湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

沈黙の詩パート2

2016-03-14 14:29:05 | オリジナル
 久木川上道路で
共通テーマ「沈黙」でTが書いた詩を投稿します。
 
さよなら

窓の外の銀杏の黄葉が
室内を明るくしていた朝
ももを自然骨折し
「痛いっ!」と叫び座り込んでしまったあなたは
それ以来起き上がれなくなった
ベッドの背を起こし
「大丈夫? 痛くない?」
と 問いかけると
あなたは静かに首を振った
痛いはずなのに
それからは何を聞いても
あなたはやさしく笑うだけ
ただ黙って頭を下げ 私を見ていた
まるで言葉がはじめからなかったかのように
そばに行くと
私の手をとり さすった

好きなお寿司を持って行くと
ほんの少しついばむように食べて
私の方へそっと押し戻した
アイスクリームも三口ほど食べると
手でもういい というしぐさをした
汚れた口元をタオルで拭くと
私の頬を両手ではさんで
じっと見つめてうなずいた

裸木の枝が揺れて
空気が入れ替わった その夜
あなたの意識はなくなり
二日後に息をひきとった

この世から去っていく時
言葉はいらない
あなたが私の手や頬にいつまでも残っている

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