BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

遥かな価値

2018年01月19日 | 古本
札幌市内の1960年代、最盛期には53件もの映画館が在った。それも今のシネコンのように固まっている
のではなく、適度な距離を取りながら共存した(勿論中心部にはある程度集中しただろうが)
丸井デパートの7階には「道新ニュース映画劇場」が在ったし、テレビ塔地下、札幌駅地下や琴似にも在った。
アタシは仕事の帰りに立ち寄るのは道新映劇が多かったが、まさにフラッと立ち寄るという感じで、題名で見る
わけではなかった。いつも座るなどは無理で途中でも入れたし、ある程度シーンが重なったところで帰った。
しかも入場料は50円で、ニュースと1本の映画を観れて満足だった。
アタシの18才までいた登別東町にも1件の劇場があり、名を月見館と皆は言ったらしい。なんしろ屋根の所々
に穴が空いており、月が見えたのさと言うのは土地のかなり年配者だ。(アタシが子供の頃登別に移動したころ
にはもう無かった)
とは言え、この北海道のあらゆる村々にも最盛期には相当数の映画館はあったらしい。それはことごとく消え、
いまはその面影さえめったになく新しいビルなどに代わっている。地方の国道などを走っていて稀にこれは元
映画館だろうかなどと見える建物をみると、切なく感傷的になるのはアタシだけではないだろう。
 「ほっかいどう映画館グラフィティー」 著者 和田 由美+北の映像ミュージアム  亜璃西社
  ( 画・浦田 久 定価1800円+税 2015年12月1日 第1刷発行 )

この本を先に読んでいたらアタシの短編ドキュメンタリーなど応募しなかっただろう。とにかくみんなレベルの
高いドキュメンタリー映画ばかりのようだ。なまじのことでは上映の栄誉を受ける事さえ無理だ。
1989年に始まったこの「山形国際ドキュメンタリー映画祭」その当初から通訳として関わった英語・日本語
の通訳者・山之内 悦子さんのまだ続けている回想録的本。昨年も受賞者のトークなどでアタシも見かけたのかも
知れない。隔年で開かれる映画祭の内実をつぶさに見て来た「際」を放射している人だ。
それにつけても、山形市はこの映画祭のために隔年で1億と5千万円の補助金を交互に出していることに驚く。
札幌市の8分の1の人口の街だ。決して財政が豊かでもないだろう町の覚悟がみえる。札幌市は「映画のまち」
を標榜しているハズなのに、この手の理解と価値を知らない。
 「あきらめない映画 山形国際ドキュメンタリー映画祭の日々」 著者 山之内 悦子  大月書店
  ( 定価2000円+税 2013年9月27日 第1刷発行 )

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