永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(396)

2009年05月24日 | Weblog
09.5/24   396回

三十四帖【若菜上(わかな上)の巻】 その(5)

朱雀院のお話がつづきます。

「いかならむ折にか、その御心ばへほころぶべからむと、世の人もおもむけ疑ひけるを、つひに忍び過し給ひて、東宮などにも心をよせ聞こえ給ふ」
――いつかは源氏にも復讐心が覗くことだろうと、世間の人も大方疑っておりましたが、とうとう堪え通されて、東宮にも好意を寄せておられます――

「今はたまたなく親しかるべき中となり、睦び交はし給へるも、限りなく心には思ひながら、本性の愚かなるに添へて、子の道の闇にたち交じり、かたくななるさまにやとて、なかなか余所のことに聞こえ放ちたるさまにて侍る」
――今では、明石の姫君入内などして、又とない親しい筈の間柄となり、好意を寄せてくださっていますのを内心嬉しく思いながらも、元来愚かな性分の上に、子故の闇に迷って見苦しい振る舞いでもありはしないかと思って、かえって余所ごとのように無関心を装っているのです――

「内裏の御事は、かの御遺言違へず、仕うまつり掟てしかば、かく末の世の明らけき君として、来し方の御面をもおこし給ふ。本意のごと、いとうれしくなむ」
――帝のことについては、桐壷帝の御遺言通りに取り計らいましたので、末の世にもこれほどの名君として、先代の私の不面目を取り返してくださるのは、望通り誠に嬉しいことです――

「この秋の行幸の後、いにしへのこととり添へて、ゆかしくおぼつかなくなむ覚え給ふ。対面に聞こゆべき事ども侍り。必ず自らとぶらひものし給ふべき由、催し申し給へ」
――さる十月の六条院への行幸の後、昔の事も思い出されて、源氏に早くお目にかかりたく思います。対面して申し上げたいことがあるのです。必ずご自身でお訪ねくださるようにすすめてはくださらぬか――

 などと涙をこぼしながら、仰せになります。

◆子故の闇=子供可愛さに自分を失って闇の世界に惑う。

ではまた。


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