共通テーマ「芽」でAが書いた詩を投稿します。
ひとつの種子
長い旅をしてから偶然降りた痩せた土地にもぐる
真暗闇で内側から湧き出てくるものが
ゆっくりと私の形を変えていく
頼りないペールグリーンの顔を出すと
風がさっと地上の洗礼を授けてきた
種皮をまとって飛んでいた時には感じなかった冷たさに揺れる
こっちをニコニコ見ている他の小さいライバルたち
芽が笑っていない
環境に向けて必死に念を送っているところなのだ
―ここを選んで芽吹いたんだよ
―愛されるためにやって来たんだよ
地中では細い根っこ同士が小競り合い
無表情だけどよっぽど親切な足許の枯葉と小声で会話する
「ここは水が足りないね」
〈だから根っこを伸ばすんだよ〉
「ここは光が足りないね」
〈だから背を伸ばすんだよ〉
「ここは風が強いね」
〈だから幹を太らせるんだよ〉
夏
私が強く分厚く輝くと
他の緑がざわめき睨みつける
既に胚の中で予想していたことだ
少し離れた地中に兄弟がいて
私が死んだら眠りから覚めることも
確実に予測しているから
独りで強くなっていく
毎月、共通テーマで書いた詩の合評会をしています。
次の合評会は4月6日(月)14時~逗子市民交流センター1階で行います。見学・参加希望者は当日お気軽にいらしてください。
ひとつの種子
長い旅をしてから偶然降りた痩せた土地にもぐる
真暗闇で内側から湧き出てくるものが
ゆっくりと私の形を変えていく
頼りないペールグリーンの顔を出すと
風がさっと地上の洗礼を授けてきた
種皮をまとって飛んでいた時には感じなかった冷たさに揺れる
こっちをニコニコ見ている他の小さいライバルたち
芽が笑っていない
環境に向けて必死に念を送っているところなのだ
―ここを選んで芽吹いたんだよ
―愛されるためにやって来たんだよ
地中では細い根っこ同士が小競り合い
無表情だけどよっぽど親切な足許の枯葉と小声で会話する
「ここは水が足りないね」
〈だから根っこを伸ばすんだよ〉
「ここは光が足りないね」
〈だから背を伸ばすんだよ〉
「ここは風が強いね」
〈だから幹を太らせるんだよ〉
夏
私が強く分厚く輝くと
他の緑がざわめき睨みつける
既に胚の中で予想していたことだ
少し離れた地中に兄弟がいて
私が死んだら眠りから覚めることも
確実に予測しているから
独りで強くなっていく
毎月、共通テーマで書いた詩の合評会をしています。
次の合評会は4月6日(月)14時~逗子市民交流センター1階で行います。見学・参加希望者は当日お気軽にいらしてください。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます