おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ソロモンの偽証 前編・事件

2019-09-26 09:07:37 | 映画
「ソロモンの偽証 前編・事件」 2015年 日本


監督 成島出
出演 藤野涼子 板垣瑞生 石井杏奈
   清水尋也 富田望生 前田航基
   望月歩 西村成忠 佐々木蔵之介
   夏川結衣 永作博美 黒木華
   田畑智子 小日向文世 松重豊
   尾野真千子 塚地武雅 余貴美子
   安藤玉恵 木下ほうか

ストーリー
教師・中原涼子(尾野真千子)は母校の江東区城東第三中学へ赴任し、校長・上野素子(余貴美子)に伝説の23年前の「校内裁判」のことを話す。
1990年12月25日は大雪で、同級生の野田健一(前田航基)と涼子(藤野涼子)は登校し、正門に嫌いな教師が立っていたため、通用口から学校に入り校舎脇で雪に埋もれた同級生・卓也(望月歩)の遺体を発見した。
卓也の死因は転落死で、警察は屋上からの飛び降り自殺と断定する。
しかし父が刑事の涼子宅や学校宛に、俊次(清水尋也)ら3人の不良生徒の殺害だとする告発状が届いた。
校長・津崎(小日向文世)は担当刑事・佐々木礼子(田畑智子)と相談し、カウンセリングで告発状の送り主を、涼子の同級生・樹理(石井杏奈)と松子(富田望生)と突き止める。
涼子の担任・森内(黒木華)に送られた告発状が破り捨てられたのをマスコミが嗅ぎつけ大々的に報道した。
俊次は不登校に陥り森内は退職するが、佐々木の調査で隣人が森内の住居ポストから告発状を盗んで捨てたことが判明。
保護者会が開かれ、佐々木は告発状が虚偽の内容だと指摘する。
樹理と会った松子が、帰りに自動車事故に遭って死に、松子はショックで声が出なくなってしまう。
校長・津崎は体調を崩し辞任することになる。
涼子はある日、卓也の葬儀に出席していた東都大学付属中の生徒・神原和彦(板垣瑞生)と出会う。
和彦は卓也と小学校の同級生で卓也の死に疑問を抱いていた。
涼子は事件を裁判形式で行おうと決めた…。


寸評
面白い!
オーディションにより選び抜かれた生徒たちの迫力にも圧倒される。
編集で切り取った演技とは言え、なかなかのものだ。
事なかれ主義の大人たち、裏表のある人間たち、偽善者的要素を持ち合わせた少年少女たちなどが躍動(?)する。
作品の性格上、キャラクターを強調した特異な人物たちが登場する。
校長(小日向文世)は典型的な事なかれ主義の人物で、柏木の死を自殺として穏便に早くケリをつけたいと思っている。
柏木の担任でバスケットボール部の顧問もしている教員経験の浅い森内(黒木華)は頼りないし、変な妄想にとりつかれているようなところがある。
教師の権威を振りかざすのが楠山教諭(木下ほうか)と高木学年主任(安藤玉恵)で、観客の反感を買う役目を引き受けている。
いじめにあっている三宅樹理(石井杏奈)はニキビがひどいのでコンプレックスを感じているが、母親(永作博美)はいい加減な人物だ。
その三宅も友人を平気でバカにする性悪な部分を持っている。
子供を守る態度を見せる藤野の母(夏川結衣)や、退職届を提出して生徒と共に戦う決意をする北尾(松重豊)などは正義の味方といったところか。
役得なのか彼女の実力がそうさせるのかは分からないけれど、三宅樹理の母親役である永作博美の存在感は際立っている。

映画は中原涼子(尾野真千子)となって母校に赴任してくる藤野の回想談で始まる。
藤野が「松ちゃんゴメンネ」と言った訳がわかったところで発生する浅井松子の死は、残酷なシーンだが雨に流される血が美しくもあった印象的なシーンだ。
雪の中から掘り出された柏木の死体の目も印象的で、その目を怖いと言った担任の森内の言葉が覆いかぶさる。
その森内の隣人も変で、彼らの夫婦喧嘩を描いた理由も納得させられるが、意表を突いた展開で原作のアイデアによるものなのだろう。
裁判に向けての伏線や大人と子供の人間関係や、登場人物の人間模様がおもしろくてぐいぐいと引き込まれていく迫力を有していた。
主人公の藤野涼子を単純なヒロインにしていない点も作品に深みを持たせている(原作の良さかも知れないけれど、僕は未読である)。
佐々木蔵之介、田畑智子、塚地武雅、余貴美子など脇役陣も充実している。
たくさんの登場人物とたくさんのエピソードを丁寧にまとめ、俳優のアンサンブルも新人とベテランのバランスがよくとれていたキャスティングだった。
真実が暴かれる後篇・裁判の公開が待ち遠しい作品となっている。


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