湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

境の詩パート1

2020-10-28 20:33:35 | オリジナル
新しい共通テーマ「境」でAが書いた詩を投稿します。

透けているからといって抜けられはしない

透明な人がひとり 立ちふさがって
行手を遮る境界などないのに
前へ進めなくなる
私と透明人間の間をすり抜けた蜉蝣
駅の方へ飛んで行く
あんなに透けた羽で
電車に乗って東京まで行くのか

無表情で会釈して
考えごとをしながら引き返す
抜けて行けなくても帰る場所がある
のが 不幸中の幸い
あの人に実体があった最後のとき
約束の場所を示してくれなかった

かがんで
戸口に落ちている硬い骨を拾う
中で電話のベルが鳴るので
拾った骨を放る
電話の主は言った
――ワインを持ってそっちへ行きたいけれど
  電車が怖くて東京から出られない――

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