湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

暫定代表詩

2018-12-02 23:12:46 | イベント
テレビでM-1グランプリを見ていて、突然思ってしまったこと。
今日のbuoyの会の時に講師の松下育男さんが私の第一詩集で一番面白かったと言ってくれたのが、湘南文芸のメンバーがベストだと言ってくれているのと同じ詩でした。自分自身は客観的にどうか分からなかったのですが、これはもう今現在暫定一位の作品とせざるを得ません。

死ぬまで一緒に

死ぬまで会えないので
あなたを呑みこんでしまいました
もう嘘をつけませんよ
私の暮らしの外で
私の知らない仕事と家族と友人と共に
生きているあなたを想像すると
切なくて狂ってしまうから
私と暮らしてもらいます

踏切です
あなたがするように脚を開いて立ち
微かに肩を揺らしながら
遮断機が上がるのを待ちます
通過する電車の全ての座席にあなたが
顎をあげ斜め上を見て座っています
あなたは手許に目を移し
黒い鞄から本を取り出します
移動時間の暇つぶしと実利を兼ね備えた本の
全てのページに私の言葉が刷られています
無数のあなたが乗った電車は
少し先の駅舎の屋根を越えて
透明な空に昇っていきました
私の中のあなたは表情を変えず
大股で線路を横切ります
着いた先で何をするか考えています
後ろは振り返りません

次の日あなたは遮断機をくぐります
無数のあなたが乗った電車にぶつかります
私の中のあなたがバラバラになって消えました
なにごともなかったように大股で無数の線路を
私は疲れもせずに
横切って横切って横切って
ひとかけらだけ残ったあなたの骸が
頭蓋の片隅でカラカラと鳴っているのを
気に留めることもなく
死ぬまで横切って行きます
私の中から消えていったあなたと
死ぬまで一緒に

 詩集「チランジア」収載
ユリイカ2014年10月号今月の作品欄1席、かつユリイカ初掲載作品でした。
その後作り続けてきた詩群がこれをしのげていないのは反省材料です。
コメント
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