帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百六十三〕狩衣は

2011-12-27 00:06:30 | 古典

  



                               帯とけの枕草子〔二百六十三〕狩衣は


 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百六十三〕かりきぬは

 
 文の清げな姿

 狩衣は、香染の薄い。白いふくさ。赤色。松の葉色。青葉。桜。柳。また、青い藤。


 原文

 かりぎぬは、かうぞめのうすき、しろきふくさ、あかいろ、まつのはいろ、あをば、さくら、やなぎ、又あおきふぢ。


 心におかしきところ

 かりする心と身は、お疲れ初めの薄い色、白々しくやわらか。元気色、待つ女の端の色。吾お端、咲くら、しだれぎ。また再び若々しい不二。


 言の戯れと言の心

 「かり…狩…刈…採…あさる…ひく…つむ…めとる…まぐあう」「きぬ…衣…ころも…身と心を包も物…心身の換喩…来ぬ…来寝…来て寝る」「かうそめ…香染…黄色味おびた薄い赤色」「黄色…お疲れ色」「赤…元気色」「白…おとこの色…はての色」「ふくさ…柔らかい絹…やわらかい」「色…色彩…顔色…気色…色好みの色」「松…待つ…女」「は…葉…端…身の端」「青葉…若い身の端」「桜…おとこ花…咲くら」「柳…しだれ木…し垂れき」「また青きふぢ…また青い男木…再び若々しいおとこ」「藤…不二…二つはない…おとこは一過性である」



 古今和歌集の「狩衣」の歌を聞きましょう。

 巻第十二 恋歌二 とものり (大内記 紀友則)

 夜ゐ夜ゐにぬぎてわがぬるかり衣 かけておもはぬ時のまもなし

 (宵々に脱いで我が寝る、狩衣、かけて、貴女を・思わぬ時の間はない……好い好いに、貫きて我がぬる、かりする身と心、神かけて、貴女を・思わない一瞬の間もない)。


 「夜ゐ…宵…好い」「ぬぎて…脱ぎて…ぬきて…貫きて…貫き通して」「かり衣…狩衣…かりする男の心身」「かり…めとり…まぐあい」「かけて…衣を掛けて…神懸けて…神に誓って…決して」「時のま…時間…片時の間…一瞬の間」「おもはぬ時のまもなし…常に思っている…思い続けている」。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。