私はクラシックファンの風上にも置けない人間で、
基本的に一番大事なのがピアノで、オペラは全然わかっていない。
だから夏前のメトロポリタン・オペラ来日の時だって、
その意義は重々認めつつも、自分の眼中にはなかった。
しかしそのような私でさえ、今回のボローニャ歌劇場にはビックリした。
三人いた主役テノールが、全員次々とキャンセルになったからだ。
まず8月23日だったと思うのだが、ヨナス・カウフマンが来日をキャンセルした。
胸部のリンパ節の切除手術を受けなくてはならなくなったから、
と本人のメッセージが発表された。
どんだけ緊急手術なんだ、と私は一度は真面目に驚いてあげたのだが、
彼はそもそも6月のメトロポリタン・オペラ来日公演の際にも、
「原発事故が怖い」という理由で日本に来なかったので、
どうも、未だにそちらのほうが「治癒」していない可能性も高いようだった。
ともあれ、彼の代役としてドン・ホセはマルセロ・アルバレスであると同時に公表された。
次に、8月27日に、なんとサルヴァトーレ・リチートラが交通事故に遭った。
運転中に脳出血発作を起こしたとみられる、あまりに不幸な出来事で、
リチートラは重篤な状態に陥ったため、当然のことながら来日どころではなくなった。
そして皆が彼の回復を祈ったが、彼の意識は戻ることなく9月6日に亡くなった。
更に、これとほぼ時期を同じくして5日に、もう一人のテノール、
フアン・ディエゴ・フローレスまでもが来日キャンセルを発表した。
「海水を飲んで咳が止まらず、咽喉を痛めたので」。
このヒトは以前にも、魚の骨を咽喉に引っかけたと言って出演を取りやめた、
という実績があるので、歌手なのに咽喉に特別に悪い星でもついているのだろうか。
なんともお気の毒なことだった。
……私も今度から、扁桃炎じゃなくて「海水飲んだ」にしようかなぁ。
そんなことより。
実は、もっとずっと、比較にならないほどお気の毒なのは日本のファンのほうだった。
理由が何であれ、来られなくなった人間のことは、もう仕方が無いし、
そもそも、来たくないと言う人を拝んでまで来て頂く必要など全くないことだ。
問題はそっちではない。
待ち焦がれた歌声を聴くことができなくなり、大いに失望させられたにとどまらず、
『公演中止以外はいかなる理由によってもチケット代の払い戻しは無い』、これが困るのだ。
主力メンバーをことごとく欠いた、無人芝居のような舞台になろうとも値段は同じだ。
そしてフザケたことに、オペラは半端なく高いのだ、とっくにバブルがはじけた今になっても!
聞いて驚け、今回など、たった一公演がS席54000円だ(『カルメン』だけ52000円)!
もうこうなったら、出演する歌手のネーム・バリューとは関係なく、
その出来映え・公演の見事さが、チケット代と皆の期待とに、見合うものであって貰いたい、
と切に願うのみだ。
週末に行われたびわ湖公演の情報では、『清教徒』代役のセルソ・アルベロは、
第三幕で、輝かしいハイFを、しかも頭声で聴かせたというではないか!
キャスト変更になったからこそ、この舞台に巡り会うことができた、
という公演になってほしいと、遠方の外野からだが私は、本当に心から祈っている。
本日、9月13日18時半、東京公演いよいよ初日だ。
ボローニャ歌劇場 日本公演(フジテレビ)
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そして、今回もご降臨になりました、総統閣下。
総統閣下はボローニャ歌劇場に相当お怒りの様子です(YouTube)
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