久木川上道路で
共通テーマ「沈黙」でTが書いた詩を投稿します。
さよなら
窓の外の銀杏の黄葉が
室内を明るくしていた朝
ももを自然骨折し
「痛いっ!」と叫び座り込んでしまったあなたは
それ以来起き上がれなくなった
ベッドの背を起こし
「大丈夫? 痛くない?」
と 問いかけると
あなたは静かに首を振った
痛いはずなのに
それからは何を聞いても
あなたはやさしく笑うだけ
ただ黙って頭を下げ 私を見ていた
まるで言葉がはじめからなかったかのように
そばに行くと
私の手をとり さすった
好きなお寿司を持って行くと
ほんの少しついばむように食べて
私の方へそっと押し戻した
アイスクリームも三口ほど食べると
手でもういい というしぐさをした
汚れた口元をタオルで拭くと
私の頬を両手ではさんで
じっと見つめてうなずいた
裸木の枝が揺れて
空気が入れ替わった その夜
あなたの意識はなくなり
二日後に息をひきとった
この世から去っていく時
言葉はいらない
あなたが私の手や頬にいつまでも残っている
共通テーマ「沈黙」でTが書いた詩を投稿します。
さよなら
窓の外の銀杏の黄葉が
室内を明るくしていた朝
ももを自然骨折し
「痛いっ!」と叫び座り込んでしまったあなたは
それ以来起き上がれなくなった
ベッドの背を起こし
「大丈夫? 痛くない?」
と 問いかけると
あなたは静かに首を振った
痛いはずなのに
それからは何を聞いても
あなたはやさしく笑うだけ
ただ黙って頭を下げ 私を見ていた
まるで言葉がはじめからなかったかのように
そばに行くと
私の手をとり さすった
好きなお寿司を持って行くと
ほんの少しついばむように食べて
私の方へそっと押し戻した
アイスクリームも三口ほど食べると
手でもういい というしぐさをした
汚れた口元をタオルで拭くと
私の頬を両手ではさんで
じっと見つめてうなずいた
裸木の枝が揺れて
空気が入れ替わった その夜
あなたの意識はなくなり
二日後に息をひきとった
この世から去っていく時
言葉はいらない
あなたが私の手や頬にいつまでも残っている
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