ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

吉田武 著 「虚数の情緒ー中学生からの全方位独学法」 (東海大学出版部 2000年2月)

2016年05月17日 | 書評
全人的科学者よ出でよ! 好奇心に満ちた健全なる精神を持った人のために 第13回

第Ⅱ部 数学

第8章 指数

指数とはけた違いの数を扱うのに便利な「冪」、「累乗」のことで、定数aの肩にある数を指数という。定数を底といい、常用対数の底は10(指数関数y=10^x)、自然対数の底は(指数関数y=e^x)超越数(ネイピア数e=2.7183・・)である。指数関数の最大の特徴は何階微分しても元の関数の形を持っていることである。指数関数y=e^kxとすると、一階微分y'=k(e^kx)、2階微分y"=k^2(e^kx)、n階微分するとy''''''=k^n(e^kx)である。この性質が絶大な効果を生むのである。ここで指数の演算法則をおさらいしておこう。掛け算拝趨の足し算になります。a~m×a^n=a^(m+n) 冪の冪は指数の掛け算になります。(a^m)^n=a^(m×n) (ここでm,nは整数である) 指数のマイナスは逆数になる。a(-N)=1/(a^N) 指数は有理数においても有効である。a^(n/m)=(a^n)(a~1/m) 例えば10^(1/2)=√10=3.162277・・・である。指数が無理数でも有効である。例えば10^√2=25.9545・・・である。こうして指数は実数となった。y=10^x を指数関数と呼ぶ。x=0ならy=10^0=1なので、x=0近くでは指数関数グラフの傾きは一定である。y'=1つまり直線であると言える。これは数値計算でも確認できる。指数関数y=10^xの(0.1)の接線の傾きを求めよう。傾きK=⊿y/⊿xにおいて、⊿x=(1/2^n)とおいて、nを増加させると⊿xは限りなくゼロに近づくので、n=16からKは2.3026・・・に漸近する。その時⊿y=0.00003513527・・・である。y'=1+⊿y=1.00003513527 よって⊿x=(1/K)⊿y=(1/K)(y'-1)  y=10^⊿x=10^(1/K)(y'-1)=[10^(1/K)]・[10^(y'-1)] ここに新しい数 e=10^(1/K)=10^(1/2.3026)が生まれ、10=e^(2.3026)という関係ができた。数値計算でeを計算するとe=2.7183・・・に漸近する。そこでy=e^xはXがゼロ付近で接線の傾きを1とする、eはそういう特別の数である。1階微分y'=e^x、2階微分y''=e^xつまりXに定数がない時何階微分をしても元の指数関数そのものである。演算をきわめて簡単にしてくれる理想的な数である。むろんeは超越数で(無理数)「ネイピア数」と呼ぶ。xゼロ近辺では、e^x=1+xとなりすっきりした近似を与える。そして底が10の場合に確認した指数法則が成り立つ。xゼロ近辺では、近似式e^x=1+xの精度を上げるには、K(x)=1+(1/2)xと補正して、e^x≒1+x+(1/2)x^2という2次の近似式で数値計算では十分である。これからは底をeとする自然対数だけを考えよう。10=e^(2.3026) e=10^(1/2.3026) y=e^xである。この章で吉田氏は専門の数値計算をふんだんに使ってx=0付近での解析しているが、私達には指数の数式があればその方がすっきりしているので、数値計算の妙は割愛した。あしからず。

(つづく)