Sightsong

自縄自縛日記

元ちとせ@ビルボード東京

2019-11-30 07:38:55 | ポップス

ミッドタウンのビルボード東京(2019/11/29)。

元ちとせ (vo)
鈴木正人 (b)
ハタヤテツヤ (p)
八橋義幸 (g)

元ちとせのライヴを観るのは、2008年に日テレの「Music Lovers」収録に当選して以来である。もちろんその間も新譜は欠かさず聴いていたけれど、実際に目の当たりにすると、前よりもはるかに素敵になっている。明るい赤色のドレスを着て、裸足ではない。

冒頭はシンディ・ローパーの「True Colors」。『Occident』で唄っていたし驚くことはないのだが、言語がなんであれ彼女には関係ないのだということがよくわかる。イルカの「なごり雪」、CMソング「あなたの夢で目覚めた朝に」と続き、「青のレクイエム」。<あたためてほしいと誰に言えばいい>の箇所でベースが弓弾きになり、ああ小編成で良かったなと思う。

そして笠置シズ子の「買物ブギ―」、「散歩のススメ」、「ケ・サラ」、「語り継ぐこと」、あと1曲やって(何だったっけ)、アンコールは「ワダツミの木」と「おやすみ」。

ずっと惚れ惚れとして観ていた。かつて声量が衰え、鼻から抜ける裏声が過度に目立っていたこともあったけれど、それは既に過去の話になっている。声が成熟し、振付も自然で、こちらも自然体で聴くことができる。とは言え、「ワダツミの木」ではもう歌詞をバラバラにして、各々の断片に力を込めるという強力な唄い方もみせた。もう、本当に良い歌手なんである。

●元ちとせ
元ちとせ『元唄』(-2018年)
元ちとせ『平和元年』(2015年)
元ちとせ『Orient』(2010年)
元ちとせ『カッシーニ』(2008年)
元ちとせ『Music Lovers』(2008年)
元ちとせ『蛍星』(2008年)
『ミヨリの森』(2007年)(主題歌)
元ちとせ『ハイヌミカゼ』(2002年)
元ちとせ×あがた森魚
『日本地図から消えた島 奄美 無血の復帰から60年』(ナレーターとして参加)
『ウミガメが教えてくれること』(出演)


ジェレミー・ペルト@Body & Soul

2019-11-29 07:37:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

南青山のBody & Soul(2019/11/28)。

Jeremy Pelt (tp)
Victor Gould (p)
Vicente Archer (b)
Allan Mednard (ds)
Chien Chien Lu (vib) 
Guest:
Satoshi Inoue 井上智 (g)

ほぼ『Jeremy Pelt The Artist』の参加メンバーによる来日であり、お店は満員で立ち見も出た。

ファーストセットは同アルバムと同じく、「The Rodin Suite」が5曲続けて演奏された。「地獄の門」や「カミーユ・クローデル」などロダンに触発されたものであり、それをイメージしながら聴くと愉しい。

ペルトは5年前にNYのSMOKEで観たときよりも迫力ある姿となっていて、音もやはりヘヴィ級。管楽器はアメリカ大リーグと同様に、フィジカルな凄みだけで痺れてしまうところがある(ライアン・ハワードのホームランを見るときの快楽のような・・・)。これを支えているのがドラムスであって、5年前のツインドラムスも然り、パワーで叩き続けなければならない。アラン・メドナードはその意味でとても良かった。

台湾出身のチェンチェン・ルーのシンプルながら強力なヴァイブもまた同じヴェクトル。組曲のエピローグにおいて、ピアノのヴィクター・グールドと32小節のソロを交換するときの加熱ぶりは愉快だった。

オリジナルだけでなく、「When I Fall in Love」や「When I Fall in Love」、アンコールで井上智とデュオで演った「In a Sentimental Mood」における抑制されたトランペットも、もとのパワーがあるために、聴き応えがあった。ときどきどや顔で高音を吹くのは愛嬌。

ゲストの井上智さんは調和的でもスパイスでもあって愉しめたのだが、やたらとスタンダード曲の断片を引用したり、ウェス・モンゴメリーのまんまパクリを披露したりというプレイは興ざめだった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●ジェレミー・ペルト
ジェレミー・ペルト『Jeremy Pelt The Artist』(2018年)
ウェイン・エスコフェリー『Vortex』(-2018年)
ジェレミー・ペルト『Noir en Rouge / Live in Paris』(2017年)
ジェレミー・ペルト『Make Noise!』(2016年)
ジェレミー・ペルト『#Jiveculture』(2015年)
ブラック・アート・ジャズ・コレクティヴ『Presented by the Side Door Jazz Club』(2014年)
ジェレミー・ペルト『Tales, Musings and other Reveries』(2014年)
ジェレミー・ペルト@SMOKE(2014年)
ジャズ・インコーポレイテッド『Live at Smalls』(2010年)
ジェレミー・ペルト『Men of Honor』(2009年)
ルイ・ヘイズ『Dreamin' of Cannonball』(2001年)


ジム・ジャームッシュ『The Dead Don't Die』

2019-11-25 07:34:16 | アート・映画

アメリカからの帰国便で、ジム・ジャームッシュ『The Dead Don't Die』(2019年)(英語字幕版)を観る。

ジャームッシュの新作はゾンビ映画である。ネタバレは避けるが、バレたところでこの面白さは減ることはない。パロディも散見されるが、お約束でみんな笑う類のものである。

なにしろ変人万歳だ。そして言葉が世界の隙間に奇妙に入り込むことの力を、ジャームッシュは信じているに違いない。『リミッツ・オブ・コントロール』において、変な者たちがミッションの遂行にあたって最後に付けるのは「by any chance?」だった(いちいち笑ってしまう)。『パターソン』だって言葉の力を全面的に信じた映画だ。

最初のゾンビの事件が起きる。最初に調べた警官は慄いて「Wild animal? Or several wild animals?」と訊くともなく呟く。次の警官も現場を視た後に「Wild animal? Or several wild animals?」、それに対して最初の警官「That's exatly what I said!」とツッコむ。そして三番目の警官も。笑ってしまって脇腹が痛い。

しかしこれは符丁的面白さだけではなく、世界のメタフィクション化とも関係していることがわかってくるのだった。

傑作。日本公開されたらまた観たい。(トム・ウェイツがまた良いのだ。)

●ジム・ジャームッシュ
ジム・ジャームッシュ『パターソン』(2016年)
ジム・ジャームッシュ『リミッツ・オブ・コントロール』(2009年)
ジム・ジャームッシュ『コーヒー&シガレッツ』(2003年)


アーサー・ブル+秋山徹次、神田さやか@Ftarri

2019-11-25 00:12:30 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2019/11/24)。

Sayaka Kanda 神田さやか (vo, g)

Arthur Bull (g)
Tetuzi Akiyama 秋山徹次 (g)

アーサ―・ブルの音は楽器に粘りつくようであり、音が発せられる向きが独特である。ヴェクトルが内向きとも感じるし、バウンダリーを自ら定めたうえでその内部であらゆる方向に弾性衝突を繰り返すようでもある。一方の秋山さんは、普段と同じなのかもしれないが、アーサーさんの音がそうであったためになおさら外部に開かれて、アーサーさんのバウンダリーに穴を開けたり音の箱を揺さぶったりするものとなっていた。

終わったあとに短くもういちど演ろうと言って、こんどはふたりとも飛翔した。音の方向性はそれぞれ保ったまま。

神田さやかさんのガットギター弾き語りも面白いものだった。言葉を囁くたびに、なにかとの断絶が目の前で明らかになる。しかしそれは絶望や諦めには向かわない。心象の言葉も擬態語も同列であって、それが生命の秘密なのかと思えた。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、XF35mmF1.4

●秋山徹次
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
エリザベス・ミラー+クレイグ・ペデルセン+秋山徹次+中村としまる@Ftarri(2018年)
「響きの今」(ジョン・ラッセル、ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ、ピーター・エヴァンス、秋山徹次)@両国門天ホール(2018年)
高島正志+古池寿浩+秋山徹次「Blues Frozen Xīng ブルース 凍てついた星」@Ftarri(2018年)
Sound of the Mountain with 秋山徹次、中村としまる『amplified clarinet and trumpet, guitars, nimb』(JazzTokyo)(2017年)
ファビオ・ペルレッタ+ロレンツォ・バローニ+秋山徹次+すずえり@Ftarri(2017年)
池田謙+秋山徹次@東北沢OTOOTO(2017年)
『OTOOTO』(2015、17年)


ウィノグラッド&クラウダー、シリ&ザ・シリビムズ@Genghis Cohen

2019-11-23 20:06:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

ロサンゼルスのGenghis Cohen(2019/11/21)。コレというジャズ系のライヴが見当たらなかったこともあり、クレズマーを聴きにきたわけである。観客の風貌やノリから判断するに、ユダヤ系の人たちが多かったのかな。

Winograd & Crowder:
Michael Winograd (cl)
Christina Crowder (accordion)
Guests:
Abigale Reisman (vln)
Jack Stratton (ds)

Shiri & the Shiribims:
Shiri Goldsmith-Graziani (vo)
Andres Trujillo (sousaphone)
James Sherry (tp)
Jesse Ward (g)
Joellen Lapidus (accordion)

メインのウィノグラッド&クラウダー。マイケル・ウィノグラッドはフランク・ロンドンらとも共演歴のあるクレズマー奏者であり、相方のクリスティナ・クラウダーもまた東欧のユダヤ音楽にずっと取り組んでいる。最初の一音でこれは凄いクラリネットだとわかった。強い音圧で鳴らし切り、艶があり、複雑な曲を余裕で吹きまくっている。

ユーモアも振り撒いている。かれはクレズマーの歴史を100年だとして、歴史も軽妙に辿りつつあれこれと披露する。観客も何十年代が良いだのなんだのと愉し気に反応していて、親密な空間が出来ていた。

ファーストステージは、シリ&ザ・シリビムズ。巨大なスーザフォンが愉しいがそれだけではない。みんな腕利きで、客席も音楽も賑々しい。シリさんは気取らない感じで、日常のクレズマーといった印象である。最後には、コンポステラのレパートリーでもあった「イディッシュ・ブルース」を演り、嬉しくなってしまった。トランペットのジェームスさんは、開演前にトイレがなかなか空かず、こっちで大丈夫大丈夫といって一緒に女子トイレを使った仲である(演奏家とは知らなかった)。

ずいぶん面白く興奮させられたライヴだった。クレズマーを少し追いかけてみようかな。

Nikon P7800


澤田一範+松井節子+小杉敏+渡辺文男@行徳ホットハウス

2019-11-17 08:09:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

行徳のホットハウス(2019/11/16)。

Kazunori Sawada 澤田一範 (as)
Setsuko Matsui 松井節子 (p)

Satoshi Kosugi 小杉敏 (b)
Fumio Watanabe 渡辺文男 (ds)

久しぶりに渡辺文男さんのドラミングを聴きたいものだとずっと思っていたが、最近では体調が悪くて当日キャンセルということが多かった。昨日はOKのようで嬉しくなって出かけた。

曲は、Scrapple from the Apple、All the Things You Are、I Can't Get Started、Star Eyes、Happy Birthday、Route 66~Now's the Time(お客さんのひとりが66歳の誕生日だった)、Love for Sale、Just Friends(わたしのリクエスト)、Confirmation、Wave、Hot House、Smoke Gets in Your Eyes、Caravan。

澤田さんのスモーキーなアルト、松井さんのふふんとばかりに弾いて切り上げる潔いピアノ、歌う小杉さんのベース。そして渡辺文男さん。昔は良さがわからなかったのだが、それは「大人でなかった」ことを意味する。「機敏でない」、「派手でない」という指摘は間違いであり、「独自のタイム感」なのだ。実に味があり、ここぞとばかりにシンバルに手を伸ばすのも泣かせる。「Just Friends」での赤いブラシも最高だった。

文男さんと小杉さんに、37年前の『Groovin' High』にサインを頂いた。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●澤田一範、松井節子、小杉敏
安保徹+松井節子+小杉敏+村田憲一郎@行徳ホットハウス(2019年)
澤田一範+松井節子+小杉敏+村田憲一郎@行徳ホットハウス(2019年)
中村誠一+松井節子+小杉敏+村田憲一郎@行徳ホットハウス
(2018年)

●渡辺文男
高橋知己『Lady in Satin』(2011年)
渡辺文男『Groovin' High』(1982年)

本田竹広『This Is Honda』(1972年)
本田竹広『The Trio』(1970年)


マーク・ドレッサー『Modicana』

2019-11-16 11:00:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

マーク・ドレッサー『Modicana』(NoBusiness Records、2016-17年)(LP)を聴く。

Mark Dresser (b)

これは何がどうなっているんだろう。

コントラバスでのソロライヴなのに、ハーモニクスやマルチフォニックスというパスを通じて様々な音が攻めてくる。コントラバスらしい複数の音、メタリックだったりフィードバックのようだったりもする高音、遠くで響くノイズ、裏声のような音。単音かなと思う箇所でもそこにはさまざまな周波数の山が含まれている。驚異。

●マーク・ドレッサー
マーク・ドレッサー7@The Stone(2017年)
ジョーンズ・ジョーンズ(ラリー・オクス+マーク・ドレッサー+ウラジミール・タラソフ)『A Jones in Time Saves Nine』(2016年)
マーク・ドレッサー7『Sedimental You』(2015-16年)
テイラー・ホー・バイナム+マーク・ドレッサー『THB Bootlegs Volume 4: Duo with Mark Dresser』(2014年)
マーク・ドレッサー『Unveil』、『Nourishments』(2003-04年、-2013年)
『苦悩の人々』再演
(2011年)
クリスペル+ドレッサー+ヘミングウェイ『Play Braxton』(2010年)
スティーヴ・リーマン『Interface』(2003年)
マーク・ドレッサー+スージー・イバラ『Tone Time』(2003年)
ユージン・チャドボーン『Pain Pen』(1999年)
藤井郷子『Kitsune-Bi』、『Bell The Cat!』(1998年、2001年)
ジェリー・ヘミングウェイ『Down to the Wire』(1991年)
ジョン・ゾーン『Spy vs. Spy』(1988年)


マーガレット・カメラー@稲毛Candy

2019-11-16 00:38:59 | アヴァンギャルド・ジャズ

稲毛のCandy(2019/11/15)。ベルリン在住の歌手である。

Margareth Kammerer (vo, g)

素晴らしい声である。歌詞があるものでも、彼女自身の心象風景のように展開する。面白いことに、スタンダードの「Come Rain or Come Shine」を歌う一方で、「My Foolish Heart」や「Speak Low」は同じスタンダードの歌詞に自らの曲をあてている。これによって言葉のひとつひとつに生命が与えられているようだ。

囁きも大きな声も驚くほど連続的であり、また身体から音波になるまでの過程も梨地のように滑らかに連続的。抑制したり震わせたりする際にも声が自らの脚で立っている。ちょっとこれは聴き惚れる他はなかった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、XF35mmF1.4


デイヴ・ホランド+ザキール・フセイン+クリス・ポッター『Good Hope』

2019-11-15 07:38:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

デイヴ・ホランド+ザキール・フセイン+クリス・ポッター『Good Hope』(Edition Records、2018年)を聴く。

Dave Holland (b)
Zakir Hussain (Tabla, Kanjira, Percussion, Madal) 
Chris Potter (ts, ss)

デイヴ・ホランドのベースの魅力はフラメンコダンサーのごとき踊りだが、本盤ではそれが満開。なんとも自由に邪魔する者のない時空間で踊っている。大傑作ではないか。

もちろん、どのような展開であれ図抜けたテクニックで音楽の流体を滾々と湧き出させ続けるザキール・フセインとクリス・ポッターがいてこそである。ホランドが踊るステージはかれらが作っている。

●デイヴ・ホランド
デイヴ・ホランド『Uncharted Territories』(-2018年)
『Aziza』(2015年)
デイヴ・ホランド『Prism』(2012年)
デイヴ・ホランド+ペペ・ハビチュエラ『Hands』(2010年)
デイヴ・ホランドの映像『Jazzbaltica 2003』(2003年)
ケニー・ホイーラー+リー・コニッツ+デイヴ・ホランド+ビル・フリゼール『Angel Song』(1996年)
デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』(1995年)
スティーヴ・コールマン+デイヴ・ホランド『Phase-Space』(1991年)
カール・ベルガー+デイヴ・ホランド+エド・ブラックウェル『Crystal Fire』(1991年)
カンパニー『Fables』(1980年)
デイヴ・ホランド『Conference of the Birds』(1973年)

●クリス・ポッター
クリス・ポッター『Circuits』(2017年)
デイヴィッド・ビニーと仲間たち@Nublu(2017年)
クリス・ポッター『International Jazz Festival Bern 2017』(2017年)
クリス・ポッター『The Dreamer is the Dream』(2016年)
『Aziza』(2015年)
クリス・ポッター『Imaginary Cities』(2013年)
ポール・モチアンのトリオ(1979、2009年)
ポール・モチアン『Flight of the Blue Jay』(1996年)


ニコラス・ペイトン『Relaxin’ with Nick』

2019-11-14 23:28:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

ニコラス・ペイトン『Relaxin’ with Nick』(Smoke Sessions Records、2019年)を聴く。

Nicholas Payton (tp, p, fender rhodes, vo, effects & samples)
Peter Washington (b)
Kenny Washington (ds)

ペイトンがトランペットだけにこだわっていないのは前からのことであるから、ピアノやフェンダーローズが聴こえてきても何も驚くことはない。同じようなスタンスでの『Letters』(2014年)は存在感が希薄で、かつてのトランペットの怪童ぶりはどこに行ったと不満だったのだが、本盤は好きだ。

マンハッタンのSmokeで3日続けて行われたライヴの録音である。わりと騒がしくて皆食事をしながら演奏を観る場所であり、それがアルバム作りには奏功したのかもしれない。タイトル通り、リラックスしていて、音もあの喧騒の中に溶け込んでいくようで、とても良い。フェンダーローズとピアノはブルージーで気怠い感覚もある。肝心のトランペットも余裕で力を残して吹いている。それももとの力量があるからだ。

90年代にシーンに華々しく出てきたころのペイトンは、生で観たら音の大きさと圧に驚いた。しかし今のペイトンをこそ観たい気がしている。

●ニコラス・ペイトン
ニコラス・ペイトン『Letters』(2014年)
ニコラス・ペイトン『Numbers』(2014年)
ニコラス・ペイトン『#BAM Live at Bohemian Caverns』(2013年)


WaoiL@下北沢Apollo

2019-11-14 00:51:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のApollo(2019/11/13)。

Tokutaro Hosoi 細井徳太郎 (g)
Koki Matsui 松井宏樹 (as, ss)
Katsumasa Kamimura 上村勝正 (b)
Yusuke Yaginuma 柳沼佑育 (ds)
Guest:
Daisuke Okuzumi 奥住大輔 (as)

水と油でWaoiL。毎回リーダーの細井さんが物語を設定してくるようで、今回は、「二日酔いの男が午前に目を覚まして、ヴェランダから外を見ると昨日の景色なのか今の景色なのかわからず、その日が過ぎていく」といったもの。それを背景として、モンクやジミヘンの曲が演奏される。

松井宏樹のサックスは、アルトでもソプラノでも、鳴らされるときには透明感があって音の圧が強い。それを中心に据えて、擦れた音、詰まった音、またジミヘンの曲ではディストーションがかかったような音と、強度をもって多彩な表現をしていてとても良い。

細井さんはインプロを演るときとは違い、ノイズやエフェクト中心ではなく、それらを効かせつつギターを弾く。とは言えスティールパンを思い出すほどのメタリックな音や、自身のエフェクトとギターとの抜きつ抜かれつの競走など遊び続ける。アポロではよくどこかの水の音が聴こえるが、漂流するような音のときにそれと相まって不思議な感覚をもたらしている。

このふたりが、どちらがどちらの音なのかわからなくなる瞬間もあり、またユニゾンで奇妙な音を出すこともあり、面白い。上村さんのベースは余裕でサウンドを駆動している。

今回驚いたのは柳沼さんのドラミングである。見事なブラシもさることながら、スティックで全体サウンドとは独立しているかのようなリズムを創出する強さがある。オーネット・コールマンと一緒に演ったときのチャールズ・モフェットを思い出した。

曲によって、奥住大輔さんがアルトを持って参入した。「Epistrophy」では音を詰め込むように集約し濁らせる感覚。「Misterioso」ではフォギーな音。裏声のような音もあった。この個性が松井さんのアルトと対照的だった。この人のリーダーバンドも聴いてみたい。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●細井徳太郎
李世揚+瀬尾高志+細井徳太郎+レオナ@神保町試聴室(2019年)
細井徳太郎+君島大空@下北沢Apollo(2019年)
秘密基地@東北沢OTOOTO(2019年)
謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
合わせ鏡一枚 with 直江実樹@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)
伊藤匠+細井徳太郎+栗田妙子@吉祥寺Lilt
(2018年)

●松井宏樹
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)

●上村勝正
渋大祭@川崎市東扇島東公園(2019年)
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)
今村祐司グループ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ


トム・ブランカート+ルイーズ・ジェンセン+今西紅雪+田中悠美子@本八幡cooljojo(JazzTokyo)

2019-11-09 09:07:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2019/9/29)。JazzTokyo誌に寄稿した。

>> #1106 トム・ブランカート+ルイーズ・ジェンセン+今西紅雪+田中悠美子

(写真はm.yoshihisaさん)

Louise Dam Eckardt Jensen (as, voice)
Tom Blancarte (b)
今西紅雪 Kohsetsu Imanishi (箏)
Guest:
田中悠美子 Yumiko Tanaka (三味線)

●トム・ブランカート
トム・ブランカート+ルイーズ・ジェンセン+ケヴィン・マキュー+北陽一郎+与之乃+棚谷ミカ@不動前Permian(2019年)
ブランカート+エヴァンス+ジェンセン+ペック『The Gauntlet of Mehen』(2015年)
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)

●ルイーズ・ジェンセン
トム・ブランカート+ルイーズ・ジェンセン+ケヴィン・マキュー+北陽一郎+与之乃+棚谷ミカ@不動前Permian(2019年)
ブランカート+エヴァンス+ジェンセン+ペック『The Gauntlet of Mehen』(2015年)

●今西紅雪
今西紅雪+S.スワーミナータン@葛西レカ(2019年)
August Moon@浜町August Moon Cafe(2019年)
障子の穴 vol.2@ZIMAGINE(2019年)
今西紅雪「SOUND QUEST 2019 〜谺スル家〜」@千住仲町の家(2019年)
タリバム!+今西紅雪@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2019年)
ピーター・エヴァンス@Jazz Art せんがわ2018(JazzTokyo)(2018年) 

●田中悠美子
齊藤僚太+ヨシュア・ヴァイツェル+田中悠美子@Ftarri(2018年)
角銅真実+横手ありさ、田中悠美子+清田裕美子、すずえり+大城真@Ftarri(2018年)


陳穎達『離峰時刻 Off Peak Hours』(JazzTokyo)

2019-11-09 09:00:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

陳穎達『離峰時刻 Off Peak Hours』(2019年)のレビューをJazzTokyo誌に寄稿した。

>> #1646 『陳穎達(チェン・インダー)/ 離峰時刻 Off Peak Hours』

陳穎達 Ying-Da Chen (g, composition)
謝明諺 Minyen “Terry” Hsieh (sax)
池田欣彌 Kinya Ikeda (b)
林偉中 Wei-Chung Lin (ds)

●陳穎達
陳穎達カルテットの録音@台北(2019年)

●謝明諺
謝明諺+レオナ+松本ちはや@Bar subterraneans(JazzTokyo)(2019年)
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)
陳穎達カルテットの録音@台北(2019年)
東京中央線 feat. 謝明諺@新宿ピットイン(2018年)
謝明諺+大上流一+岡川怜央@Ftarri
(2018年)
謝明諺『上善若水 As Good As Water』(JazzTokyo)(2017年)
マイケル・サイモン『Asian Connection』(2017年)


Sound of the Mountain with 秋山徹次、中村としまる『amplified clarinet and trumpet, guitars, nimb』(JazzTokyo)

2019-11-09 08:50:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

JazzTokyo誌に、Sound of the Mountain with 秋山徹次、中村としまる『amplified clarinet and trumpet, guitars, nimb』(Mystery & Wonder、2017年)のレビューを寄稿した。

>> #1645 『Sound of the Mountain with Tetuzi Akiyama and Toshimaru Nakamura / amplified clarinet and trumpet, guitars, nimb』

Tetuzi Akiyama 秋山徹次 (g)
Toshimaru Nakamura 中村としまる (no-input mixing board)
Sound of the Mountain:
Elizabeth Millar (amplified cl)
Craig Pedersen (amplified tp)

●秋山徹次
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
エリザベス・ミラー+クレイグ・ペデルセン+秋山徹次+中村としまる@Ftarri(2018年)
「響きの今」(ジョン・ラッセル、ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ、ピーター・エヴァンス、秋山徹次)@両国門天ホール(2018年)
高島正志+古池寿浩+秋山徹次「Blues Frozen Xīng ブルース 凍てついた星」@Ftarri(2018年)
ファビオ・ペルレッタ+ロレンツォ・バローニ+秋山徹次+すずえり@Ftarri(2017年)
池田謙+秋山徹次@東北沢OTOOTO(2017年)
『OTOOTO』(2015、17年)

●中村としまる
エリザベス・ミラー+クレイグ・ペデルセン+秋山徹次+中村としまる@Ftarri(2018年)
クレイグ・ペデルセン+中村としまる、エリザベス・ミラー+広瀬淳二@Ftarri(2018年)
フタリのさとがえり@Ftarri(2018年)
竹下勇馬+中村としまる『Occurrence, Differentiation』(2017年)
クレイグ・ペデルセン+中村としまる@Ftarri(2017年)
広瀬淳二+中村としまる+ダレン・ムーア@Ftarri(2017年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
中村としまる+沼田順『The First Album』(2017年)
内田静男+橋本孝之、中村としまる+沼田順@神保町試聴室(2017年)
『OTOOTO』(2015、17年)
山内桂+中村としまる『浴湯人』(2012年)
中村としまる+ジョン・ブッチャー『Dusted Machinery』(2009年)

●クレイグ・ペデルセン、エリザベス・ミラー
エリザベス・ミラー+クレイグ・ペデルセン+秋山徹次+中村としまる@Ftarri(2018年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)
クレイグ・ペデルセン+中村としまる、エリザベス・ミラー+広瀬淳二@Ftarri(2018年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+徳永将豪+増渕顕史+中村ゆい@Ftarri(2017年)
クレイグ・ペデルセン+中村としまる@Ftarri(2017年)
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
クレイグ・ペデルセン、エリザベス・ミラーの3枚(2016-17年) 


川島誠インタビュー(JazzTokyo)

2019-11-09 08:44:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

川島誠さんにインタビューを行った(剛田武さんと)。場所は新宿ナルシスだが、ママも川島さんなので話していて紛らわしかった。

>> Interview #197 川島誠 Makoto Kawashima〜アメリカ・ツアーで得たもの

Fuji X-E2、7Artisans 12mmf2.8

●川島誠
ピーター・コロヴォス+川島誠+内田静男+山㟁直人+橋本孝之@千駄木Bar Isshee(2019年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
マーティン・エスカランテ、川島誠、UH@千駄木Bar Isshee(2019年)
川島誠@白楽Bitches Brew(2019年)
タリバム!featuring 川島誠&KみかるMICO『Live in Japan / Cell Phone Bootleg』(2019年)
フローリアン・ヴァルター+直江実樹+橋本孝之+川島誠@東北沢OTOOTO(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
川島誠@川越駅陸橋(2017年)
むらさきの色に心はあらねども深くぞ人を思ひそめつる(Albedo Gravitas、Kみかる みこ÷川島誠)@大久保ひかりのうま(2017年)
#167 【日米先鋭音楽家対談】クリス・ピッツィオコス×美川俊治×橋本孝之×川島誠(2017年)
川島誠『Dialogue』(JazzTokyo)(2017年)
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
川島誠『you also here』(2016-18年)
川島誠+西沢直人『浜千鳥』(-2016年)
川島誠『HOMOSACER』(-2015年)