大晦日の新宿ピットイン昼の部で、荒武裕一朗クインテット(2018/12/31)。
Yuichiro Aratake 荒武裕一朗 (p)
Takezo Yamada 山田丈造 (tp)
Haruki Ishida 石田玄紀 (as)
Daiki Mishima 三嶋大輝 (b)
Sonosuke Imaizumi 今泉総之輔 (ds)
冒頭の「On Green Dolphine Street」とオリジナル「Talking Junction」において、山田丈造のトランペットの持つ突破力に気付く。一方の石田玄紀のアルトは、次第にさまざまな歌を編み出すのだが、序盤に平板な展開が無くもない。ドラムスの今泉さんのリズムチェンジはそこへの刺激剤のように思えた。続いてトリオで「That's All」、ふたたびクインテットで本田竹広の「Sea Road」(『Back on My Fingers』に入っているとの説明だったが、『Earthian Air』のことだろう)。ピアノは、さすがに本田竹広の弟子筋にあたるだけのことはあって、明るい本田竹広的ブルースだった。
セカンドセットは、トリオで「Knocks Me off My Feet」(スティーヴィー・ワンダー)からはじまった。ここに来て本田竹広の魂のようなものが脈々と受け継がれているのだと思わされる。クインテットとなり、「Time After Time」において、再びドラムスの繊細さに耳を奪われる。太くて気持ちの良いベースソロとなり、それによるドラムスの振動を、今泉さんは即座に止めた。プレイに入るときの絶妙さもまた良かった。
3曲目はオリジナル「閉伊川」。川が流れる岩手県宮古市は本田竹広のふるさとだという。この曲では山田丈造のトランペットがフィーチャーされたのだが、かれはそれに見事に応えた。ストレートでありながらエモーショナルでもあり、吹き始めの「ンワー」という音色などがとても良い。そして荒武さんのピアノに聴き入っていると酒に酔ったようになってくる(本田竹広と同じだ)。盛り上がり高音を叩き、素晴らしい。
4曲目もまたオリジナルの「夕焼け」。今泉さんはプレイヤーたちを睥睨するようでいて、やはり、繊細に観察していることが実感された。プレイヤーを活性化させんとしていることがわかるし、自身のソロでもリズムをその場で独自に構築している。アンコールはピアノソロで、ビリー・ジョエルの「This is The Time」。
全員の個性が出ていてとても良いライヴだった。
2019年からの新ドラマーは本田珠也に替わりこの日の今泉総之輔。2019年3月15日に新アルバム、3月25日に新宿ピットインでレコ発ライヴ、とのこと。
●荒武裕一朗
荒武裕一朗『Time for a Change』(2015年)