日露戦争がすごい理由【海軍編】 パーフェクト・ゲームで勝利した連合艦隊
http://the-liberty.com/article.php?item_id=9263
今から111年前の1904年2月、日露戦争が勃発。そこでいかに日本陸軍が活躍したかについては、以前本欄で紹介しました。日露戦争は、白人優越主義を破った世界史上初の出来事でしたが、今回は、日本海軍の活躍に注目します。
「東洋のネルソン」の活躍
日本海軍が、世界一と謳われたロシア艦隊(いわゆる「バルチック艦隊」)に勝利した要因は様々あります。特に、東郷平八郎提督がとった、敵艦隊の目の前で船首の向きを変え、一斉に砲撃を行った「T字戦法」は有名です。独創的な戦法は見事にはまり、ロシア側は21隻が沈没し、6隻が捕獲される一方、日本側は小型艦艇の沈没などわずかな被害で、大勝利を収めました。
東郷提督は、当時、世界中でナポレオンを打ち破ったイギリス海軍の指揮官であるネルソンにちなみ、「東洋のネルソン」ともてはやされました。興味深いことに、ネルソン提督は、フランス艦隊の横っ腹に突撃して勝利しましたが、逆に東郷は、敵側に艦隊の横っ腹を見せる形で砲撃したという意味では、真逆と言えます。
日本海軍は新技術と新手法を取り入れて勝利
「T字戦法」の他にも、勝因があります。
日本海軍は、砲弾を爆発させる火薬として、新しく発明した「下瀬火薬」を導入しました。これは海軍の技術士官であった下瀬雅允(しもせ・まさちか)が発明したものですが、従来の砲弾よりも何倍もの爆風を生み出し、3千度に上る高熱のガスを発するなど、まさに驚異的な火薬でした。
攻撃を受けたロシア側は、多数の死傷者が出て、経験したこともない爆風と熱に恐怖したと言います。「下瀬火薬」は、現在も使用されている「TNT爆薬」のベースにもなっています。
また、日本海軍は砲撃をする際、一斉に射撃する方式(斉射)を取り入れました。それまでの砲撃は、各主砲が独自のタイミングで発射していたので、バラバラで発射されており、どの主砲から発射された砲弾がどこに着弾したのかが分かりにくい状態でした。
そこで日本海軍は、一斉に発射をすることで、着弾位置の誤差を修正でき、火力を集中させることができたのです。実際、ロシア側では、雨のように砲弾が飛んできたと言われています。
日本海海戦の大勝利は「大艦巨砲時代」を開く
日本海軍がロシア艦隊を撃滅したことに衝撃を受けた諸外国は、重武装の戦艦建造を急いだことで、「大艦巨砲時代」が開けました。5つの主砲を装備したイギリス戦艦「ドレッドノート」はその先駆けであり、これ以降の大型鑑は「ド級戦艦」「超ド級戦艦」と呼ばれるようになります。その後、速力も飛躍的に向上した戦艦は、海軍の中心として活躍していきます。
しかし、「大艦巨砲時代」を終わらせたのも、また日本海軍でした。
1941年12月の真珠湾攻撃の直後のマレー沖海戦(シンガポール沖)では、日本軍は空母から飛び立った航空機によって、イギリス海軍の浮沈戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」や「レパルス」を撃沈させました。
この世界初の空母による機動艦隊戦は、再び世界を驚かせたのです。それまでの航空機は偵察などがメインであり、戦艦を沈めた過去はごく一部しかありませんでした。
これを受け、アメリカ軍は戦闘機と空母を重視する戦いに変えたものの、日本軍は自ら航空機の優位性を証明したにもかかわらず、「戦艦による艦隊決戦」の思考を改められずに敗北しました。
戦後、戦艦の建造は急速に減ると同時に、大陸間弾道ミサイルを装備する潜水艦や、ミサイル防衛を主眼とする「イージス艦」の登場など、「戦艦の時代」は幕を下ろしました。
しかし、日本海軍が証明した戦艦の力やロシア艦隊に勝利した事実は、少しもその意義が損われることはありません。島国の日本としては、これからも海軍力に注力しなければならないでしょう。一方、70年以上たった今も、中国は空母艦隊の本格運用はできていません。当時の日本海軍がいかにすごかったかがよく分かります。(山本慧)
【関連記事】
2015年2月7日付本欄 日露戦争がすごい理由【陸軍編】 世界史上の奇跡と評される日本軍の活躍
http://the-liberty.com/article.php?item_id=9174
2015年2月18日付本欄 なぜ日本軍は太平洋戦争で負けたのか 戦後70年で振り返るべきは「敗戦した原因」
http://the-liberty.com/article.php?item_id=9209
2015年1月25日付本欄 明治政府の国防戦略 なぜ日本は朝鮮に介入した?
http://the-liberty.com/article.php?item_id=9125
2015年1月19日付本欄 大河「花燃ゆ」のあの人は誰? 杉梅太郎、毛利敬親、久坂玄瑞【3分で学ぶ世界の教養】
http://the-liberty.com/article.php?item_id=9067