「岸和田少年愚連隊」 1996年 日本
監督 井筒和幸
出演 矢部浩之 岡村隆史 大河内奈々子 宮迫博之
木下ほうか 八木小織 山城新伍 小林稔侍
宮川大輔 原西孝幸 山本太郎 白竜 正司花江
秋野暢子
ストーリー
1975年、大阪・岸和田、リョーコは恋人のチュンバを鑑別所まで送るためにバスに揺られながら、昨年の夏からのことを想い出していた。
中学生の悪ガキコンビ・チュンバと小鉄は、仲間のガイラやアキラとつるんでは喧嘩を繰り返す毎日を送っていたが、ある日、岸和田西中の安藤たちと大乱闘を繰り広げたチュンバたちは、安藤に加勢した高丘中の宿敵・サダから付け狙われるようになる。
サダは、数の力にものを言わせてチュンバたちを痛めつけたが、翌日、チュンバはサダを待ち伏せると、カバンに仕込んだ鉄板でキッチリと借りを返すが、サダはまたしても数で圧倒し、チュンバと小鉄、ガイラと間違われた双子のサンダ、鑑別所から戻ったばかりのサイの4人にヤキを入れる。
チュンバたちはお礼参りにサダの学校に乗り込んで、今度こそ徹底的にサダをぶちのめした。
この一件でチュンバは家庭裁判所の世話になったが、おかんの泣きの芝居で鑑別所送りだけは免れた。
リョーコは飽きることなく喧嘩を繰り返すチュンバに呆れていたが、それでも内心では心配せずにいられないでいたのだが、そんな彼らもなんとか卒業を迎え、チュンバと小鉄は工業高校へ進学し、リョーコはスーパーに就職、ガイラとサイはヤクザの仲間入りをする。
入学初日に喧嘩を売ってきたゴリを叩きのめしたチュンバは、ある日、小鉄とつまらないことから仲たがいをしてしまい、小鉄が岸和田の町から姿を消した。
人生に思い悩んだチュンバは偶然再会した小鉄とともに住み込みでレストランで働くことにした。
しかし、弟の仇を取るために現れたゴリの兄・ダイナマイトの薫に喧嘩魂を再燃させられたチュンバと小鉄は、薫を見事返り討ちにするのだった。
こうして、チュンバはついに鑑別所送りとなったのである。
寸評
岸和田と言えば「だんじり祭り」が思い起こされ、一年の全てをそれに賭ける熱い人たちの町という印象があり、登場する人物たちは本当に居そうな気がしてくる。
秋野陽子が演じるチュンバの母親は、息子のケンカを励ましたり、うそ泣きの芝居で鑑別所送りをまぬがれさせたりする頼もしいお母ちゃんなのだが、時にシリアスな面を見せて存在に疑いを持たなくなってくるから不思議だ。
全編アドリブかと思わせるようなボケとツッコミの会話が繰り返されて包括絶倒のコミカル映画なのだが、安上がりなギャグ映画ではない若者のエネルギーを感じさせる青春映画に昇華している。
チュンバと小鉄は暇さえあれば喧嘩ばかりしている不良なのだが、家庭が恵まれているとは思えない彼等にとっての喧嘩は持て余したエネルギーのはけ口である。
この喧嘩に吉本興業の若手芸人が絡んで、そのやり取りがたまらなく可笑しい。
主演のチュンバの矢部と小鉄の岡村を初め、サダの木下ほうか 、サイの宮迫博之 、安藤のブラックマヨネーズ吉田敬、ゴリを演じるのはお笑いコンビFUJIWARAの原西孝幸、 アキラの宮川大輔たちが所狭しと暴れまくって楽しませてくれる。
それに前述の秋野陽子やお好み焼き屋のオバチャン正司花江が滅茶苦茶面白いツッコミを入れてくる。
小林稔侍のヤクザ(当たり屋?)のかおるちゃんなど、よくわからない人も出てきたりするが、とにかく明るい連中が次から次へと登場して楽しませてくれる。
そん中で一番光っているのがチュンバに扮した矢部浩之である。
滑稽でありながら時折見せるナイーブな表情が何とも言えない。
母親にかける言葉に強がりの中からでる母を慕う気持ちを感じさせた。
普段はオバハンと呼ぶ母親に、「オカン、白髪染なかっこ悪いで」と言ったり、一人暮らしを始めた母親を訪ねた際のやりとりなどはしんみりさせるものがあって、作品中のアクセントになっている。
一方の岡村隆史の小鉄は、僕の中学時代にもいた不良の一人を髣髴させて懐かしさを感じさせる。
身体が小さく喧嘩もそんなに強くはないが、不良番長の影でやけに粋がっていた。
一人、警察に出頭しようとする小鉄の行動は青春の挫折の一つの形だったのかもしれない。
映画のラストで冒頭シーンに戻り、結局チュンは鑑別所送りになるのだが、彼はそんな時になってもリョーコに「お前も来るか」と強がりを言うことしか出来ない。
リョーコはそんなチュンバを気遣っているが、同時にこんなバカとはもうこれ以上付き合っていられないとの思いもあって、チュンバの母親が言った「バカな男と付き合っていると苦労するだけや。早いこと別れたほうがええ」が思い起こされる。
それでもリョーコはチュンバを待っているかもしれない。
そんな余韻を感じさせる最後はなかなか味わいがあった。
喧嘩しか描いていない作品なのに、なぜか共感する物を感じさせるのは、誰しもにあった青春時代の一端を思い出させてくれたためだろうか。
元気の出る映画である。
だんじり祭りはリョーコのナレーションの中でしか登場しないが、「岸和田少年愚連隊」というタイトルは、大阪人の僕には馴染みが持てるし、内容を的確に表しているからタイトルは原作者の中場利一氏のヒットだ。
監督 井筒和幸
出演 矢部浩之 岡村隆史 大河内奈々子 宮迫博之
木下ほうか 八木小織 山城新伍 小林稔侍
宮川大輔 原西孝幸 山本太郎 白竜 正司花江
秋野暢子
ストーリー
1975年、大阪・岸和田、リョーコは恋人のチュンバを鑑別所まで送るためにバスに揺られながら、昨年の夏からのことを想い出していた。
中学生の悪ガキコンビ・チュンバと小鉄は、仲間のガイラやアキラとつるんでは喧嘩を繰り返す毎日を送っていたが、ある日、岸和田西中の安藤たちと大乱闘を繰り広げたチュンバたちは、安藤に加勢した高丘中の宿敵・サダから付け狙われるようになる。
サダは、数の力にものを言わせてチュンバたちを痛めつけたが、翌日、チュンバはサダを待ち伏せると、カバンに仕込んだ鉄板でキッチリと借りを返すが、サダはまたしても数で圧倒し、チュンバと小鉄、ガイラと間違われた双子のサンダ、鑑別所から戻ったばかりのサイの4人にヤキを入れる。
チュンバたちはお礼参りにサダの学校に乗り込んで、今度こそ徹底的にサダをぶちのめした。
この一件でチュンバは家庭裁判所の世話になったが、おかんの泣きの芝居で鑑別所送りだけは免れた。
リョーコは飽きることなく喧嘩を繰り返すチュンバに呆れていたが、それでも内心では心配せずにいられないでいたのだが、そんな彼らもなんとか卒業を迎え、チュンバと小鉄は工業高校へ進学し、リョーコはスーパーに就職、ガイラとサイはヤクザの仲間入りをする。
入学初日に喧嘩を売ってきたゴリを叩きのめしたチュンバは、ある日、小鉄とつまらないことから仲たがいをしてしまい、小鉄が岸和田の町から姿を消した。
人生に思い悩んだチュンバは偶然再会した小鉄とともに住み込みでレストランで働くことにした。
しかし、弟の仇を取るために現れたゴリの兄・ダイナマイトの薫に喧嘩魂を再燃させられたチュンバと小鉄は、薫を見事返り討ちにするのだった。
こうして、チュンバはついに鑑別所送りとなったのである。
寸評
岸和田と言えば「だんじり祭り」が思い起こされ、一年の全てをそれに賭ける熱い人たちの町という印象があり、登場する人物たちは本当に居そうな気がしてくる。
秋野陽子が演じるチュンバの母親は、息子のケンカを励ましたり、うそ泣きの芝居で鑑別所送りをまぬがれさせたりする頼もしいお母ちゃんなのだが、時にシリアスな面を見せて存在に疑いを持たなくなってくるから不思議だ。
全編アドリブかと思わせるようなボケとツッコミの会話が繰り返されて包括絶倒のコミカル映画なのだが、安上がりなギャグ映画ではない若者のエネルギーを感じさせる青春映画に昇華している。
チュンバと小鉄は暇さえあれば喧嘩ばかりしている不良なのだが、家庭が恵まれているとは思えない彼等にとっての喧嘩は持て余したエネルギーのはけ口である。
この喧嘩に吉本興業の若手芸人が絡んで、そのやり取りがたまらなく可笑しい。
主演のチュンバの矢部と小鉄の岡村を初め、サダの木下ほうか 、サイの宮迫博之 、安藤のブラックマヨネーズ吉田敬、ゴリを演じるのはお笑いコンビFUJIWARAの原西孝幸、 アキラの宮川大輔たちが所狭しと暴れまくって楽しませてくれる。
それに前述の秋野陽子やお好み焼き屋のオバチャン正司花江が滅茶苦茶面白いツッコミを入れてくる。
小林稔侍のヤクザ(当たり屋?)のかおるちゃんなど、よくわからない人も出てきたりするが、とにかく明るい連中が次から次へと登場して楽しませてくれる。
そん中で一番光っているのがチュンバに扮した矢部浩之である。
滑稽でありながら時折見せるナイーブな表情が何とも言えない。
母親にかける言葉に強がりの中からでる母を慕う気持ちを感じさせた。
普段はオバハンと呼ぶ母親に、「オカン、白髪染なかっこ悪いで」と言ったり、一人暮らしを始めた母親を訪ねた際のやりとりなどはしんみりさせるものがあって、作品中のアクセントになっている。
一方の岡村隆史の小鉄は、僕の中学時代にもいた不良の一人を髣髴させて懐かしさを感じさせる。
身体が小さく喧嘩もそんなに強くはないが、不良番長の影でやけに粋がっていた。
一人、警察に出頭しようとする小鉄の行動は青春の挫折の一つの形だったのかもしれない。
映画のラストで冒頭シーンに戻り、結局チュンは鑑別所送りになるのだが、彼はそんな時になってもリョーコに「お前も来るか」と強がりを言うことしか出来ない。
リョーコはそんなチュンバを気遣っているが、同時にこんなバカとはもうこれ以上付き合っていられないとの思いもあって、チュンバの母親が言った「バカな男と付き合っていると苦労するだけや。早いこと別れたほうがええ」が思い起こされる。
それでもリョーコはチュンバを待っているかもしれない。
そんな余韻を感じさせる最後はなかなか味わいがあった。
喧嘩しか描いていない作品なのに、なぜか共感する物を感じさせるのは、誰しもにあった青春時代の一端を思い出させてくれたためだろうか。
元気の出る映画である。
だんじり祭りはリョーコのナレーションの中でしか登場しないが、「岸和田少年愚連隊」というタイトルは、大阪人の僕には馴染みが持てるし、内容を的確に表しているからタイトルは原作者の中場利一氏のヒットだ。