ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男『YATAGARASU』(Not Two、2011年録音)を聴く。ポーランド・クラクフでのライヴ録音である。何が八咫烏だ。
森山威男 (ds)
佐藤允彦 (p)
Peter Brotzmann (as, ts, tarogato, bflat-cl)
3人の巨大な個性がぶつかるセッションというだけで、聴くに値する。それぞれの演奏は、予想通りでありながら、聴いているときには予断とは無縁になる。したがって、巨大な個性だと言うことができる。
最初から、森山威男のドラムスが、どすどすどすどすと飛ばす。もっとも効くツボを休まず押し続ける屈強な整体師のようなものだ。こちらはツボをつかれるため、目をとろんとさせ、口を半開きにするのみ。そのなかを、ブロッツマンがいつものように唾を飛ばしながら叫び吠える。佐藤允彦は知的に斬り込んでいく。
それで、1時間以上ものあいだずっとヘビーウェイト級の闘いかといえばそうでなく、時には静かな独白(ソロ)や対話(デュオ)も見せる。相手をわかったうえで技を受けること、これは、総合格闘技ではなく、今の茶番プロレスでもなく、昔の本気のプロレスなのだ。
このようなものを聴くと、疲れたとか眠いとか言っている場合じゃないと思ってしまう。
●参照
○ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』
○ペーター・ブロッツマン@新宿ピットイン
○ペーター・ブロッツマン
○エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(ブロッツマン参加)
○セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(ブロッツマン参加)
○ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(ブロッツマン参加)
○ハン・ベニンク『Hazentijd』(ブロッツマン参加)
○横井一江『アヴァンギャルド・ジャズ ヨーロッパ・フリーの軌跡』
○ヨーロッパ・ジャズの矜持『Play Your Own Thing』
○翠川敬基『完全版・緑色革命』(佐藤允彦参加)
○姜泰煥『ASIAN SPIRITS』(佐藤允彦参加)
○アンソニー・ブラクストン『捧げものとしての4つの作品』(佐藤允彦参加)
○渋谷毅+森山威男『しーそー』
○若松孝二『天使の恍惚』(森山威男参加)
○中央線ジャズ