湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

ふたつの「たき火」

2020-12-16 18:19:43 | 湘南
茅ヶ崎独歩会のKさんYさんを、逗子市浄水管理センターの国木田独歩文学碑にご案内。
碑に刻まれた引用部分は、新体詩版「たき火」の出だしです。
逗子の砂やま草かれて
夕日さびしく残るなり
沖の片帆の影ながく
小坪の浦はほどちかし

独歩には散文版の「たき火」もあり、そちらはこんな書き出し。
北風を背になし、枯草白き砂山の崕に腰かけ、足なげいだして、伊豆連山の彼方に沈む夕日の薄き光を見送りつ、沖より帰る父の舟遅しと俟つ逗子あたりの童の心、その淋しさ、うら悲しさは如何あるべき。御最後川の岸辺に茂る葦の枯れて、吹く潮風に騒ぐ、その根かたには夜半の満汐に人知れず結びし氷、朝の退潮に破られて残り、ひねもす解けもえせず、夕闇に白き線を水際に引く。もし旅人、疲れし足をこのほとりに停めしとき、何心なく見廻はして、何らの感もなく行過ぎ得べきか。見かえれば彼処なるは哀れを今も、七百年の後にひく六代御前の杜なり。木がらしその梢に鳴りつ。
逗子海岸から望む伊豆連山、御最後川(田越川)、六代御前の杜と、今も見られる場所が書き込まれています。

Kさんが碑を写真に収めたすぐ後に、少しだけ降っていた雨が一瞬雪に変わり、逗子湾一帯が冬の情景に。
独歩がこの場所で焚き火を見ていた125年ほど前の冬にタイムスリップしたような気分になりました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 野水仙俳句 | トップ | 本の詩パート3 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

湘南」カテゴリの最新記事