おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

バッテリー

2021-09-04 08:56:48 | 映画
「バッテリー」 2006年 日本


監督 滝田洋二郎
出演 林遣都 山田健太 鎗田晟裕 蓮佛美沙子
   天海祐希 岸谷五朗 萩原聖人 上原美佐
   濱田マリ 渡辺大 山田辰夫 塩見三省
   岸部一徳 菅原文太 

ストーリー
長男の巧(林遺都)が中学へ入学するタイミングで岡山県に引っ越してきた原田一家を迎えたのは、祖父の洋三(菅原文太)だった。
甲子園出場校の監督と知られた洋三の血を受け継ぐ巧は少年野球大会でも活躍する剛腕のピッチャーだが、弟の青波(鎗田晟裕)は持病を抱えている。
そんな巧の投球に惚れ込んだのは、医者の息子の永倉豪(山田健太)だった。
野球は小学校の卒業で辞めるという親との約束も反故にして、豪は巧とバッテリーを組むことを決意する。
母の真紀子(天海祐希)から野球を止められている青波も、兄に女房役ができたことが嬉しくて堪らない。
中学校の野球部には、鬼監督の戸村(萩原聖人)がいた。
マイペースの姿勢を崩そうとしない巧の態度が反発を買い、他の野球部員からリンチを受ける。
事態は明るみに出て、校長は野球部の活動停止を言い渡した。
巧の同級生である矢島繭(蓮佛美沙子)には、ライバル校の野球部の従兄弟がいた。
その縁から非公式な試合が行われる。
しかし、その試合中、巧と豪の力量の違いが明らかになり、二人の信頼関係は崩れてしまう。
仲違いした巧と豪の間を取り持ったのは青波だったが、その疲労から青波は急性肺炎を起してしまう。
巧を叱責する真紀子だが、夫の広(岸谷五朗)から諌められる。
そして、巧と豪のように、青波と巧や豪の間にもバッテリーが存在することを思い知らされた。 
「勝ってな、お兄ちゃん」の声に励まされ、巧は再試合の球場へと向かった。
ピッチャーマウンドに立った巧は、キャッチャーの豪に向かって剛球を投げ続ける。
二人の黄金のバッテリーが復活した。


寸評
非常にわかりやすい映画で、観客が予想したとおりに物語は展開していくが、それでも少年の表に出さないナイーブな気持ちと成長物語が清涼をもたらす青春映画だ。
原田一家がドライブしているところで、母親の真紀子が巧に青波のために窓を開けてくれるように頼むが、巧はその申し出を無視する。
観客の多くはこの時点で、母親が病気の弟にかかりきりになっていて、巧は母親の愛情に飢えているのだなと思うに違いない。
冒頭での三塁にランナーを置いて巧が投げ込んだ一球の行方はやがて大きな意味を持ってくるのだが、この時点でその一球の結末を描いてしまったほうが良いのか悪いのかはわからないけれど、ここで描かなかったことが大きく寄与したとは言い難い後半の描き方ではあった。

青波の病気療養のために空気のいい真紀子の生まれ故郷の実家に引っ越してきたのだが、真紀子の父でもあるじいちゃんは甲子園経験者で元高校野球の監督でもある。
巧の屈折した精神はじいちゃんへの挨拶にも表れていて、「カーブの投げ方を教えてほしい」というのが彼なりの挨拶なのだが、それが巧なのだとじいちゃんは理解を示す。
ここではじいちゃんはスパルタコーチではなく巧のよき理解者なのだということが示されている。
巧もじいちゃんを認めるところがあって、指示に従ってランニングを開始するが、そこで豪に出合う。
豪との出会いのシーンで巧と豪の性格の違いが示され、青波を含めた三人の関係が出来上がる。
暗の巧と明の豪の関係だ。
最初は巧の剛速球を捕れなかった豪が、何球か後には捕れるようになるのも予想を裏切らない。

巧は豪から「お前は連打を浴びたことがないだろう。ノーアウト満塁のピンチにあったこともないだろう。お前はピンチに弱いで」と言われる。
この言葉は劇中で上手く処理されていなかった。
最大のライバルが登場するのも予想通りと言えば予想通り。
そこで投げた剛速球を巧が捕れなかったことで巧が急に態度を変える。
観客にはその豹変ぶりの原因がわからない。
勘の悪い僕が分からなかったのかもしれない。
たった一球でどうしたのかという変調の表現が弱いところだったと思う。
クラスメイトの矢島繭ともいい関係になるのだが、青春の恋物語は全くと言っていいほど描かれない。
それを描いた方が良かったのか、野球物語に専念したほうが良かったのかは判断に悩む。
兎に角、矢島繭の存在意義はライバルの従妹という以外にはない。
母の愛を受ける病弱の青波と巧の関係も予想の範囲で、巧が試合に駆けつけるのも、巧の気持ちを感じた母親の行動も予想通りのもので、ストレスを感じさせない。
クラブ活動は内申書のためだったと言っていた元野球部の連中も試合を見に来ているが、彼らの心情は描かれていたと言い難い。
粗削りなところもある映画だとは思うが、少年のスポーツ物としては十分に水準を保った作品だったとは思う。


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