Sightsong

自縄自縛日記

川島誠@白楽Bitches Brew

2019-03-31 01:14:19 | アヴァンギャルド・ジャズ

白楽のBitches Brew(2019/3/30)。

Makoto Kawashima 川島誠 (as)

やはり川島誠の音は変わったと思う。

以前は自身の内奥を探り、なにかのフラグメンツを拾い上げ表出させるところがあった。この日も確かに内省的に感じられる微かな音からはじまりはした。しかしそのヴェクトルは、聴く者を内奥へと誘うのではなく、すべてをさらけ出して吐き出すものとなっていた。凄みがあった。音圧は半端なく強く、鼓膜がぐにゃりぐにゃりと動く。濁りも情も、レヴィナス的に顔を他者に与える覚悟も、表現としてこちらに届いた。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●川島誠
フローリアン・ヴァルター+直江実樹+橋本孝之+川島誠@東北沢OTOOTO(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
川島誠@川越駅陸橋(2017年)
むらさきの色に心はあらねども深くぞ人を思ひそめつる(Albedo Gravitas、Kみかる みこ÷川島誠)@大久保ひかりのうま(2017年)
#167 【日米先鋭音楽家対談】クリス・ピッツィオコス×美川俊治×橋本孝之×川島誠(2017年)
川島誠『Dialogue』(JazzTokyo)(2017年)
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
川島誠+西沢直人『浜千鳥』(-2016年)
川島誠『HOMOSACER』(-2015年)


合わせ鏡一枚 with 直江実樹@阿佐ヶ谷Yellow Vision

2019-03-31 00:07:24 | アヴァンギャルド・ジャズ

阿佐ヶ谷のYellow Vision、土曜日のマチネ(2019/3/30)。

合わせ鏡一枚:
Kokichi Yanagisawa 柳沢耕吉 (g, objects)
Tokutaro Hosoi 細井徳太郎 (g, effects)
guest:
Miki Naoe 直江実樹 (radio)

2セットで3回の即興演奏。この変わったギタリストふたりが何をするのかと興味津々だったが、確かに面白いものだった。

柳沢さんは最初は微細で柔らかく、弦の細い振動を感じさせる弾き方を、次に和声を、3回目にはゴムボールのついた棒で叩く際の弦の効果を前面に出した。ポータブルカセットを弦の振動に結び付けたりもした。かれが此岸の眼前にあるリアルだとして、細井さんの主にエフェクターを使ったサウンドは彼岸の何か漠然と大きな視えない存在となって、周囲を取り巻いた。そして直江さんのラジオはリアルでもヴァーチャルでもあり、彼岸と此岸との間にあるリンクのように感じられた。

柳沢・細井両氏の「合わせ鏡一枚」は、この前々日には、ハービー・ニコルスやセロニアス・モンクの曲を演奏している。その様子を訊いてみると、ひとりがニコルスの「Shuffle Montgomery」を、もうひとりがモンクの「Epistrophy」を、同時に並行して演奏するという、わけのわからないことをやったそうである。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans12mmF2.8

●柳沢幸吉
種まき種まかせ 第3回ー冬の手ー@OTOOTO(2019年)
種まき種まかせ 第2回ー秋の手-@Ftarri(2018年)

●細井徳太郎
SMTK@下北沢Apollo(2019年)
伊藤匠+細井徳太郎+栗田妙子@吉祥寺Lilt
(2018年)

●直江実樹
フローリアン・ヴァルター+直江実樹+橋本孝之+川島誠@東北沢OTOOTO
(2018年)


ミヒャエル・エンデ+ヨーゼフ・ボイス『芸術と政治をめぐる対話』

2019-03-30 10:56:21 | アート・映画

ミヒャエル・エンデ+ヨーゼフ・ボイス『芸術と政治をめぐる対話』(岩波書店、原著1989年)を読む。

1985年に行われた対話の記録である。ヨーゼフ・ボイスは翌年のはじめに亡くなっているが、そうとは感じさせないエネルギーと切れがある。

作品のみから偏屈で小難しいアーティストだと思い込んでいたボイスが、実は剽軽で饒舌な人だと知ったのは、アンドレス・ファイエル『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』を観てはじめて知ったことだ。この対話でも、破綻があろうとなかろうと気にせず、ときには脊髄反射のようにすばやく、ミヒャエル・エンデやその場の言説を挑発するように、ことばの数々を繰り出している。

対話からは、ふたりの違いが明らかになってくる。エンデは芸術を職人芸のようにとらえ、ボイスは芸術を社会の多くの人たちが働きかけていくもののように話す。エンデは具体イメージを大事にし、ボイスはまずは抽象を走らせる。エンデは既存の経済社会や論理構造に疑問を抱き、それに亀裂を入れるように異物を創り出す。一方ボイスは既存システムを対置するのではなくそのものの内部の配置を自由に変えようとする(ドゥルーズ=ガタリ的)。

だがそれは単純で明確な違いではない。エンデが旧来型の職人的芸術家で、ボイスがその根本からひっくり返そうとしたメタ芸術家、とばかりは言えない。ふたりとも単一のものをイデオロギーだとして憎み、世界システムに対して放り込む異物を考え、策動し続けてきた。

すれ違っているようでいて、実は、別々の位相で新たな言説を次々に提示している対話だと言うことができる。ふたりの衝突も共感もあって面白い。このときから三十余年前が経って、世界にはまた別の歪みや亀裂が生まれ、さてエンデやボイスが存命でふたたび対話を行ったならどのように変わっただろうと想像してしまう。

●ヨーゼフ・ボイス
アンドレス・ファイエル『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』
ロサンゼルスのMOCAとThe Broad
ベルリンのキーファーとボイス
MOMAのジグマー・ポルケ回顧展、ジャスパー・ジョーンズの新作、常設展ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ


太田昌国『さらば!検索サイト』

2019-03-30 10:40:38 | 政治

太田昌国『さらば!検索サイト』(現代書館、2019年)を読む。

太田氏のさまざまな短い連載記事をまとめたものであり、氏の思想に接してきた人にとってはさほどの新しさはない。それはつまり、氏がずっと一貫性をもって諸問題について語ってきたということに他ならない。

中南米の政治、とくにチリ軍事クーデター(もうひとつの「3・11」)。愚劣で醜悪な日本政治。死刑。拉致問題と日本政府の不作為。パトリシオ・グスマン。ガルシア・ロルカ。やはり読みすすめていくと刺激が多い。

●太田昌国
太田昌国の世界 その28「「従軍慰安婦」論議の中の頽廃」
太田昌国の世界 その24「ゲバラを21世紀的現実の中に据える」
太田昌国の世界 その15「60年安保闘争後の沖縄とヤマト」
60年目の「沖縄デー」に植民地支配と日米安保を問う
太田昌国『「拉致」異論』
太田昌国『暴力批判論』
『情況』の、「中南米の現在」特集


ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans

2019-03-30 09:30:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷のBar subterraneans(2019/3/29)。

Joachim Badenhorst (cl, bcl)
Sissel Vera Pettelsen (vo, effect, jew's harp)
Manabu Kitada 北田学 (cl, bcl)

ヨアヒム・バーデンホルストとシセル・ヴェラ・ペテルセンとのデュオツアーが始まっている。(このふたりとギターのミケル・プラウグとのトリオEquilibriumでの来日予定だったがデュオとなった。)

この日は北田学さんが加わってのトリオ。北田さんはこのBar subterraneansで定期的にライヴをやっていて、気になる場所だった。渋谷と原宿の間にあって、入口がわからず通り過ぎてしまった。入ってみるととても良い場所である。

ヨアヒム、北田さんともにクラとバスクラの2本。シセルさんはテナーを出さずヴォーカルとエフェクター、さらに口琴。北田さんの音については乾いた感じの印象を持っていたのだが、ヨアヒムとの対比のためか、粘りのある太い線でつながっているような音に聴こえた。ヨアヒムはというと、やはり、これ見よがしな音は決して発しないのに存在感をもって迫ってくる。シセルさんは自分の声を含めさまざまな音を使い、実に巧みにハコ全体のサウンドを創出する。この個性的な3人の音が、ときおり違う方向から聴こえてきて、また互いに自然に介入し合って誰の音なのかわからなくなる瞬間もあって(ヨアヒムも何か呟いていたりして)、非常に刺激的だった。朦朧とさせられるのにずっと覚醒もしているような感覚。

最後に、「A Love Supreme」的に包みながら、「You Don't Know What Love Is」を引用したりもするような演奏。シセルさんが「You don't know, you don't know」と囁き、ヨアヒムが珍しくスタンダードを吹くという奇妙な面白さがあった。

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●ヨアヒム・バーデンホルスト
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
ギレルモ・セラーノ+ヨアヒム・バーデンホルスト+マルコス・バッジャーニ『Lili & Marleen』(2016年)
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』(-2016年)
ヨアヒム・バーデンホルスト『Kitakata』(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年) 

●北田学
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(2017年)


ラリー・オクス+ネルス・クライン+ジェラルド・クリーヴァー『What Is To Be Done』

2019-03-28 08:16:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

ラリー・オクス+ネルス・クライン+ジェラルド・クリーヴァー『What Is To Be Done』(clean feed、2016年)を聴く。

Larry Ochs (ts, sopranino sax)
Nels Cline (g, effects)
Gerald Cleaver (ds)

ラリー・オクスの潰れて濁って泡立って刺激臭のしそうなテナーが、いきなり、ネルス・クラインのノイズとともに混ぜ合わせられて、それが続く。その奔流も、クラインが電子音で灯台の光を灯したり、オクスが気の向くままに明後日の方向に歩き始めたりして、目を離せない。

われらがジェラルド・クリーヴァーはというと、その流れに足をとられてなかなか得意のスピルアウトするドラミングを披露できず、ともかくも内部から破砕しようとする。だが3曲目にはついに空中に飛翔する。

●ラリー・オクス
ロヴァ・サクソフォン・カルテットとジョン・コルトレーンの『Ascension』(1965、1995年)

●ネルス・クライン
スコット・アメンドラ@Cotton Club(2017年)

●ジェラルド・クリーヴァー
ブランドン・ロペス+ジェラルド・クリーヴァー+アンドリア・ニコデモ+マット・ネルソン『The Industry of Entropy』(2018年)
トマ・フジワラ『Triple Double』(2017年)
スティーヴ・スウェル『Soul Travelers』(2016年)
『Plymouth』(2014年)
クレイグ・テイボーン『Chants』(2013年)
クリス・ライトキャップ『Epicenter』(2013年)
Book of Three 『Continuum (2012)』(2012年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
ジェレミー・ペルト『Men of Honor』(2009年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
リバティ・エルマン『Ophiuchus Butterfly』(2006年)
ロッテ・アンカー+クレイグ・テイボーン+ジェラルド・クリーヴァー『Triptych』(2003年)


temp@下北沢Apollo

2019-03-28 00:50:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のApollo(2019/3/27)。

temp:
Ippei Kato 加藤一平 (g)
Ami Ogaeri 魚返明未 (p)
Daisuke Ijichi 伊地知大輔 (b)

最初のウラジミール・コスマのジプシー曲にいきなり惹き込まれる。魚返さんは陶然と曲の世界に入り強いタッチで発展させているし、加藤さんはさまざまなギターの声を使う。リーダー・伊地知さんの包み込むようなベースも含めて、三者が主役の場面転換。伊地知さんのオリジナルが2曲続いたが、特に「初手天元」は面白い。囲碁の戦況が次々に変わるイメージだろうか、うねうねと動的に変貌するトリスターノ的な印象。リズムも自在に伸び縮みする。

セカンドセットはラーシュ・ヤンソンの曲のあと、やはり伊地知さんのオリジナル2曲。ほろ酔いを意味する「Tipsy」では、酔拳を体現するようにゆったりとたゆたうテンポ、その中で加藤さんのギターはラジオのような音を出し、もうこの世のものでない。「モカルバリ」は愉しい曲想で、魚返さんのピアノもブギウギのように跳ねた。ベースもまたサウンドを包み込んだ。

Fuji X-E2、7artisans12mmF2.8、XF60mmF2.4

●加藤一平
鳴らした場合、20 Guilders@高円寺円盤(2018年)
波多江崇行+加藤一平@なってるハウス(2018年)
永武幹子+加藤一平+瀬尾高志+林ライガ@セロニアス(2018年)
竹内直+加藤一平@セロニアス(2017年)
鈴木勲セッション@新宿ピットイン(2014年)

●魚返明未
魚返明未『はしごを抱きしめる』
(2018年)


吉久昌樹+照内央晴@阿佐ヶ谷ヴィオロン

2019-03-26 01:18:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

阿佐ヶ谷のヴィオロン(2019/3/25)。

Masaki Yoshihisa 吉久昌樹 (g)
Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)

ガットギターとピアノの違いは大きい。軋むギター、鳴らすピアノ。響きで前をにらんで進むギター、楔をその場に打ち込むピアノ。ときに笑うように揺れるギター、硬いピアノ。

しかしその差がデュオとなって際立ってきたり、思いがけず重なったりして、それが想定を超えて面白い。吉久さんの軋みと逸脱にも、照内さんが雨だれのようなピアノを弾いて差を一気に詰めた瞬間にも、ピアノがいきなり重層的になった瞬間にも、また吉久さんが外を歩く音や電車の音に自然に応答する様子にも、驚かされた。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7artisans12mmF2.8

●吉久昌樹
照内央晴、荻野やすよし、吉久昌樹、小沢あき@なってるハウス(2019年)

●照内央晴
照内央晴、荻野やすよし、吉久昌樹、小沢あき@なってるハウス(2019年)
照内央晴+方波見智子@なってるハウス(2019年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
『終わりなき歌 石内矢巳 花詩集III』@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2018年)
Cool Meeting vol.1@cooljojo(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)


浅川太平『Waltz for Debby』

2019-03-25 17:10:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

浅川太平『Waltz for Debby』(Cortez Sound、2018年)を聴く。

Taihei Asakawa 浅川太平 (p)

ビル・エヴァンスが弾いた曲ばかりのピアノソロ2枚組。「Waltz for Debby」、「My Foolish Heart」、「Gloria's Step」、「Alice in Wonderland」など、エヴァンスの強烈なイメージが耳に染みついているのに、他のリスナーもそうに違いないのに、蛮勇か。

しかし聴いてみるとまったくエヴァンスのピアノとは別世界。噛みしめるように、確認するようにして、強く鍵盤を叩いている。エヴァンスの影はどこかに消えてしまっている。新鮮。


蓮見令麻+長沢哲@福岡New Combo

2019-03-25 15:14:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

福岡のNew Comboで行われた、蓮見令麻・長沢哲デュオ(2019/2/20)。その際に録画されたものを観た。

Rema Hasumi 蓮見令麻 (p, vo)
Tetsu Nagasawa 長沢哲 (ds)

最初はそれぞれのソロ。それももちろん良い。しかし、むしろ、興味はデュオで何が起きるかにある。そしてそれは対話の過程として目が醒めるようなものだった。

蓮見さんは言葉を発し、長沢さんはブラシの領域の響きで世界を醸成しようとする。ここで蓮見さんが「What is the word?」と呟きピアノを弾いた直後に長沢さんが横の鐘で星を散らし、ちょっとぞくりとさせられる。ブラシにはノイズが混じってゆき、やがて、ドラムというマテリアルがマテリアルであることに開き直ったような迫力があって、それならばとピアノも並走し、強度が増してゆく。マレットに持ち替えると音が複層性を増し、それによる別の世界を創ろうとするように見える。

再び蓮見さんが言葉を紡ぐ、それに呼応する長沢さんのマレットは次の展開にむけて思索しているようだ。飛翔するピアノ、リズムを頑なにキープするドラム、このあたりに緊張感が走っている。発展させる響きが楽器によって異なることは当然なのだけれど、それらの差異と重なりとにずっと意識が引き寄せられる。スティックによる覚醒もその後にやってくる。そしてマレットとピアノとで、不思議なほど喜びが沸き起こってくる時間が訪れる。また鐘により星が空に撒かれる。

アンコールによる短めの演奏も、その共有しえた音世界をもとにしているようで、聴いていて嬉しくなってしまう。

●長沢哲
長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム(2018年)
長沢哲+近藤直司+池上秀夫@OTOOTO(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
#07 齋藤徹×長沢哲(JazzTokyo誌、2017年ベスト)
長沢哲『a fragment and beyond』(2015年)

●蓮見令麻
蓮見令麻<COSMIC SOUNDSCAPE>@公園通りクラシックス(2019年)
Seshen x 蓮見令麻@喫茶茶会記(2017年)
蓮見令麻@新宿ピットイン(2016年)
蓮見令麻@荻窪ベルベットサン(2015年)


横川理彦+高橋麻理絵@東北沢OTOOTO

2019-03-25 14:40:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

東北沢のOTOOTO(2019/3/24)。

Tadahiko Yokogawa 横川理彦 (vln, PC)
Marie Takahashi 高橋麻理絵 (viola)

ベルリン在住の高橋麻理絵さんが帰国中ということで、この日に行ってきた。

横川さんのヴァイオリンと高橋さんのヴィオラとのデュオは、なかなか普段使うことがないレセプターを刺激するような感覚。擦音を多用し、これらの弦楽器からみればマージナルな音領域なのだが、それをサウンドのスパイスとして利用するというより、中心に据えてその部分をこそ増幅している。だから聴く者にとっては解放でもある。

一方、横川さんが高橋さんのヴィオラの音を拾い、PCに取り込んで加工するときは、閉ざされた音領域をぐるぐると螺旋を描いているようで、気が付くと意識がどこかに飛んでしまっていた。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●高橋麻理絵
Cool Meeting vol.1@cooljojo
(2018年)


レイモンド・マクモーリン@本八幡cooljojo

2019-03-24 08:33:15 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2019/3/23)。

Raymond McMorrin (ts)
Kosuke Ochiai 落合康介 (b)
Masa Ogura マサ・オグラ (ds)

ファーストセット、「I Hear A Rhapsody」、「Equinox」(コルトレーン)、「Body and Soul」、「Airegin」。セカンドセット、「Softly, As In A Morning Sunrise」、「Up Jumped Spring」(ハバード)、「In A Sentimental Mood」、「Impressions」、「Bye Bye Blackbird」。

レイモンドは、ソニー・ロリンズ『Night at the Village Vanguard』を高校生の頃に聴いてずいぶんと影響されたそうだ。そんなわけで、テナー奏者にとってひとつの理想形であるピアノレストリオ。木から刀で人形を削りだしていくようで、人間味があり同じプロセスに頼らないかれのプレイはとても好きである。音色の幅が広く、フレーズは先人へのリスペクトに満ちているとともに個性的。

落合さんのベースはあらためて言うこともなく素晴らしいし、別のリズムや遊びを持ち込んでいてとても良かった。そしてマサ・オグラのドラムス。千葉から出ないかれのプレイをはじめて観た。これ見よがしでないのに嵐を思わせて、また、ふたりとのコミュニケーションが反映されていた。また観たいと思った。

ところで落合さんからは、最近かみむら泰一さんと取り組んでいる「縄文セッション」の話を聞いた。なんだか思った以上にとめどなく世界が広がっている模様である。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●レイモンド・マクモーリン
レイモンド・マクモーリン@六本木Satin Doll(2019年)
レイモンド・マクモーリン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン『All of A Sudden』(2018年)
レイモンド・マクモーリン+片倉真由子@小岩COCHI(2018年)
レイモンド・マクモーリン+山崎比呂志@なってるハウス(2017年)
レイモンド・マクモーリン+山崎比呂志@なってるハウス(2017年)
山崎比呂志 4 Spirits@新宿ピットイン(2017年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
レイモンド・マクモーリン@h.s.trash(2015年)
レイモンド・マクモーリン『RayMack』、ジョシュ・エヴァンス『Portrait』(2011、12年)

●落合康介
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)
立花秀輝トリオ@東中野セロニアス(2017年)
永武幹子@本八幡cooljojo(2017年) 

●マサ・オグラ
マグネティ・カルテット『M』
(2017年)


鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン

2019-03-24 08:03:26 | アヴァンギャルド・ジャズ

高円寺グッドマン(2019/3/22)。

Chiho Suzuki 鈴木ちほ (bandoneon, vo)
Yoko Ikeda 池田陽子 (vln, vo)

池田陽子さんのソロ。音の個々の要素が浮き彫りになってくる過程を聴いているよう。ソロははじめて聴いた。こんなに強度のあるものだった。

鈴木ちほさんのソロ。「When You With Upon A Star」にちょっと驚いたけれど、歌ったのにも驚いた(シューミーさんにヴォイストレーニングを受けているそうだ)。蛇腹の音が息継ぎのようでそれが独特の時間間隔を生んでいる。

デュオ。藤枝守による、植物の電位変化を使ったという曲。そして齋藤徹「オンバクヒタム」。この、いろいろな感情が混ざりあって濁流や渦のようになったアジアの雰囲気はやはりテツさんならではである。バンドネオンの濁りと息継ぎ、ヴァイオリンの擦音、とても良い。ふたりとも即興で少し歌った。笑いながら手探りで、それもまた良かった。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●鈴木ちほ
種まき種まかせ 第3回ー冬の手ー@OTOOTO(2019年)
種まき種まかせ 第2回ー秋の手-@Ftarri(2018年)
impro cats・acoustic@なってるハウス(2018年)
鈴木ちほ+荻野やすよし(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2018年)
鳥の未来のための螺旋の試み@ひかりのうま(2017年)
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(2017年)
りら@七針(2017年)
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年) 

●池田陽子
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
佐伯美波+池田若菜+池田陽子+杉本拓+ステファン・テュット+マンフレッド・ヴェルダー『Sextet』(2017年)
クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(2017年)


近藤真左典『ぼくのからだはこういうこと』、矢荻竜太郎+齋藤徹@いずるば

2019-03-24 00:02:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

大田区のいずるば(2019/3/21)。

近藤真佐典さんによる映画『ぼくのからだはこういうこと』の上映があった。完成一歩手前版である。

映画は、ダウン症のダンサー・矢荻竜太郎さんを追っている。かれのパフォーマンス、普段の生活や練習、仕事、周囲の人たち。もちろん竜太郎さんはユーモラスで真面目で不真面目だ(岩下徹さんに、ノートをちゃんと読み返すようにと言われたときの表情には笑ってしまった)。

そして圧巻は、2018年の長野での公演の映像。居合わせた人たちに聞いてはいたが、齋藤徹、久田舜一郎、ザイ・クーニンの創り出す異世界感と緊張感が半端ないことが伝わってくる。ここに竜太郎さんと皆藤千香子さんとがダンスで入っていくのだが、それも三氏の迫力のあまりに最初は容易でなかったようだ。しかし踊り出してからは生命力に火が点いたごときである。また自分で直接観ていたら印象も違ったのだろうな(わたしも行きたかったのに、アメリカから帰国する日で無理だった!!!)。あとでこの場面が長かったかどうかという問いが近藤さんからあったが、わたしはもっと観ていたかった。

映画の上映前に少しと、終わってから、竜太郎さんとテツさんの共演。竜太郎さんのダンスはこれまでにも観ているのだが、やはり何かが違うのだ。動きの丸さと柔らかさということはもちろんあるのだろうけれど、もっと大きい点は、方法論を無化する衒いのなさなのだろう。映画のなかで岩下徹さんが言っていたとおりである。そして不思議なことに、テツさんの発するノイズやもろもろの音の群れと、竜太郎さんの踊りとが、まったく違う表現と思えなくなってくる。

そのあとのトークでも、テツさんや近藤さんの興味深い話がいろいろあった。ダウン症。音楽家。目の前のこと。もっと長くて広い視野。意図的に対置させるなら、狭いと広い。短いと長い。違うと同じ。偶然と必然。原因と結果。どちらかの価値が何かの理由に依拠してもう一方の価値に勝ったり劣後したりすることはない。この往還が人間を視ることだと思えてならない。

懇親会もとても楽しかった。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●近藤真左典
武重邦夫・近藤正典『父をめぐる旅 異才の日本画家・中村正義の生涯』(2012年)

●矢荻竜太郎
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)

●齋藤徹
2018年ベスト(JazzTokyo)
長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム(2018年)
藤山裕子+レジー・ニコルソン+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@喫茶茶会記(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
DDKトリオ+齋藤徹@下北沢Apollo(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 


白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その7

2019-03-21 01:26:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿西口カリヨン橋、夜10時(2019/3/20)。

Tamio Shiraishi 白石民夫 (as)

新宿の空に突き刺さるというより、この夜は、その音空間のバウンダリが白石さんの方に近づいているように思えた。もちろんそれは音のスケールということではない。そして動きもやや緩やかだろうか。

その中でも、やや後ずさりをする動きとシンクロして、音が折りたたまれ、ずざざざと濁りを生じた。以前はパンソリを感じたのだったが、やはり東アジアの自己憐憫を感じる。だとしても凄みのある憐憫である。

演奏は15分間ほどだったというが、その間、なんども音にのけ反った。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●白石民夫
白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その6(2018年)
白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その5(2018年)
2016年の「このCD・このライヴ/コンサート」
白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その4(2016年)
白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その3(2016年)
白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その2(2015年)
白石民夫@新宿西口カリヨン橋(2015年)