帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百六十二〕指貫は

2011-12-26 00:43:36 | 古典

  



                                             帯とけの枕草子〔二百六十二〕指貫は



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百六十二〕さしぬきは


 文の清げな姿

 指貫は、紫の濃い色、萌黄。夏は二藍、とっても暑いころ、夏虫の色しているのも涼しそうである。


 原文

 さしぬきは、むらさきのこき、もゑぎ、なつはふたあひ、いとあつきころ、なつむしのいろしたるもすゞしげなり。


 心におかしきところ

 さし抜きは、群咲きの濃い、燃え気。夏は二合い、とっても熱いころ、なづむ士の気色しているのも、心に吹く風涼しげである。


 言の戯れと言の心。

 「さしぬき…指貫…袴の一種…差し抜き…ものの行為」「むらさき…紫…斑咲き…群咲き」「咲く…おとこ花さく」「もえぎ…萌黄(うすみどり色)…燃え木…燃え気」「ふたあひ…ふたあゐ…二藍(紅と藍の紫色)…二合い(暑いときは心寒いがこれくらい)」「合…和合(三和は良し)」「あつき…暑き…熱き…情熱のもえ盛り」「なつむし…夏虫…(夏虫は色々いるが)蛍…ほたる…ほ垂る…なづむし…なずむ士…停滞する男…泥む子…ゆきわずらう子の君」「ほ…お…ぬきんでたもの…おとこ」「すずしげ…涼しそう…涼しい風が心に吹く気分」。



 言の戯れを知りましょう。すべて言は多様な意味がある。それをこれかと心得るのは「聞き耳」。古歌や古文のおかしさは、作者とほぼ「聞き耳」を同じくする人にだけわかる。

 「としのうちに春はきにけり」や「春はあけぼの」の春を季節の春と決めつけ、凝り固められたときから、古今和歌集も枕草子も「心におかしきところ」が聞こえなくなった。「はる」は、季節の春、晴る、青春、春情、張るもの、……、かもしれないものを


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。