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帯とけの枕草子〔二百六十二〕指貫は
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔二百六十二〕さしぬきは
文の清げな姿
指貫は、紫の濃い色、萌黄。夏は二藍、とっても暑いころ、夏虫の色しているのも涼しそうである。
原文
さしぬきは、むらさきのこき、もゑぎ、なつはふたあひ、いとあつきころ、なつむしのいろしたるもすゞしげなり。
心におかしきところ
さし抜きは、群咲きの濃い、燃え気。夏は二合い、とっても熱いころ、なづむ士の気色しているのも、心に吹く風涼しげである。
言の戯れと言の心。
「さしぬき…指貫…袴の一種…差し抜き…ものの行為」「むらさき…紫…斑咲き…群咲き」「咲く…おとこ花さく」「もえぎ…萌黄(うすみどり色)…燃え木…燃え気」「ふたあひ…ふたあゐ…二藍(紅と藍の紫色)…二合い(暑いときは心寒いがこれくらい)」「合…和合(三和は良し)」「あつき…暑き…熱き…情熱のもえ盛り」「なつむし…夏虫…(夏虫は色々いるが)蛍…ほたる…ほ垂る…なづむし…なずむ士…停滞する男…泥む子…ゆきわずらう子の君」「ほ…お…ぬきんでたもの…おとこ」「すずしげ…涼しそう…涼しい風が心に吹く気分」。
言の戯れを知りましょう。すべて言は多様な意味がある。それをこれかと心得るのは「聞き耳」。古歌や古文のおかしさは、作者とほぼ「聞き耳」を同じくする人にだけわかる。
「としのうちに春はきにけり」や「春はあけぼの」の春を季節の春と決めつけ、凝り固められたときから、古今和歌集も枕草子も「心におかしきところ」が聞こえなくなった。「はる」は、季節の春、晴る、青春、春情、張るもの、……、かもしれないものを
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。