがなさいました。
角川春樹氏のご挨拶のなかでは……
死ねば死にきり水際に又春立ちぬ
この句に衝撃を受けたとおっしゃっていました。
選者の福島泰樹氏のご挨拶では……
清水昶さんの詩人としての驚きと感動を語って下さいました。
それは詩集「少年・1969年刊」です。
少年 清水昶
いのちを吸う泥田の深みから腰をあげ
鬚にまつわる陽射しをぬぐい
影の顔でふりむいた若い父
風土病から手をのばしまだ青いトマトを食べながら
声をたてずに笑っていた若い母
そのころからわたしは
パンがはげしい痛みでこねられていることを知り
あざ笑う麦のうねり疲労が密集するやせた土地
おびえきった鶏が不安の砂をはねながら
火のように呼ぶ太陽に殺(そ)りあがる一日の目覚めに
憎しみを持つ少年になった
たぶんわたしは暗さに慣れた
太陽を射(う)てまぶしい対話を潰せ
しずまりかえった夜こそがわたしの裸身の王国であり
梟のようにしんと両眼を明けるわたしの
その奢る視界であえいでいる母
残酷な痛みのなかで美しい母ににた
神に従く少女を愛し
因習しみつく床に膝を折る少女の
闇夜をひらく眼の一点に
迷い星の輝きを見た
どこへ行こうとしていたわけではない
なにを信じていたわけでもない
ひややかな口づけは花やいだ世界を封じ
たゆたう血潮を閉じこめるひとつの夜に
息をひそめて忍んでいくとき
初潮のように朝が来る!
生活の鬚を剃り落とすたしかな朝
きれいなタオルを持った少年は
わたしの背後にひっそりとたち
決っしてふりむくこともなく老いるわたしを
いつまでも
待ちつづける
ぎりぎりまで詩を書き、追いつめ、さらに言葉の領土を「俳句」にまで広げた
天国の詩人&俳人清水昶さん、おめでとうございました。