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ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

中国・チャイナという不可解な国 №6 <国益と外交>後編

2010-11-18 | Weblog
 中国は文化大革命をへて、改革開放という現実路線に転換。そしてソ連崩壊後は、国策を大きく変えていく。
 イデオロギーではなく、国益こそが国家間の関係を維持し、処理するための準則であるとの見方が、中国では支配的になる。2002年の国防白書では、国防政策は中国の国家利益に基づくと明記したうえで、中国の国益を五つあげている。

 第1、国家の主権、統一、および安定の擁護。
 第2、経済建設をしっかり中心に位置づけて、絶えず総合的力を引き上げること。
 第3、社会主義制度の堅持と十全化。
 第4、社会の安定団結の保持と促進。
 第5、長期にわたる平和的な国際環境と良好な周辺環境の追及と実現。

 私見だが、第5は付録に見える。共産党一党独裁は、まず社会の不安定を警戒し、暴動や革命、政権の転覆を恐れる。中国を倒すことを妄想するなら、外から攻撃する必要は一切ない。内部人民を混乱させれば暴動が起き、この国の政権はあっけなく転覆する。

 小原は「中国は強大化する一面と不安定化する一面をあわせ持つ国である。中国の目覚ましい経済成長の背後では、貧富の格差、汚職腐敗、エネルギー・環境問題などの社会的矛盾が醸成され、社会的不満が蓄積されている」
 最高位に優先されるのが「国家主権と領土の安全は神聖不可侵にして絶対に譲ってはならないと強調し、祖国統一、主権擁護、領土保全は中国の歴史的責任である」という考えが根強いようだ。

 戦前の日本は、軍事力に頼って推し進めた政策から世界で孤立し、破綻した。国家の安全には軍事力は重要である。しかし、軍事力には重大な欠陥がある。それはしばしば暴力の連鎖や軍拡競争につながり、そして人々の憎悪反発を招く。軍事力によって戦争に勝利することはできても、持続的な平和や繁栄を「創る」ことは難しい。小原の明快な見解である。
 「政治に携わる者は、あらためて戦前と戦後の歴史を振り返り、平和で繁栄した戦後の歩みの重さをしっかりと認識し、そのうえで、不透明・不安定な要素を抱える世界のなかで、平和と繁栄をどのように確保していくのかを真剣に論じなければならない。長期的な戦略を描き、国民を糾合する政治のリーダーシップが、何にも増して重要である」
 日本と中国、双方両国のリーダーに読んでいただきたい一冊である。日本語で書かれ、中国で翻訳された本である。

 ところでまったく別の日本観をご紹介しよう。立命館大副総長のモンテ・カセム氏(立命館APU前学長・スリランカ出身)は「日本の世界に対する優位性は、伝統文化芸術大国としての特性と、科学技術と職人芸の活用のふたつを柱とし、そのための人づくりが鍵になる」。<京都新聞2010年11月16日夕刊・シリーズ『現代のことば』・東郷和彦「伝統と技術」>
 この見解は、リー・クワンユー氏のいう日本の「文化的強靭さ」に相通じると思う。アジアの他国人が日本のすぐれた特性といい、また期待する要素は、日本人の文化・科学技術、礼儀・知性・勤勉などのキーワードに集約されるようだ。
 日本に軍事指向は不要である。ただし蹂躙しようとする理不尽な国家なりが、もしも対峙してくるならば、毅然とした態度で国際世論に訴えればよい。日本は平和をこころから望みそして願い、広く深い意味での文化のソフトパワーで、世界に貢献しようという国是を持っているはずだからである。
 戦略家・サッチャー女史のフォークランド作戦を、英国と同じ島国のひとりの民として尊敬し、こころから称賛します。
<2010年11月18日>
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