おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

荒野の決闘

2019-05-25 11:31:18 | 映画
「荒野の決闘」 1946年 アメリカ


監督 ジョン・フォード
出演 ヘンリー・フォンダ  リンダ・ダーネル
   ヴィクター・マチュア キャシー・ダウンズ
   ウォルター・ブレナン ジョン・アイアランド
   ウォード・ボンド   ティム・ホルト

ストーリー
1882年のことである。カウボーイのワイヤット、ヴァジル、モー グ、ジェームスの四人兄弟は、メキシコで買った牛を数千頭追って、カリフォルニアへ向かっていた。
その途中、アリゾナのツームストン集落の近くで彼らはクラントン父子に会った。
クラントン親父は一頭5ドルで牛を全部買おうと申し出たが、それでは買値を割るのでワイヤットは断った。
あくる日兄弟が留守の時、末弟のジェームスが銃殺され、牛はことごとく盗まれてしまった。
ワイヤットはクラントンの仕業とにらんで、ツームストンの保安官となる。
ホリディとワイヤットは意気投合して親友となる。
ホリディは肺結核なので自爆自棄となって、西部の荒野を流れ歩いているが、もとは立派な紳士である。
その彼を訪ねてはるばるボストンから許婚のクレメンタインが訪ねて来る。
ホリディは自分の病身ゆえに彼女に会いたくないので、ツームストンを去ってしまう。
ホリディに気のあったチワアワはこのことを聞くと怒って、クレメンタインの部屋に押し入り喧嘩を始める。
そのとき彼女が落としたブローチは殺されたジェームスの持ち物である。
ワイヤットが詰問すると彼女はホリディにもらったと言ったので、ワイヤットはホリディを追って連れ帰る。


寸評
モニュメントバレーの奇岩を背景に移送中の牛の群れが現れるオープニングシーンから描かれる風景は詩情豊である。
ツームストンの街のかなたにもモニュメントバレーの景色が常にある。
フォード映画に度々登場したおなじみのロケ地である。
行ったことのない地であるが、フォード映画を通じてすっかりおなじみとなった景勝地だ。

邦題の通り最後には有名なOK牧場の決闘が描かれるが、決闘そのものは予想に反してあっさりと描かれていて決闘のだいご味は少ない。
むしろそこに至るまでに印象的なシーンが散りばめられていて、日常シーンの描き方は細やかで丁寧だ。
何気ないシーンにもうっとりしてしまう。
チワワの手術シーンのショットなどは薄暗い中に手術台にしつらえたテーブルを取り囲む人々を浮かび上がらせ、まるでレンブラントの絵画を見ているような美しい画面に仕上げている。
ドクが護衛を務める馬車の疾走シーンでは砂煙をあげながら走る様子を真横からとらえていて、手ぶれを抑えるカメラがない時代なのに画面のブレもなく見事だ。
ワイアットがクレメンタインに恋心を抱いていく様子も、雰囲気だけで描いていき情緒感を醸し出している。
教会建設の式典に出かけるまでの微妙な態度、そしてクレメンタインをダンスに誘うまでのじれったそうな様子など、可笑しくもあるけれど恋心とはかくありなんと思わせる丁寧な演出だ。

Oh my darling, oh my darling, Oh my darling Clementine
You are lost and gone forever, Dreadful sorry, Clementine

という歌詞と歌は小さいころから耳になじんでいた。
なぜこのような英語の歌を少年時代から知っていたのかは定かではない。
もしかすると「雪山賛歌」としてメロディを拝借して歌われていた事によるものなのかも知れない。
それでもはっきりとOh my darling, oh my darling, Oh my darling Clementineだけは耳に残っていた。
元歌は川に落ちたクレメンタインを助けることが出来ずに死なせてしまったというものらしいが、僕はずっとここに描かれたドクの恋人クレメンタインの歌だと思っていた。
なぜなら上記のリフレインの部分しか知らなかったからである。

ストーリーはあってないようなものである。
アープ兄弟はクラントン一家に牛を盗まれてしまうが、そのことでのいがみ合いはほとんど描かれていない。
ヴィクター・マチュアのドク・ホリディとヘンリー・フォンダのワイアット・アープとの絡みも、女優陣であるリンダ・ダーネルのチワワとキャシー・ダウンズのクレメンタインの恋のさや当ても通り一辺倒な描き方だ。
ドクがじぶんの病気のためにクレメンタインから逃れているのも、その心情に深く切り込んでいるわけではない。
しかしそれでもこれぞ西部劇といった雰囲気だけはプンプンするバイブル的な作品になっていると思う。
歴史的価値もある一遍だ。


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2 コメント

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「荒野の決闘」について (風早真希)
2023-08-23 15:39:20
西部劇なので、配給会社がこのような邦題にしたのでしょうが、決闘の場面はほとんどありません。
英語の原題は「MY DARLING CLEMENTINE 」、つまり「愛しのクレメンタイン」です。

有名なあの歌は、昭和世代の人なら、きっと誰もが聞いたことがあると思います。
オーマイダーリン、オーマイダーリン、オーマイダーリンクレメンタイン----という「雪山賛歌」のメロデイーのあの歌。

アメリカ西部史で有名な、アープ兄弟とクラントン一家のOK牧場の決闘を題材にしている映画というのは、いったい何本作られているのかわからないほどで、「OK牧場の決闘」「ワイアット・アープ」「トゥームストーン」等、数多く映画化されています。
それほど、この素材は映画監督にとっては魅力的ということなのでしょう。

1947年の映画ですから、当然ながらモノクロの映画で、その画面はカラーでは決して表現できない素朴さ、なめらかさ、逆に荒っぽさが混然一体となっています。

西部の荒涼とした風景も、白黒ならではの味があり、観る者の情感に訴えてきます。
セリフは非常に凝っている部分があり、ドラマティックです。

邦題にあるような決闘からイメージする「暴力」はあまり表現されておらず、西部劇としては多少、物足りなさを感じてしまいます。

最後の方のOK牧場の決闘で、ビクター・マチュア演じるドク・ホリデイが、あっさりと死んでしまうのも、ちょっと興ざめしましたね。

ヘンリー・フォンダは、いつものワンパターンの生硬な二枚目ぶりでカッコ良かったと思います。
ただ、正統派のハンサムガイなので、不良っぽさや危うい感じがなく、優等生的なイメージがあり、主人公の人間的な深みを出すためには、役不足かなと思いました。

色々と不満な部分もあるのですが、やはり、西部劇の名作の一つに違いありません。
単純なストーリーでありながら、グイグイと画面の中に引き込まれてしまいます。

詩的で美しく、哀感がたっぷりの西部劇だと思います。
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白黒だから (館長)
2023-08-25 07:39:03
時代劇は「七人の侍」、西部劇は「荒野の決闘」と言われるぐらいバイブル的な作品ですが、この映画、白黒だから良かったような気がします。
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