Sightsong

自縄自縛日記

吉田哲治+永武幹子@なってるハウス

2020-07-26 21:59:59 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウス(2020/7/26)。

Tetsuji Yoshida 吉田哲治 (tp)
Mikiko Nagatake 永武幹子 (p)

意外なのかどうなのかよくわからないが初共演。当初の予定が延期されていたこともあり、なおさら楽しみにしていた。

曲はすべて吉田さんのオリジナル。旋律には哀愁があって、しみじみとして、どこかの情景が目に浮かぶようで、とてもいい。しかし演奏は枯れているというわけではなく、これにも味があってたまらない。

2曲目の「ハイ・デ・ボッチ」は栗田妙子さんとのデュオではぎくしゃくしているおもしろさを感じたのだが、この日は、大きなピースをふたりで渡しあう非対称なゲームのような印象を覚えた。池田芳夫さんとそのお弟子さんのムロタさんとの頭文字を取った「IM2」では、はじめはピアノが伴奏のようでいて、やがて音を引き寄せた。他の曲でもそうだったのだが、この、ピアノソロでの引き寄せと短時間での独創的な音世界の構築が永武さんらしく思えた。

ピアニストが変わるとこうもサウンドの印象が異なる。セットごとに栗田さんと永武さんとで交代するギグを観ることができたら愉しいにちがいない。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●吉田哲治
吉田哲治+栗田妙子@東中野セロニアス(2020年)
吉田哲治『December』、『Eternity』(2019年)
吉田哲治『Jackanapes』(2018年)
FIVES & 鈴木常吉『童謡』(1991年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』
(1988年)
生活向上委員会大管弦楽団『This Is Music Is This?』(1979年)

●永武幹子
松丸契+永武幹子+マーティ・ホロベック@なってるハウス(JazzTokyo)(2020年)
吉野弘志+永武幹子@アケタの店(2020年)
酒井俊+纐纈雅代+永武幹子@本八幡cooljojo(2019年)
かみむら泰一+永武幹子「亡き齋藤徹さんと共に」@本八幡cooljojo(2019年)
酒井俊+青木タイセイ+永武幹子@本八幡cooljojo(2019年)
古田一行+黒沢綾+永武幹子@本八幡cooljojo(2019年)
蜂谷真紀+永武幹子@本八幡cooljojo(2019年)
2018年ベスト(JazzTokyo)
佐藤達哉+永武幹子@市川h.s.trash(2018年)
廣木光一+永武幹子@cooljojo(2018年)
植松孝夫+永武幹子@中野Sweet Rain(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2018年)
永武幹子+類家心平+池澤龍作@本八幡cooljojo(2018年)
永武幹子+加藤一平+瀬尾高志+林ライガ@セロニアス(2018年)
永武幹子+瀬尾高志+竹村一哲@高田馬場Gate One(2017年)
酒井俊+永武幹子+柵木雄斗(律動画面)@神保町試聴室(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)
永武幹子+瀬尾高志+柵木雄斗@高田馬場Gate One(2017年)
MAGATAMA@本八幡cooljojo(2017年)
植松孝夫+永武幹子@北千住Birdland(JazzTokyo)(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)


近藤直司+永田利樹+武田理沙@喫茶茶会記

2020-07-26 01:02:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

四谷三丁目の喫茶茶会記(2020/7/25)。

Naoji Kondo 近藤直司 (ts, bs, ss)
Toshiki Nagata 永田利樹 (b)
Risa Takeda 武田理沙 (p, synth)

意外で聴いてみたいと思わせられる組み合わせ。

近藤直司さんのサックス3本はそれぞれ特徴が異なるようだ。バリトンは高密度な音塊というよりも、多少隙間があり、キー操作の音も聴こえるために、メカニカルな楽器の魅力が感じられた。そのために重くありながら軽くもあるという両面性が発揮されているように聴こえる。テナーは高音から低音まですべての音域が充実している。ソプラノは音圧をとても強くすることで短い管ゆえの揺らぎを封じ、一気に音が耳に届く驚きがあった。

永田さんのコントラバスは重量級だが足腰がばねのようで、時々刻々と柔軟な変化をみせてくれた。武田さんがシンセを弾くときには弦のなかほどを押さえて響きの大きさも重さも抑制し、一音一音が強くなるピアノであればフルで低音を鳴らしているようにみえた。近藤さんと武田さんのふたりの音におもむろにピチカートで入っていくときの快感はコントラバスならではだ。

そして武田さんの演奏は自身のなかでの壁がないように思えた。シンセとピアノはびっくりするほど連続的であり、そのピアノでもこれと拘泥するのではなく屈託なく左から右まで叩くありように激しいおもしろさを覚えた。またシンセの音を空中に漂わせたり濁らせたりして空気を支配する時間もあった。

ぜひ再演も観たい。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●近藤直司
長沢哲+近藤直司+池上秀夫@OTOOTO(2018年)
のなか悟空&人間国宝『@井川てしゃまんく音楽祭』(2016年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』(1988年)

●永田利樹
ジョー・フォンダ+永田利樹@渋谷メアリージェーン(JazzTokyo)(2018年)
藤井郷子オーケストラ東京@新宿ピットイン(2018年)
かみむら泰一session@喫茶茶会記(2017年)
フェローン・アクラフ、Pentax 43mmF1.9(2004年)

●武田理沙
松本ちはや+武田理沙@なってるハウス(2020年)
mn+武田理沙@七針(2019年)
武田理沙『Pandora』
(2018年)


豊住芳三郎+照内央晴@山猫軒

2020-07-24 09:34:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

埼玉県越生町の山猫軒(2020/7/23)。

Sabu Toyozumi 豊住芳三郎 (perc)
Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)

このふたりの共演を観るのは3度目だ(いちどはサックスの庄子勝治を加えたトリオ)。だが過去の繰り返しにはまったくならない。

やはりこれと決めず始めるもののようで、場や人との関係を取り込みながら手探りをしていく様子にはいつも緊張感がただよう。それはその後に各々が決めたアクションによる衝突や衝撃波とはまた違った緊張感なのであって、それがなければ良い即興演奏にはならないに違いない。

ファーストセットでは、豊住さんはシンバルを擦って人の声のような音を出した。以前より唾液を付けてドラムの皮を擦るプレイはしばしばあったが、これは新鮮だった。二胡を使わなかったのは声的なものをそれで表現したからかもしれないと思った。

照内さんのピアノは覚悟を決めたかのように高音域で破裂した。美学の枠の中での押し引きが多い印象があるのだが、それを余裕で壊して横方面に飛び出る音、さすがである。そのあとに鍵盤を身体側に引き寄せる弾き方もあり、それが音に特徴としてあらわれていた。

セカンドセットでの豊住さんのあまりにも強いパルスにも驚いた(そういうプレイをする人だとわかっていても驚く)。不定形でありながら強く、そのことがその場限りの形を作っていることが伝わってきた。なんという音楽的な足腰のしなやかさだろう。

この日は即興演奏家が何人も集まっていて、これがまた新しい縁になるとおもしろいだろうなと想像した。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●豊住芳三郎
豊住芳三郎+照内央晴@渋谷公園通りクラシックス(2020年)
豊住芳三郎+コク・シーワイ+照内央晴@横濱エアジン(2019年)
豊住芳三郎インタビュー(JazzTokyo)(2019年)
豊住芳三郎+庄子勝治+照内央晴@山猫軒(2019年)
豊住芳三郎+老丹+照内央晴@アケタの店(2019年)
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
ジョン・ラッセル+豊住芳三郎@稲毛Candy(2018年)
謝明諺『上善若水 As Good As Water』(JazzTokyo)(2017年)
ブロッツ&サブ@新宿ピットイン(2015年)
豊住芳三郎+ジョン・ラッセル『無為自然』(2013年)
豊住芳三郎『Sublimation』(2004年)
ポール・ラザフォード+豊住芳三郎『The Conscience』(1999年)
アーサー・ドイル+水谷孝+豊住芳三郎『Live in Japan 1997』(1997年)
佐藤允彦+豊住芳三郎『The Aiki 合気』(1997年)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(1976年)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『新海』、高木元輝+加古隆『パリ日本館コンサート』(1976年、74年)
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』(1971年、75年)
富樫雅彦『風の遺した物語』(1975年)

●照内央晴
庄子勝治+照内央晴@稲毛Candy(2020年)
松本一哉+照内央晴+吉本裕美子@水道橋Ftarri(2020年)
照内央晴+加藤綾子@本八幡cooljojo(2020年)
神保町サウンドサーカス(直江実樹+照内央晴、sawada)@神保町試聴室(2020年)
豊住芳三郎+照内央晴@渋谷公園通りクラシックス(2020年)
千野秀一+照内央晴@渋谷公園通りクラシックス(2019年)
奥田梨恵子+照内央晴@荻窪クレモニア(2019年)
豊住芳三郎+コク・シーワイ+照内央晴@横濱エアジン(2019年)
照内央晴+加藤綾子@神保町試聴室(2019年)
特殊音樂祭@和光大学(JazzTokyo)(2019年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴@なってるハウス(2019年)
豊住芳三郎インタビュー(JazzTokyo)(2019年)
豊住芳三郎+庄子勝治+照内央晴@山猫軒(2019年)
豊住芳三郎+老丹+照内央晴@アケタの店(2019年)
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2019年)
吉久昌樹+照内央晴@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2019年)
照内央晴、荻野やすよし、吉久昌樹、小沢あき@なってるハウス(2019年)
照内央晴+方波見智子@なってるハウス(2019年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
『終わりなき歌 石内矢巳 花詩集III』@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2018年)
Cool Meeting vol.1@cooljojo(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)


三浦一壮+丸田美紀+香村かをり+木村由@なってるハウス

2020-07-18 10:07:49 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウス(2020/7/17)。

Isso Miura 三浦一壮 (舞踏)
Miki Maruta 丸田美紀 (箏)
Kaori Komura 香村かをり (韓国伝統楽器)
Yu Kimura 木村由 (dance)

83歳の舞踏家・三浦一壮とダンスの木村由。ステージ上でも出逢い、交流し、世界を共有するのだが、そのことによってふたりの違いも伝わってくる。由さんは円環というより楕円や弧をさまざまな角度や速度で提示し、観る者が動きの把握をする土台をいつの間にか別のものに変えてしまっている。三浦一壮さんはそこに立ち、動き、関節がつながっていること自体に強烈な疑いを投げかけるようだ。そして前半は両者ともに顔を隠すことによって動きや佇まいに集中させ、後半はヴェールを取って関係をナマのものにした。

丸田さんは「箏らしく」流れるように掻き鳴らさない。ことさらに前面に出てこないのだが、それでなおさら存在感を受け取ることができた。合間合間になんだろうと思うと意識外から箏の音。

香村さんははじめはアンビエントな響きからはじまり、濃淡と強弱をさまざまに付けたプレイで、ステージの大きな変化をもたらしているように思えた。後半では韓国打楽器ならではの連続的な打音で、踊りのナマな感覚と相まって、最後に向けて恍惚感を高めた。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●木村由
『ツ・ナ・ゲ・ル・ヒ・ト』@千歳烏山TUBO(2020年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
庄田次郎トリオ@東中野セロニアス(2018年)
宙響舞@楽道庵(2017年)
河合拓始+木村由@神保町試聴室(2016年)

●丸田美紀
松本泰子+メアリー・ダウマニー+丸田美紀@音や金時(2019年)

●香村かをり
金剛督+香村かをり+大由鬼山@包丁処たち花(2020年)


電気スライム@なってるハウス

2020-07-15 00:00:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウス(2020/7/14)。

Atsushi Goto 後藤篤 (tb, synth)
Yasuyuki Takahashi 高橋 保行 (tb, synth, track)

当初は各々のソロも入れる予定だったみたいだが、結局はずっとデュオになった。

トロンボーンの音がナマで出され、加工され、時間も狂わされて他の電子音とともに提示される。この愉しい遊戯にトロンボーンのぶるぶる震える音がよくマッチしている。サックスやトランペットではこうはいかずサウンドの中で突き抜けてしまう。それが延々と続き朦朧とする。

ふたりのトロンボーンの音も違っていて、高橋さんの音波は直接周囲のものに衝撃波を与え、後藤さんはまずくぐもってから独特のサウンドへの伝播をみせる。いつまでも脳内で続く音楽。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●後藤篤
後藤篤@アケタの店(2019年)
後藤篤+レオナ@國學院大學(2018年)
【日米先鋭音楽家座談】ピーター・エヴァンスと東京ジャズミュージシャンズ(JazzTokyo)(2018年)
原田依幸+後藤篤@なってるハウス(2017年)
後藤篤『Free Size』(2016年)
秘宝感とblacksheep@新宿ピットイン(2012年)
『blacksheep 2』(2011年) 

●高橋保行
渋大祭@川崎市東扇島東公園(2019年)
藤井郷子オーケストラ東京@新宿ピットイン(2018年)


ロシアのうた@音や金時

2020-07-14 08:05:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

西荻窪の音や金時(2020/7/13)。

Miyuki Ishibashi 石橋幸 (vocal)
Keiki Midorikawa 翠川敬基 (cello)
Kyoko Kuroda 黒田京子 (p)
Yuriko Mukojima 向島ゆり子 (vln)
Toshiaki Ishizuka 石塚俊明 (ds)

なんど目を擦ってみてもすごいメンバーなのだが、この人たちが微笑みながらロシアの歌謡や民謡を演るという過激さ。

石橋幸さんは演る前にその内容を語り、至福のような笑顔で哀しみを歌う。翠川さんのチェロはいつもながら出そうで出なくてうっふん、上品と下品の両方を平然とカバーする素晴らしさがある。向島ゆり子さんのいきなり何光年も飛ぶヴァイオリンにもやられる。「デカブリストの嘆き」でのチェロとピアノのイントロにヴァイオリンが入り、さらにブラシが入っていくところなんてぞくぞくしながら聴いた。オデッサの歌ではイサーク・バーベリの小説に描かれた街の雰囲気を思い出したりして。

●翠川敬基
喜多直毅+翠川敬基+角正之@アトリエ第Q藝術(2019年)
ファドも計画@in F(2018年)
夢Duo『蝉時雨 Chorus of cicadas』(2017-18年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
早川岳晴『kowloon』(2002年)
1999年、井上敬三(1999年)
翠川敬基『犬の細道』(1992年)
高柳昌行+ペーター・コヴァルト+翠川敬基『Encounter and Improvisation』(1983年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981、91、98年)
富樫雅彦『かなたからの声』(1978年)
翠川敬基『完全版・緑色革命』(1976年)
富樫雅彦『風の遺した物語』(1975年) 

●黒田京子
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン
(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)

 

HIROKI BAND@本八幡cooljojo

2020-07-14 07:40:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2020/7/12)。

Koichi Hiroki 廣木光一 (g)
Nobumasa Tanaka 田中信正 (p)
Masaharu Iida 飯田雅春 (b)
Kazuko Habu 羽生一子 (ds, vo)

この日は廣木さんの新曲が多い。「なんやらかやら」に続く「盛岡」でははじめからピアノが張り切って飛ばし、力強いドラムスも嬉しい。「二丁目の春」を経て、飯田さんの「マラカトゥ」では粘っこいベースのイントロから独特のパターンを繰り返すおもしろい演奏。羽生さんのドラムスは丸くも角を立ててもいて気持ちいいし、飯田さんのベースは全体の中で浮かび上がる。常にサウンドが複層的。

セカンドセット冒頭の「Love Will Out」での田中さんのピアノはやはりみごと。続く「東京そぞろ歩き」では題名の雰囲気でリズムが気持ちいい。それにしてもバンドサウンドをかたちづくるギターの透明さと強靭さ。このふたつは矛盾するようだが、それが廣木さんの音楽の魅力にちがいない。「クイーン」は2011年に津波被害に遭った岩手県大槌市のジャズ喫茶の名前を取った曲(娘さんが最近「クイン」として復活させたらしい)。そしてシコ・ブアルキの2曲。

終わったあとに飯田さんと羽生さんにいろいろお話をうかがった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●廣木光一
廣木光一+ナスノミツル+芳垣安洋@本八幡cooljojo(2019年)
HIROKI BAND@南青山ZIMAGINE(2019年)
廣木光一+渋谷毅『Águas De Maio 五月の雨』(2018年)
廣木光一+永武幹子@cooljojo(2018年)
高田ひろ子+廣木光一@本八幡cooljojo(2017年)
安ヵ川大樹+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
吉野弘志+中牟礼貞則+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
廣木光一+渋谷毅@本八幡Cooljojo(2016年)
Cooljojo Open記念Live~HIT(廣木光一トリオ)(JazzTokyo)(2016年)
廣木光一(HIT)@本八幡cooljojo(2016年)
廣木光一『Everything Shared』(2000年)
廣木光一『Tango Improvisado』(1995年)


コーリー・スマイス『Accelerate Every Voice』(JazzTokyo)

2020-07-06 20:42:05 | アヴァンギャルド・ジャズ

コーリー・スマイス『Accelerate Every Voice』(Pyroclastic Records、2018年)のレビューを、JazzTokyo誌に寄稿した。

>> #1990 『Cory Smythe / Accelerate Every Voice』

Kyoko Kitamura 北村京子 (voice)
Michael Mayo (voice, looper)
Raquel Acevedo Klein (voice)
Steven Hrycelak (vo bass)
Kari Francis (vo perc)
Cory Smythe (p, electronics)

●コーリー・スマイス
コーリー・スマイス+ピーター・エヴァンス『Weatherbird』(2015年)
ネイト・ウーリー『Argonautica』(2014年)

●北村京子
The Music of Anthony Braxton ~ アンソニー・ブラクストン勉強会&ライヴ@KAKULULU、公園通りクラシックス(JazzTokyo)(2019年)
北村京子『Protean Labyrinth』(2018年)


『Interactive Reflex』(JazzTokyo)

2020-07-06 20:33:58 | アヴァンギャルド・ジャズ

『Interactive Reflex』(極音舎、2019-20年)のレビューをJazzTokyo誌に寄稿した。

>> #1989 『Interactive Reflex』

Homei Yanagawa 柳川芳命 (as)
Yasuhiro Usui 臼井康浩 (el-g)
Kazuhiko Matsuda マツダカズヒコ (el-g)
Wataru Kawai 河合渉 (el-g)
Masanori Kobayashi 小林雅典 (el-g)
Ragno Miyabe 宮部らぐの (el-g)

●柳川芳命
日本天狗党、After It's Gone、隣人@近江八幡・酒游館(2019年)
柳川芳命+Meg Mazaki『Heal Roughly Alive』(2018年)
柳川芳命+Meg『Hyper Fuetaico Live 2017』(JazzTokyo)
(2017年)
Sono oto dokokara kuruno?@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
柳川芳命『YANAGAWA HOMEI 2016』(2016年)
柳川芳命+ヒゴヒロシ+大門力也+坂井啓伸@七針(2015年)
柳川芳命『邪神不死』(1996-97年)
柳川芳命『地と図 '91』(1991年)

●宮部らぐの
日本天狗党、After It's Gone、隣人@近江八幡・酒游館(2019年)


瀬尾高志+松丸契+竹村一哲+高橋佑成@公園通りクラシックス

2020-07-06 19:44:35 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷の公園通りクラシックス(2020/7/5)。

Takashi Seo 瀬尾高志 (b)
Kei Matsumaru 松丸契 (as)
Ittetsu Takemura 竹村一哲 (ds)
Yusei Takahashi 高橋佑成 (p)

新鮮なメンバー構成にも驚いたが、瀬尾さんのプレイにも驚いた。もっと重厚に押し出すイメージが強かったのだが、ここでは高速の指弾きを中心に、踊るようにして基底からサウンドを揺り動かしている(まるでデイヴ・ホランドだなと思った)。そして舞っては刺すピアノ、繰り返しと発展によりその場でのフレーズの創出に耳が貼りついてしまうアルト、重くてするどいドラムスと、役者が揃っている。

もうひとつ驚いたのは、セカンドセットでビリー・ハーパーの「Priestess」を演奏したことだ。この曲はど演歌であるからメロディを愚直になぞるものだと思い込んでいるが(わたしは)、松丸さんはかれらしく解体再構築して吹いた。伝説はこのように再解釈されなければならない。最後は「I Say A Little Prayer」で締めた。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●松丸契
松丸契+永武幹子+マーティ・ホロベック@なってるハウス(JazzTokyo)(2020年)
松丸契@下北沢No Room For Squares(2020年)
松丸契+片倉真由子@小岩コチ(2020年)
細井徳太郎+松丸契@東北沢OTOOTO(2019年)
松丸契『THINKKAISM』(2019年)
纐纈雅代+松丸契+落合康介+林頼我@荻窪ベルベットサン(2019年)
m°Fe-y@中野Sweet Rain(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)

●竹村一哲
永武幹子+瀬尾高志+竹村一哲@高田馬場Gate One(2017年)
纐纈雅代トリオ@新宿ピットイン(2017年)
板橋文夫『みるくゆ』(2015年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)

●高橋佑成
秘密基地『ぽつねん』(2019年)
秘密基地@東北沢OTOOTO(2019年)
謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)
森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO
(2016年)


詭弁楽派 vol.1@新宿ピットイン

2020-07-05 07:52:50 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットイン(2020/7/4)。

詭弁楽派
Masahiko Sato 佐藤允彦 (p)
Benisuke Sakai 坂井紅介 (b)
Chihaya Matsumoto 松本ちはや (perc)

なぜグループ名を「詭弁楽派」としたのかというところから、落語好きの佐藤允彦さんらしく「千早振る」について話をはじめたりして、それというのも松本「ちはや」だからである。2020年2月9日に稲毛のCandyで佐藤允彦・松本ちはやデュオが実現し、会場は超満員だったという(行けなかった)。ちはやさんはその直後、力を発揮しきれなかったといったようなことを書いていて、少し驚いた。そんなわけで再共演でなにが起きるのか目撃しなければならない。

はじめは御大ふたりをちはやさんが追いかけているように聴こえた。どこで噛み合うのかと思っていると、ときどきのアクセントで捉まえているような印象があった。だが2曲目でミンガスの「Goodbye Pork Pie Hat」となり、ブラシなどによる擦音で独自の場を作り、次の曲で前に出てきてレインスティックによって野蛮さを出し始めてからは音の重みが三者並んだ。佐藤さんがちょっと弾いたのはビートルズの「Michelle」か(若い頃に『Palladium』で演奏している)。ここからブリキ缶と鐘で走るちはやワールド。

佐藤允彦さんはいつもながら音の引き出しが無尽蔵。余裕で何かを誘うように軽く弾くと、ちはやさんは声で遊びはじめた。坂井紅介さんはどうしようかと困って笑い、コントラバスを叩こうとしたり、弦をいつはじこうかと悩んだりしている。このあたりも音楽の過程としておもしろい。

セカンドセットはどちらかと言えばジャズフォーマットで(映像収録だからか)、こうなるとピアノとベースのふたりは蓄積された経験をためらいなく発揮する。3曲目に前に出てきて、白い容器を擦り、高周波の幅広い響きを創り出して場をまた別のものにした。そして最後のアンコールまで疾走する3人。

ステージの中でも驚くほど変貌するのは想定内ではなかったに違いない。ということは、次はまた想定外のサウンドになるということである。

●佐藤允彦
ニュージャズホールって何だ?@新宿ピットイン(2018年)
TON KLAMI@東京都民教会(2016年)
高瀬アキ+佐藤允彦@渋谷・公園通りクラシックス(2016年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男@新宿ピットイン(2014年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男『YATAGARASU』(2011年)
佐藤允彦+豊住芳三郎『The Aiki 合気』(1997年)
『ASIAN SPIRITS』(1995年)
TON-KLAMI『Prophecy of Nue』(JazzTokyo)(1995年)
『老人と海』 与那国島の映像(1990年)
翠川敬基『完全版・緑色革命』(1976年)
アンソニー・ブラクストン『捧げものとしての4つの作品』(1971年)

●松本ちはや
松本ちはや+武田理沙@なってるハウス(2020年)
李英姿『Beyond』(2019年)
特殊音樂祭@和光大学(JazzTokyo)(2019年)
謝明諺+レオナ+松本ちはや@Bar subterraneans(JazzTokyo)(2019年)
松本ちはや『Liddell two Apple Kuchen』(JazzTokyo)(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)


庄子勝治+照内央晴@稲毛Candy

2020-07-04 09:42:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

稲毛のCandy(2020/7/3)。客席との間にはコロナ対策の透明シートが吊るされていてびっくり。

Masaharu Showji 庄子勝治 (bcl, as, soprillo)
Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)
Guests:
Yukari Uekawa 植川縁 (as)
Shunsuke Suzuki 鈴木俊祐 (p)

庄子さんははじめはバスクラを吹いた。急に飛び出す音塊に、ピアノも激しく応える。バスクラがもごもごと話すように下を擦ると、ピアノは物語的に展開し、想像以上に短い間に振幅を大きく展開した(珍しい?)。バスクラが長めのしっぽを引きずるようにして黙ると、ピアノは小声で自律的になってゆき、多角形のように尖って終わった。

2曲目のアルトの音圧には驚いた。横から漏れるぴきぴきという音、それに応じるようにかぶせるピアノ。音圧にスピードという対照のおもしろさがある。庄子さんのアルトは音圧だけではない。音が確信犯のようによれてゆき、それを続けることにより強度が増す。照内さんがあるところで沈黙した。庄子さんはアルトを吹き続け、ピアノの内部がそれにより響く。実は1曲目とは反対にピアノの沈黙で終わることを期待していたら、やはり、照内さんは余計な策動はせずにそのまま収束した。

セカンドセット、1曲目にアルトの植川さんが入った(庄子さんは植川さんのお父さんに師事したことがあるそうだ)。クラシックの人でもあり、ヴィブラートが綺麗で、音色を連続的に変えてゆくところなどさすがである。ピアノは澄んだ音から次第にガラスが割れるように鋭角化する。アルトとバスクラのロングトーン並走による音の流れがおもしろい。それも細くなっていった。

2曲目では庄子さんはソプリロを使った。小さいからソプラノ以上に音がよれ、チャルメラ的になるのだが、何しろここでも音圧が強く、そのふたつが相まって独特の表現になっている。照内さんはフリージャズ的に鍵盤をどしゃめしゃと叩いて、老丹との共演のときのような意外さがあって愉しく聴いた。

最後に、ピアノの鈴木俊祐さんが入り、庄子さんのアルトとのデュオ。狂ったブギウギピアノに応じて、庄子さんはわかっているかのように音を散らす。気が合っている印象がある。終盤に庄子さんがビール缶をアルトのベルに入れ音を詰まらせた。鈴木さんはコードを強調してそれに応じたようにみえた。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.8

●庄子勝治
豊住芳三郎+庄子勝治+照内央晴@山猫軒(2019年)

●照内央晴
松本一哉+照内央晴+吉本裕美子@水道橋Ftarri(2020年)
照内央晴+加藤綾子@本八幡cooljojo(2020年)
神保町サウンドサーカス(直江実樹+照内央晴、sawada)@神保町試聴室(2020年)
豊住芳三郎+照内央晴@渋谷公園通りクラシックス(2020年)
千野秀一+照内央晴@渋谷公園通りクラシックス(2019年)
奥田梨恵子+照内央晴@荻窪クレモニア(2019年)
豊住芳三郎+コク・シーワイ+照内央晴@横濱エアジン(2019年)
照内央晴+加藤綾子@神保町試聴室(2019年)
特殊音樂祭@和光大学(JazzTokyo)(2019年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴@なってるハウス(2019年)
豊住芳三郎インタビュー(JazzTokyo)(2019年)
豊住芳三郎+庄子勝治+照内央晴@山猫軒(2019年)
豊住芳三郎+老丹+照内央晴@アケタの店(2019年)
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2019年)
吉久昌樹+照内央晴@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2019年)
照内央晴、荻野やすよし、吉久昌樹、小沢あき@なってるハウス(2019年)
照内央晴+方波見智子@なってるハウス(2019年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
『終わりなき歌 石内矢巳 花詩集III』@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2018年)
Cool Meeting vol.1@cooljojo(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)

●植川縁
照内央晴+方波見智子@なってるハウス(2019年)

●鈴木俊祐
鈴木俊祐@稲毛Candy(2020年)


サガイン@なってるハウス

2020-07-03 07:30:49 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウス(2020/7/2)。

Sagaing サガイン:
Katsura Yamauchi 山内桂 (as)
Akinori Yamasaki 山崎昭典 (g)

サガインは自由即興ではなく曲を演奏するユニット。だが演奏する際には自由即興と同じ気分で吹いているのだと山内さんが話してくれた。

記憶を遡行するような7曲。確かに旋律を吹いているし、山内さんのサックスも自由即興のときよりも端正で音響的なアプローチとは違う。山崎さんは端正にギターを弾き、ふたりが重なるようでも独立なようでもある。静かな空間を音で埋めていくのではなく、音によって静かな空間を創り出していくような印象がある。

「Kage」では、影が本体を追いかけていく姿を幻視させられた。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●山内桂
千野秀一+山内桂@Ftarri(2018年)
山内桂『live at Futuro cafe』(2017年)
山内桂+中村としまる『浴湯人』(2012年)
山内桂+マーティン・ヴォウンスン『Spanien』(2010年)
山内桂『波照間』、『祝子』(2006、08年)
山内桂+ミシェル・ドネダ『白雨』(2004年)