おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

インセプション

2019-01-21 11:38:38 | 映画
「インセプション」 2010年 アメリカ


監督 クリストファー・ノーラン
出演 レオナルド・ディカプリオ 渡辺謙
   ジョセフ・ゴードン=レヴィット
   マリオン・コティヤール エレン・ペイジ
   トム・ハーディ ディリープ・ラオ
   キリアン・マーフィ トム・ベレンジャー
   マイケル・ケイン ピート・ポスルスウェイト
   ルーカス・ハース クレア・ギア

ストーリー
他人の夢の中に潜入してカタチになる前のアイデアを盗み出す企業スパイが活躍する時代。
ドム・コブは人がいちばん無防備になる夢の中にいる状態のときに、その潜在意識の奥底に潜り込み、他人のアイデアを盗み出すという犯罪のスペシャリストである。
危険極まりないこの分野で最高の技術を持つコブは、企業スパイの世界で引っ張りだこの存在だった。
しかしそのために、コブは最愛のものを失い、国際指名手配犯となっていた。
そんな彼に、幸せな人生を取り戻せるかもしれない絶好のチャンスが訪れる。
強大な権力を持つ大企業のトップの斉藤が仕事を依頼してきたのだ。
依頼内容はライバル会社の解体と、それを社長の息子ロバートにさせるようアイディアを“植え付ける”こと(インセプション)だった。
それは彼の得意とするアイデアを盗むミッションではなく、他人の潜在意識に別の考えを植え付けるという難度の高いミッションで、ほぼ不可能だと言われていた。
極めて困難かつ危険な内容に一度は断るものの、妻モル殺害の容疑をかけられ子供に会えずにいるコブは、犯罪歴の抹消を条件に仕事を引き受けた。
古くからコブと共に仕事をしてきた相棒のアーサー、夢の世界を構築する「設計士」のアリアドネ、他人になりすましターゲットの思考を誘導する「偽装師」のイームス、夢の世界を安定させる鎮静剤を作る「調合師」のユスフ、そしてサイトーを加えた6人で作戦を決行したのだが、予測していなかった展開が彼を襲う。

寸評
身体を動かさずに物語を見る映画は、夢を見る行為によく似ている。
スクリーンの仮想空間の中、僕たちは監督の指示に従う俳優たちによって与えられた物語で、笑い、泣き、悩み、興奮し、スリルを味わい、感動する。
ここで描かれた世界は、まさにそのような空間であるのだが、しかし劇場の中での僕たちは映画の世界と現実を混同することはなく、常に映画の世界の出来事を認識している。
「インセプション」は映画なので、描かれている内容は夢の世界と現実が交差している。
その複雑さのために、当初は僕たちの頭の中も混乱していて難解なものを感じるのだが、夢の中で描かれるのが派手な銃撃戦だったり、街全体がゆがんでくるなどのスペクタクルだったりするので、難解さにギブアップすることなく、何とか映画世界に留まることが出来、そのうちに主人公たちが活躍する世界に僕たちも慣れてくる。
難解だと思わせるもう一つの理由が、なぜそうなのかという説明が省略されていることで、理屈抜きで兎に角そうなのだと押し付ける設定だ。
サイトーはライバル会社の崩壊を画策しているのだが、一体何を争っているライバルなのかは明らかでない。
若いアリアドネがどのような能力を持っているから教授に推薦されたのかもよくわからないのだ。
アリアドネは「観客目線」で物語をナビゲートしてくれる便利なキャラクターという役割だと思うのだが、彼女は最初こそ親切にナビゲートしてくれるものの、途中からだんだん他の登場人物と同様に観客を置き去りにし出して、建築学を専攻している女子学生がなぜ人の潜在意識へ入り込み夢を設計できるのか等の説明は一切ない。
サイトーがどのような立場の人間で、なぜコブの履歴を消し去ることが出来るのかも説明がない。
兎に角そういうことなのだとなって物語が進行していくので、「そういう世界だから」と無理矢理にでも納得するしかないのである。

何しろ夢の中の世界だから何でもありで、突然逆さまの街が出現したり、無重力状態のようになってしまったりし、
摩訶不思議な世界がCG全開の迫力ある映像で次々に登場してくる。
単なる夢の中の世界ではなく、それを三層にしたのがユニークだし複雑にしている。
夢の第1階層は架空のロサンゼルスで、「ロバートが父親との関係を見つめ直すよう誘導し、遺言の存在を意識させる」ということを目的とした内容。
夢の第2階層のホテルでの目的は「法律顧問のブラウニングが遺言を狙っているとロバートに思わせ、更に深く潜在意識へ侵入する」というもの。
夢の第3階層の雪山の要塞での目的は「”父の後を継ぐのではなく自分の道を進む”というアイデアを深層心理に定着させる」というものである。
ただでさえ複雑な時空で展開されているのに、そこにコブの自殺した妻がトラウマとなって度々登場し、コブの行動を邪魔するのだが、なぜ妻のモルがそこに登場するかはずっと後でしか判明しないので話がややこしい。
夢という無形で無限の素材を使い、犯罪、アクション、ラブストーリーまで組み合わせた前代未聞の映画ではあるが、今ひとつスリリングさに欠けているのは、目の前の出来事が、夢の中の世界だとわかってしまっているからだと思うし、話がスケールの大きさとかみ合っていないように思える。
コブが子供たちのいるところへ戻りたいと願っている気持ちは切ないものがあるが、はたしてハッピーエンドだったのかどうかは分からなくて、ラストシーンではその判断を観客にゆだねている。


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