小学生攻略法

このブログも10年目。久しぶりに担任復帰です。

保護者に,言わせてはいけない一言を言わせてしまった

2014-01-14 06:56:01 | 保護者への攻略法

クラスのある保護者から電話連絡がありました。

夜,私の自宅に。

「うちの子どもが学校で嫌がらせにあっている―」

という類の相談でした。

かなり心配している様子が電話越しにも伝わってきたし,だからこそわざわざこうして家にまで電話してくるのだろから,私も同調するように,真剣に対応しました。

まずそのお母さんが把握している事実を確認し,家でのその子の様子や言葉を聞きました。

そしてお母さんの言い分をじっくり聞きました。

そこまででもかなり長い電話になりました。

お母さんは,文句ごしなわけではなく,ただただ我が子を心配し,学校として早く対応してくれるよう,お願いをしていました。

加えて,相手の子やその家庭に対する不満も感じられました。

実は,このお母さんからの連絡は以前にも一度ありました。

そのときも同じような内容で。

相手や状況は違いましたが,そのときは,いわゆる「勘違い」でした。

私が学校で事実の確認をしたところ,お母さんが言っていたような嫌がらせはなく,その子の一方的な…

「うそ」でした。

ちょっと不機嫌になることがあって,そんなことをしてしまったようでした。

そして今回。

私は電話で,お母さんの話を最後まで聞いたあとに

「ご連絡ありがとうございます。学校のことでご心配をおかけして大変申し訳ありません。明日すぐに○○くんと,関係のありそうな子に,話を聞きます。」

と伝え,電話を切りました。

正直,前回の件もあったので,

(どうかな)

と思う節もありましたが,慎重にことを進めようと思いました。

そして実際に子どもたちと話をして,分かったことは,やはりお母さんが訴えたほどの嫌がらせは存在せず,いわゆる「どっちもどっち」というけんか染みたやりとりの中で生じたトラブルのようでした。

それもとても些細なことでした。

どうもその子が,事実をきちんと親に伝えないところがあるようでした。

自分に都合の悪いことや,説明が難しくなることは,言葉を濁したり,都合のいい言葉で済ませてしまうところがあったので,こんな事態になっていました。

今度はこちらから親に連絡しました。

まずその日のうちに手紙を書き,その子に持たせました。

「必ずお母さんに渡すんだよ」

そしてさらにその日の夜,家に電話しました。

「○○くんから手紙を受け取られました?」

と尋ねると

「え?いいえ… すみません」

と,お母さんは少し慌てた様子でした。

(またあの子は…)

と,少し腹立たしくもなりましたが,冷静に,一から丁寧に話をしました。

学校で起きた一連のことと,その子をめぐる最近の友人関係についても話をしました。

また同じようなことでお母さんが心配することがないように,

「以前よりも○○くんの友人関係はよくなってきている」

「周りの子も,○○くんへの接し方を考えてくれている」

「担任としても,油断せず今後も注意して見守っていく」

ということも伝えました。

同時に

「○○くんは,おうちでも,きちんと自分から話ができるようになりたいですね。その件に関しては,私の方からも話をしていきますので,ぜひおうちでも声をかけてみてください。」

と付け加えました。

この私の話にお母さんは,嫌がらせがなかったことにほっとしながらも,

「今回もご迷惑をおかけしまいた。本当にうちの子は・・・・」

と,弱った様子でもありました。

どうやら,お母さんもその子の言葉を100%真に受けていたわけではないようで,親子できちんとした話ができないので,学校にお願いした,という感じようでした。

そして,最後にお母さんがこう言いました。

「私の育て方が悪かったんでしょうか―」

「・・・・えっ,いや,そんな」

私は言葉につまりました。

まさかそんなことを言われるなんて。

お母さんは,その言葉を決して嫌味っぽく,冗談っぽく言うわけではなく,本当に思いつめた感じで言いました。

(しまった)

と思いました。

「親に言わせてはいけない一言」

を言わせてしまったような気がしました。

学校に非はない。

その子に問題がある。

家庭に問題がある。

私は,丁寧な言葉を使いながらも,遠まわしにそう伝えていたのではないかと,ここまでの一連のやりとりを深く反省しました。

そんなつもりはなかったはずなのに,でも確かに,私の心のどこかで,そんなことを思っていたのかもしれないと,痛く自分の態度に腹が立ってきました。

「育て方が悪かった」

親として,絶対に言いたくない言葉なはずです。

私も親ですから,我が子が大きくなったときに,そんなことは絶対に言いたくないと,心から思います。

電話で,それから先は,私なりに精一杯お母さんのフォローをし,学校での出来事だから私に責任があると,改めて伝えましたが,それも虚しく,電話は終わりました。

もうちょっと伝え方はなかったのかと思いました。

子育てに困っているお母さんが,浮かばれるような話をすべきだったんです。

今回の私の役目は,事実を明らかにして,学校はきちんと役割を果たしているということを伝えるのではなかったんですね。

その後,そのお母さんとは懇親会などで何度か直接話をする機会があったので,子育てに関して,色々と話をすることができ,お母さんの笑顔も出るようになったので,とりあえずはほっとしています。

事件を処理するだけでなく,カウンセラー的な役目を,保護者を相手にするべきときがあるということを,今回の件で学びました。