おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

トロイ

2024-06-18 06:18:13 | 映画
「トロイ」 2004年 アメリカ


監督 ウォルフガング・ペーターゼン            
出演 ブラッド・ピット   エリック・バナ
   オーランド・ブルーム ダイアン・クルーガー
   ブライアン・コックス ピーター・オトゥール
   シューン・ビーン   ローズ・バーン

ストーリー
ギリシャ連合のスパルタとその宿敵トロイの間に無血同盟が結ばれた夜、トロイの王子パリスとスパルタの王妃ヘレンに禁断の恋が芽生えていた。
若き情熱に駆られたパリスは、非道を承知でヘレンを自国へ奪い去ってしまう。
トロイ侵攻の口実を得たギリシャ王アガメムノンは、屈辱に燃えるスパルタ王メネラオスとともに、全ギリシャを挙げての進軍を開始する。
トロイ攻略の鍵を握るのは、女神の息子と謳われるギリシャ最強の戦士アキレス。
一方トロイでは、パリスの兄で太陽の子ヘクトルが決戦に備えていた。
アガメムノンを快く思わないアキレスの参戦拒否でギリシャ軍は苦戦を強いられ、トロイ側はヘクトルの獅子奮迅の活躍で城壁を守る。
やがてヘクトルは倒れ、知恵者・オデッセウスの計略で木馬が城内に運び込まれると、その中に潜んだギリシャ兵が城壁の門を開け、トロイの町に火を放ち殺戮を繰り返す。
ついにトロイは陥落するが、アキレスもまた唯一の弱点をつかれ倒れてしまう・・・。


寸評
世界最大最古の歴史叙事詩、ホメロスの「イリアス」は、古代ギリシャに起こったトロイ戦争を主題にしている。
史実が神話化されたとでも言ったほうがいい。
それによると以下のような物語となっているようだ。
エギナ島の王ペレウスが海の女神テティスとの結婚式に、不和の女神エリスを招待しなかったので、怒ったエリスは、最も美しい者に送ると書いた金のリンゴを宴席に投げ込む。
この結婚式には神々をはじめギリシャ中の英雄が招待されていた。
当然一番美しい者と自負する女神のヘラ、アテナ、アフロディテも出席していた。
投げ込まれたリンゴのため、三人の間に争いが起き収拾が付かなくなってしまう。
そこで天の支配者ゼウスは「三人のうちで誰が一番美しいかトロイ王の息子パリスに裁いてもらえ」と宣言する。
「パリスの審判」と呼ばれる有名な神話でトロイ戦争のもとになる。
パリス王子の前に出向いた三人は、それぞれに自分を指名するようにと条件を出して懇願する。
ゼウスの妻で結婚の女神ヘラは世界の支配権を、戦いの女神アテナは戦での勝利を、美と愛の女神アフロディテは美しい妻を約束し、パリスに指名を迫る。
そしてパリスが心を動かされ金のリンゴを与えたのは美の女神アフロディテ。
約束通りパリスに与えられる世界一の美女はスパルタ王メネラオスの妃ヘレネと決まった。
パリスはスパルタの王宮を訪ね、王のクレタ島出張の留守を見計らいヘレネを口説きトロイに連れ帰ってしまう。
全てアフロディテの企てだった。
妻の不実を知ったスパルタ王メネラオスは全ギリシャの英雄を集めトロイへの復讐の軍を起こす。
これが10年にも及んだトロイ戦争の発端になる。
ギリシャ軍の総大将は、メネラオスの兄アガメムノン、ペレウスの息子アキレウス、知恵者のオデッセウスなどそうそうたるメンバー。
神は結婚の女神ヘラと、戦いの女神アテナが付いた。
一方のトロイ軍もプリアモス王の長男ヘクトル、アイネイアス等勇士は揃っている。
更に美と愛の女神アフロディテ、太陽神アポロンが付いている。
しかし戦争の不条理な殺戮、略奪行為はオリンポスの神々は許すことはなかった。
そのためトロイ、ギリシャの両軍に悲劇が次々起きる。
このたくさんの悲劇を神話は延々と語り継いでいる。

映画では神は登場することなく、人間同士の愛と確執を描きながら、古代戦争スペクタクルを映し出す。
だからなおさら、愛・確執・権力欲とか人間のエゴとかをもっと描いて欲しかったなと思う。
アガメムノンが弟の妻ヘレンをトロイ攻撃の口実を作ったことだけで評価する言葉を発したりするけれども、もっと自分の権力欲を満たすための道具としてしか見ないいやらしさを出せばよかったと思う。
そうすると、権力をもつアガメムノンと、戦士としての実力と名声を併せ持つアキレスの対立がもっと奥深くなったのではないか。
「若者の死がアキレスを戦場に引っ張り出しギリシャ軍を救うことになる」というアガメムノンの呟きなどもあるけれど、彼の憎らしさはちょっと中途半端なような気がした。
アキレスとブリセウスの関係ももっと掘り下げても良かったかもしれない。
スパルタを捨てトロイへ走ったヘレンと、アキレスの元を去り、トロイへ帰ったブリセウスはある意味では対極にあるのだから。
中途半端といえば、神をも信じない戦士の申し子とでも言うアキレスの屈折した性格は何処からきているのかよくわからなかった。

1000隻もの大船団でエーゲ海を渡り、トロイへ攻め込む上陸戦などは、「史上最大の作戦」のノルマンディ上陸作戦を髣髴させる物量(人海戦術)戦で、楯を巧みに操り、陣形を組みながら攻撃する様子などはとても面白い(アキレスがヘクトルと対決する時のくびれた楯の使い方も面白い)。
神話では船団が出撃しようにも風が吹かず、総司令官の権威が落ちそうになったので、風乞いの生贄をする事になり、生贄の候補者をだまして呼び寄せ、その犠牲で風が吹いて出撃できたなどという話があったりして戦争の悲劇を語っているが、そんな部分は省かれている。
映画は人間ドラマと言うより、スペクタクルとしての側面を強く出しているので、あえてそのような部分は割愛したのだろう。
だから多分ホメロスの叙事詩はもっと壮大なドラマになっているのではないかと想像する。

アキレスが生まれたときに川で逆さ吊りにされて洗礼を受け、その洗礼のおかげで不死身の体を得るが、母親が持った足首だけが洗礼の水を浴びなかったので唯一の弱点となった踵(映画ではその経緯は描かれていない)を射貫かれて絶命するのは周知の事実として描かれるけれど、欲を言えばもっと壮絶な最後を遂げて欲しかった。
でも、トロイの木馬も登場して満足させてくれるから、まあいいか・・・。

僕はずっと、アキレスの身代わりで死ぬのは親友のオデッセウスだと思っていたけれど、それは僕の記憶違いだったのかな?


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2 コメント

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「トロイ」について (風早真希)
2024-06-25 09:39:36
古代ギリシャ。トロイの王子パリスは、スパルタの王妃ヘレンに恋し、彼女を奪い去る。王妃奪還を口実に、城塞都市トロイを攻めるギリシャ連合軍の中には、自らの名声を望む、無敵の戦士アキレスの姿も。ここに、トロイ戦争の火ぶたが切って落とされる-------という、ワクワクするような物語が、このウォルフガング・ペーターゼン監督、ブラッド・ピット主演の映画「トロイ」ですね。

ホメロスの叙事詩「イリアス」は、絶世の美女ヘレンをめぐる争いを発端に、戦争の悲劇を描いた壮大な物語ですね。

ウォルフガング・ペーターゼン監督は、この物語を戦士アキレスを軸にした、歴史ロマンとして映画化したんですね。

肉体改造も見事なブラピを初め、共演人も好演していて、CGを駆使したスペクタクル・シーンも見応えたっぷりですね。

物量にものを言わせる迫力満点のバトルもあれば、英雄同士の一騎打ちには、古代の戦闘らしい、ゆったりとした間があって、実にメリハリが効いていると思います。

とにかく、この映画は、娯楽活劇として、素晴らしい出来に仕上がっていると思います。

体に粘土でも付けているのかと思うほど、マッチョなブラピと、レゴラス気分が抜けきらずに、弓を引いたりしているオーランド・ブルーム。

この人気俳優二人の影に隠れがちだが、映画の隠れ主役とも言えるのは、エリック・バナ演じるトロイの王子ヘクトル。
アン・リー監督の「ハルク」では、訳のわからぬ役柄で困惑していたバナだが、実は史劇も似合う正統派の俳優だ。

ヘクトルは、妻子や親兄弟、そして何より、国と平和を愛する、この物語随一の常識人なんですね。
まっとうな英雄が悲劇に向かうことで、物語は劇的に転がり始める。

トラブルメーカーで、へっぴり腰のパリス王子も、この兄の勇姿を見て、ようやく奮起する。

語り部にして、知将オデッセウス役のショーン・ビーンも少ない出番ながら、渋くていい味を出していたと思います。
有名なトロイの木馬は、彼の発案で、どう考えても、怪しいこの作戦が上手くいくところが古代なんですね。

神と人間が同居する、古代ギリシャの物語を、人間側のドラマに絞ったことで、わかりやすく、まとまっている。

体面や不条理で始まる争いの愚かしさや、戦争の空しさも現代に通じるところがありますね。
しかし、この映画に、いっさい神が登場しないのが、なんとも物足りない。

元々は、三人の女神の美しさを競ったことが原因で起こったトロイ戦争。
映画では、不倫が元での国同士の大喧嘩のような印象だが、人間だけでなく、神々もまた、トロイやギリシャ側に付き、この長い戦争に参加したんですね。

こうして、事態は複雑化し、混迷を極め、さらなる局面を生み、その中に真理が隠されている。
話がわかりやすくなった分、伝説の持つ歴史ロマンとしてのスケールの幅が奪われた感は否めないですね。

聖書と共に、西欧文明の二大基礎となったギリシャ神話。
単純な善悪では塗りわけられないエピソードと、魅力溢れる多くの英雄たちが活躍する、非常に映画的な素材であると思います。

ギリシャ神話というのは、荒唐無稽な物語の集合でありながら、実にうまく辻褄があっているのが特徴なんですね。

エンターテインメントとして、十分な水準に達している作品だと思いますが、そこに、きまぐれな神の視点を、少しだけ追加して欲しかったと思いますね。

それにしても、この映画は、地中海を思わせる、青を基調とした衣装のセンスが、実に良かったですね。

ただ、ブラピの恋の相手には、もう少し華のある女優でも良かったのではないかと思いますね。

そういえば、昔「トロイのヘレン」という映画があって、その時のヘレンを演じていたのは、イタリアの女優のロッサナ・ポデスタという妖艶な美女で、とても良かったという記憶がありますね。
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娯楽活劇+α (館長)
2024-06-26 07:19:39
この映画、娯楽活劇としては何とか水準を保っていると思うのですが、私が期待していたのはもっと大きなスケールを持ったドラマでした。
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