帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百五十三〕こだいの人のさしぬきゝたるこそ

2011-12-14 00:10:30 | 古典

  

                                          帯とけの枕草子
〔二百五十三〕こだいの人のさしぬききゝたるこそ



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百五十三〕こだいの人のさしぬきゝたるこそ


 文の清げな姿

 古体の人が、指貫(袴類)を着ているところこそ、とっても怠怠しいことよ。前にひき当てて、先ず、足と衣の・裾を皆、込め入れて、腰紐はうち捨てて、衣の前を整え果てて、指貫の・腰紐をおよび腰で取る時に、後ろへ手をさしやって、猿が手結わえられているように、ばたばたし始めるのは、急なことで出発できそうにも、思えないよ。


 原文、

 こだいの人のさしぬきゝたるこそ、いとたいたいしけれ。まへにひきあてて、まづすそをみなこめいれて、腰はうちすてゝきぬのまへをとゝのへはてて、こしをおよびてとるほどに、うしろざまに手をさしやりて、さるのてゆはれたるやうに、ほどきたてるは、とみのことにいでたつべくもみえざめり。


 心におかしきところ

 誇大の男が、さし抜き来たのこそ、とっても、怠怠しいことよ。前に・間辺に、ひき当てて、先、裾、皆込め入れて、腰は、そっちのけで、衣の前を整え果てて、腰紐を指で取るときに、後ろむきに手を差し出して、猿が手を結わえられたように、解き始めるのは、急には、井で立つだろうとも、見えないようすだよ。


 言の戯れと言の心

 「こだい…古代…古体…古風…誇大…言うほど大きく無いもの」「さしぬき…指貫…袴の一種…差し抜き」「きたる…着ている…来ている」「たいたいし…怠怠し…怠惰しい…大大しい」「まへ…前…間辺…おんな」「こし…腰…腰紐」「ほどく…解く…ほとく…はたはたとする…ばたばたする」「いでたつ…出発する…井で立つ」「井…女」「みえざめり…見えないようすだ」「見…目で見ること…覯…媾…まぐあい」。

 世の中にはいろいろな人が居る。こんな男もいたということ。


 
伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。