ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

高齢老朽化社会

2012-12-12 | Weblog
 笹子トンネルの天井板崩落事故は大問題です。インフラの老朽化が、日本国民の高齢化と期を同じくしてはじまったのではないか。
 コンクリートの寿命は30~50年だそうです。戦後の高度経済成長期、1960年代以降につくられたインフラが、軒並みに耐用年数の期限を迎え出したのでしょう。トンネル事故はそのはじまりを予告したはずです。経済成長のツケはバブル崩壊だけでなく、インフラ崩壊でもあるのです。危険な時代に突入しました。
 
 人間は自らの健康と生命にかかわることですから、体調が悪ければ医院に通い、メンテナンスに励みます。健康のためにスポーツジムやプールに通ったり、定期検診を受けるひとも多い。医療と健康維持システムの進んでいる国ほど、国民の高齢化問題を抱え込む。貧困国にはそのような難題はありません。
 ところが国民の熱心な健康志向に反して、インフラの健康診断や早期治療は手薄なのが現状のようです。小槌でコンコンたたいて音を確認したり、目視ですましたりする。そのような簡単な診断で「大丈夫ですよ」と医者にいわれれば、人間なら「馬鹿にするな! こんなヤブ医者には二度と来ません!!!」。きっとそう思うはずです。脚気の診断ではあるまいし、膝を金槌でコンコン、そして相手をじっと見つめるだけで、健康かどうかを判断するわけです。笹子トンネルでは、コンコンもなく二階ほどの高さの天井を、それこそ一階から目視点検するようなものだったといいます。
 
 問題はトンネルだけではありません。橋も危険です。建築後50年を過ぎた橋梁は現在約1割。あと20年もすれば、橋の半分はいつ落ちてもおかしくない期限を迎えます。
 上下水道も法定耐用年数は40年。すでに1割以上が年限を過ぎており、20年後には約6割が危険な状態に突入するといいます。

 昨年の梅雨時のことです。わが家近隣の1万5千戸がインフラ崩壊の危機にみまわれました。住まいは京都西山の山裾、洛西ニュータウンですが、都市ガスが数日間とまってしまいました。数万人が調理や風呂に難儀したのです。幸い死傷者は出ませんからよかったものの、この大事故はあまり報道もされず、被災住民数万人だけがつらい思いをしました。
 事故の原因は水道管の破裂。地下の配管から高圧水が噴き出し、その水が並行して走っているガス管に穴をあけてしまったのです。急きょガスの供給は停止されたのですが、住宅のガス管口からは水が流れ出し、床が水浸しになってしまった家もありました。
 被害にあった洛西ニュータウンは、1976年から開発がはじまった京都最大の新興住宅地です。しかし新興のはずが、20年ほど前からは人口が減少しており、ニューでなく老化タウン。開発開始からまだ40年もたっていないのですが。
 上下水道の法定耐用年数は40年といいます。なぜそれよりも早く、決壊してしまったのでしょうか。原因は土壌が酸性だからだそうです。そのために水道管の腐食劣化が早く進んだ。

 近ごろどこに行っても、年度末恒例の道路の掘り返しがはじまっています。そのような無駄はもうやめて、道路側溝に太い配管トンネルをつくった方がよほど効率的だと思います。上下水道もガスも電気電話ケーブルもその地下通路を通し、地上部にはフタをしておく。後世のためにも土建業者のためにも、インフラはこの際つくり替え、メンテナンスを効率的にできるように工夫するのが正解でしょう。そのための公共投資なら、景気浮揚策でもありわたしは賛成します。
 笹子トンネルの犠牲者が訴えているのは、「同じような事故を繰り返さないで」という、われわれに向かっての悲痛な叫びではないでしょうか。
<2012年12月12日>
コメント
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